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なぜか話しかけられる人
「この電話より大きいのあるやろか?」
観光地からの帰りの電車で、隣に座る見知らぬご婦人に声を掛けられて私は戸惑う。私の手にあるスマホの事を訊いているのだろうけど、なんの前振りもなくいきなりだ。
動揺を隠して私は答える。
「色々有りますよ。文字が見やすく大きいのもあります」
「画面小さいのはなあ、大きいのはええなあ」
どうやらご婦人はスマホを検討中のようだ。行楽地で散策した帰り道っぽい服装なのを見て、私はとりあえず繋がりやすいドコモを提案してみた。
そのあと少しだけ話して、ご婦人はお仲間との会話に戻った。
どうも私は自分より歳上のご婦人に声をかけられることが多い。いや、殿方もか。
けっして親しみやすい風貌でもないし、愛想も良くない。なのに何故やたら声をかけられるんだろう。
これの前は河川敷のヌートリアを眺めていた時だ。通り掛かりのご婦人に声をかけられ、「アレが何か」と尋ねられた。
その前は電車で外国人観光客に「次は日本橋駅か」と尋ねられた。最初気づかなくてツレが代わりに答えてくれたので、降りがけに「Have a nice trip.」とだけ言ってみたけど聴こえたかは分からない。
その前は地下街で「地下鉄の入り口」を尋ねられた。何か所も入り口は有るので、一番近い入り口の方向を伝えたが、何線に乗るかも訊いた方が良かっただろうか。
関西に来てから一年半で四度。
街中に出る頻度から考えてもちょっと多いと思う。
こういう事は札幌時代もよくあった。
スーパーでチョコレートの棚をツレと見ていたら、「それ美味しくなかったよ」とか。次に来た人には「沢山あるから迷うわね」とか言われたりを
銀行の待ち列でぼーっとしてると、前のお姉さんからいきなり話しかけられて世間話されたり。
一番酷かったのは仕事帰りの電車での出来事だ。
近くのオバちゃんが携帯電話の操作分からなくて受話ボタン教えろと訊いてきた挙句、メモまで取らされた。というかだ、電話に出る方法くらい勉強してから持ち歩いてくれ!
なんかもう、なんか…
なんなん!?
なめとんか?
こいつチョロいわーとか思われてんのか?
ホイホイと話に付き合ってくれると思ってるのか!?
あ、たしかに付き合ってるわ。
無視できてないわそもそも。
もしかして自分は、自分が思ってるよりお人好しで、お人好しオーラが溢れてるのかな。いや、そんな事は無いはずだけど。
うーん…
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