直島、豊島アートの旅「二日目その②」
少し時間が空いてしまいましたが、直島アートの旅は続きます。前半はこちら↓↓↓↓
二日目の午後は、本村(ほんむら)地区という直島の中心街に点在する数々のアートを巡りました。ここには「家プロジェクト」と呼ばれる、古民家や神社(!)をアートの手で蘇らせるという野心的な作品群があります。
本村地区には役場や農協があっていわば島の中心地になる訳ですが、そこにある本村港は小型船しか発着しないこじんまりとした雰囲気で、大きなフェリーが頻繁に発着する宮浦港と違ってひっそりとしています。
そのお陰?もあり、本村は古い民家が密集する昔ながらの街並みを残していて、とても落ち着いた場所になっています。
お昼ごはんで唯一開いていた石井商店さん、ごちそうさまでした!
南寺近くの公園
今回は閉まっていましたが、バーガーも食べてみたい
民家も遊び心たっぷり
「家プロジェクト」を巡るためには、まず「本村ラウンジ&アーカイブ」と呼ばれる観光案内所に向かいましょう。ここで家プロジェクトの共通チケット1050円、各サイトの個別チケット420円、もしくは直島パスポート2500円を選んで買うことができます。
3軒以上回るのあれば共通チケット(6軒分)を買った方がお得ですし、各プロジェクトはこじんまりしているので、2-3時間あれば充分廻ることができます。
特に順路などもありませんし、村も小さいのでブラブラを地図を見ながら適当に歩いて楽しむのが良いのではないかと思いますが、お昼休みの関係で開館時間が微妙に異なるので気をつけましょう。
角屋、石橋、はいしゃ … 10:00開館、12:00-13:00昼休み、16:30閉館
南寺、護王神社、碁会所 … 10:00開館、13:00-14:00昼休み、16:30閉館
あと、ややこしいのですが本村にあるANDO MUSEUM(520円)と「きんざ」と呼ばれる施設(520円)は家プロジェクトのチケットでは入ることができないのと、「きんざ」は事前予約制で一人ずつしか入れないようになっているので、ここも注意が必要です。
なので、下のリンクにある開館カレンダーを見て、どうしても見たい作品や美術館を見逃さないようにプランニングしましょう。
まずは角屋へ
私の場合は、まず家プロジェクトの第一号作品である「角屋(かどや)」から巡ることにしました。アーカイブからはすぐです。
ここは宮島達男さんという方が担当された作品で、築200年ほどの民家を現代アートと組み合わせて再生するという、とても難しいプロジェクトだったそうです。これまでの直島は地中美術館など島の人がいない地区に新たに建設されていたのである意味直島の生活とは切り離されたものでしたが、この家プロジェクトは本村という中心街に現代アートを持ち込む訳で、地元の人達とどう関わっていくのかがとても重要なポイントになりました。
宮島さんは母屋の広い空間に真っ黒なプールを設置し、そこに沢山の一桁LEDカウンターを沈める「シーオブタイム'98」という作品を作ったのですが、そのLEDカウンターが刻む速度を島民の人たちに自由に設定してもらったそうです。そのため、真っ暗な古家の中で赤、緑、黃のカウンターがバラバラに動いているという不思議な情景が出来上がりました。
それ以外にも角屋にはデジタルの7セグ表示から家の外が透けて見えるという「障子」のような仕掛けの「ナオシマズ・カウンター・ウィンドウ」という作品などもあり、和とデジタルを融合させた展示が目を引きます。
そして南寺へ
次に向かったのは、私が見たかった「南寺」です。ここは実は古民家の再生ではなく、新たに安藤忠雄さんが作った建物なのですが、この場所に昔あった「南寺(みなみでら)」と呼ばれていたお寺の名前を蘇らせ、そこにアッと驚く仕掛けを持ち込んでいます。
ここは撮影禁止(そもそも撮影しようがない)なので写真はありませんが、建物の外観だけベネッセさんのサイトから転載させて頂きます。実際にはもっと黒く見えるのですが、外壁は直島の家で昔から使われている「焼杉」という杉の板材に焼きを入れた素材を使っており、コンクリートで造る安藤建築とは思えません。
ここはジェームズ・タレルという、地中美術館にも作品を提供している「光」のアーティストが安藤忠雄さんとコラボレーションして作り上げた作品だそうです。
南寺の中はまさに漆黒の闇が広がっていて、係員の指示に従って数名ずつ入場し、ただひたすら15分ほどその暗闇の中でじっとしている必要があります。
そうすると、不思議な事に暗闇に徐々に目が慣れてきて、そこにある作品が見えてくるという大変面白い仕掛けになっています。人間の目というのは周辺の環境に柔軟に適応できる事を実感できますし、なんだかテーマパークに来たようなワクワク感があって、楽しめました。直島に来たからには、ぜひ「非日常」をこの南寺で体験して頂きたいと思います!
ただ、混雑時には整理券が必要になるらしいので、来場には時間の余裕を持って望みましょう。
ちなみに南寺の隣には「八幡神社」という本物の神社もあります。こちらも静けさがあって、小さな村の中で存在感を持っているので、立ち寄ってみると良いと思いました。
ANDO MUSEUM
次は、南寺の向かいにあるANDO MUSEUMを訪問しました。こちらは築100年ほどの古民家を安藤忠雄さんの手で再生して美術館にしたそうですが、外観は全く普通の民家に見えます。一瞬お茶菓子でも出てきそうな門構えです。
ところが中に入ると、さすがコンクリートの魔術師だけあって、しっかり主張されていました。ちょっと写真だと分かりづらいのですが、家のど真ん中に大きなコンクリートの壁が斜めにかけられていて、柱や屋根は木造を活かしつつも内部空間をコンクリートで演出するという安藤さんの野心的なアプローチが伺えます。
壁に掲げられている図は、大阪の中之島公会堂の大改造計画「アーバン・エッグ」のコンセプトで、巨大な卵上の球体を既存の建物の中に造るという斬新な発想です。結局実現はしませんでしたが、味のある建物の外観は維持しつつも、中身に新たな空間を創造するというコンセプトはこのANDO MUSEUMにも現れています。
カフェで小休止
晴れた本村を歩きながら見学していると喉も渇くし、小腹も空いてきました… そんな時に目に飛び込んできたのがこのカフェ「Hifumiyo Coffee」というこじんまりしたカフェですが、美味しいコーヒーとマフィンにありつけました!店内も小さな民家をオシャレに改装されていて、ホッとする空間です。
地図だとこの辺り… ここには表示されていませんが、実は南寺の真向かいなので、すぐに分かります。
ナチュラルテイストで素敵な店内
天気が良かったので、すぐ前にある公園でマフィンをパクリ!
このカフェのお姉さんと雑談した時に「豊島美術館に行って涙が出るほど感動した!」という評判を聞くことができたので、どうしようか迷っていた豊島行きを決意するきっかけになりました。豊島は三日目のレポートで…
次は護王神社へ
カフェのマフィンで一息ついた後、そこから少し山を登った所にある家プロジェクトの「護王神社」に行ってみることにしました。何となく情報として知ってはいたのですが、ここは思った以上に印象的で美しい場所でした!
ヒフミヨ珈琲さんから少し坂道を登ること約5分。私はこの点線ルートを歩きましたが、少し途中山道になるので女性の一人旅などの場合は暗い時間などは避けるか、他の人の後をついていく事をオススメします。
途中坂道を上っていくと、右側には美しい瀬戸内海が木々の間から見えます!
護王神社の入り口には狛犬があり、以外に広い空間になっています。
神社の外観はこんな感じ、写真だとあまり感動が伝わらないシンプルなデザインですが…
ここには地元の氏神様の古い護王神社があったそうですが、それがボロボロになっていたため、地元の人達から再建を依頼されたそうです。
杉本博司さんという日本の美術や伝統的な宗教にも詳しい方がこの再建を担当されたそうですが、あえて立派な建物を建てるのではなく、元々そこに大きな石や木などの信仰の対象があってそこに神社ができるのではないか?というアイディアを元に、岡山から24トンもする大きな岩を運んできて、石室を造ったそうです。(しかも手掘りの石室!)
その地下になる石室部分から地上の社に向かって「ガラスの階段」を神が通る道として設置されたそうです。
実際に石室に懐中電灯を持って入ることができるのですが、人が一人やっと通れるぐらいのスペースを進んでいくと、その先にガラスの階段が現れます。
これが地上部分のガラスの階段、人は通れません
実際に何度も伊勢神宮の龍源宮に通って参考にしながらこの神社を設計したそうで、そのこだわりの造形美が伺い知れます。この神社のこけら落としには奉納能が行われたそうです。
外観的にはこのガラスの階段しか現代アートらしきテイストは見えないのですが、実際はその基礎の石室から調達し、それを手彫して創り上げるという芸術家の執念と造形美へのこだわりを感じて、とても感動しました。
碁会所と石橋
その後は本村の中心部に戻り、「碁会所」と「石橋」プロジェクトを見学したのですが、写真を撮るのを忘れていました…
碁会所は木彫作家の須田悦弘さんの作品で、思わず通り過ぎてしまいそうなシンプルな入り口ながら内部はシンメトリーな二つの和室になっていて、片方には本物そっくりな椿の木彫り彫刻が散りばめられています。庭には本物の椿が植わっていて、その対比がとても印象的でした。
「石橋」は千住博さんという日本画家が手掛けたのですが、直島で一二を争うほどの塩業で栄えた大きな屋敷を再建されました。とてもシンプルな庭と建屋に、印象的な襖絵があり、さらに奥には「ザ・フォールズ」という美しい滝を描いた絵画が展示されています。
はいしゃ
いよいよ家プロジェクトもラストになり、最後は少し離れた場所にある「はいしゃ」に行きました。
はいしゃはその名の通り、元々歯医者さんだった廃屋を大竹伸朗さんというアーティストが再生したものらしいのですが、村プロジェクトの他の作品と違って良い意味で「弾けて」いました。
はいしゃの建物には沢山の廃材などが使われていて、バラック的というか、廃屋らしさを全面に出した造りになっています。
そして、その名も個性たっぷりなアートが満載!
なぜか自由の女神…
トイレもナイスなテイストで、床には沢山の写真や雑誌の切り抜きらしき紙が敷き詰められています。
締めはひとっ風呂…
二日目の締めは、暑かった事もあって銭湯に行きたくなり、宮浦港までいって「I♥湯」という実際にお風呂に入れるアートに行きました。
本村から宮浦港までは歩くと30分ぐらいかかってしまうので、私はベネッセハウスのバスで行きました。
I♥湯の外観はこんな感じで、なんだかトロピカルな雰囲気…
実はこの作品も大竹伸朗さんが手掛けたそうで、テイストは「はいしゃ」とにた感じもする、レトロで遊び心がたっぷりの建物です。
内部はさすがに撮影できませんが、中には大きな像のオブジェがあったり、タイルや植物にもこだわりがあり、昭和レトロとその時代のエロスな雰囲気がミックスした面白い銭湯でした。「島の老人が元気になれる銭湯」を福武總一郎さんの依頼だったそうです。実際に私が行ったときも地元のおじいちゃんが入っておられました!
一つ注意しないといけないのは、タオルが入湯料に含まれないことです。入湯料だけだと650円ですが、タオルは別に300円ほどかかります。タオルも「I♥直島」と書かれたカラフルな物なので、お土産代わりに買うのもアリだと思いました。
最後は前日もお世話になった「Tee's DELI」にまた行って夕飯を頂きました!
次はいよいよ豊島です~
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