見出し画像

アムトラックでアメリカ横断:6日目前編~南北戦争の跡を訪ねて

ナッシュビルにはアムトラックが通っていないので、この部分はレンタカーでの移動になりました

アラバマからテネシーへ


バーミンハムに泊まった翌日は、ホテルから車で5分ほどの距離にあるHertzレンタカーまでUberに乗って行きました
今回の旅行計画で難しかったのは、鉄道とレンタカーの連携です
何せアメリカは飛行機と車での移動を前提に設計されているので、鉄道の駅の近くにはホテルやレンタカーオフィスなどが無いケースが多いのです
特にレンタカーオフィスは殆どが空港の近くにあり、たとえ街中にあったとしても営業時間が短く、車の在庫も少ないのでなかなか思うように旅のアレンジができませんでした

バーミンハムの場合はホテル、レンタカーオフィスがそれぞれある程度の近さにあったので、何とか繋げることができました

Amtrakの駅 → ホテル → Hertz


アラバマ州のバーミンハムからテネシー州のナッシュビルまでは車で約3時間、殆どハイウェイを真っ直ぐ行くだけなので簡単でした
緑豊かなハイウェイは両側に樹木が生い茂り、とても気持ちよくドライブができます

フランクリン


ナッシュビル市内に入る前に、フランクリンという街で大学時代の友人と会ってランチをしました
友人から聞いて知ったのですが、テネシー州には日産自動車とブリヂストンの米国本社があり、ニッサンスタジアム(NFL、タイタンズ)とブリヂストンアリーナ(NHL、プレデターズ)があるそうです
また、このフランクリンという街は南北戦争(アメリカではCivil warと呼ばれています)の激戦地でもあり、博物館や古戦場があるそうです

せっかくなので、ナッシュビルに行く前にフランクリンにある南北戦争の跡地を見て行くことにしました

フランクリンにはコロニアル調の美しい建物が沢山ありました

カーターハウス


Googleで博物館を調べて、そのナビを頼りに行ったのは「カーターハウス」という所でした
ここはカーター一家の農場だった土地が南北戦争の最大規模の激戦地になってしまった場所で、家や奴隷小屋、倉庫などが当時の状態のまま残されています

受付に行ってみると1時間おきにツアーがあるそうなので、それに参加してみる事に
集まったツアー客は10名ほどで、私以外は全員アメリカ出身の白人の方々でした
当然私以外の人達は南北戦争を学校の授業で習った事があるので人の名前なども含めてよく知っている様子でしたが、私にとっては知らないことばかりでした

南北戦争は、奴隷制による大規模プランテーションとそれによる綿花や作物の自由貿易を続けたい豊かな南部の11州が、工業化を進めて奴隷制を制限する方針を掲げるアメリカ合衆国から脱退して「アメリカ連合国」を結成し、国を真っ二つに分ける内戦に発展してしまったもので、1861年から1865年まで続きました
テネシー州は南軍側に属していましたが、既に北軍が食料や物品の輸送の中継地点として戦略的に重要なナッシュビルを手中にしており、カーターハウスも北軍の司令本部として接収され、そこが南軍との大規模な戦場になってしまったのです

カーター一家は1830年頃からこの場所に移り住み、300エーカー(東京ドーム26個分!)の広さの畑と牧場と綿花を加工するための工場を所有して28人もの奴隷を抱えていたそうです

カーターハウスの地図
カーターさんの母屋、2階建てで地下室もありました
奴隷小屋

しかし、不運にもこの場所が、南北戦争の激戦地になってしまったのです
この家が小高く見通しのよい場所にあったために北軍の司令部として接収されてしまい、一家は避難しようとしたもののナッシュビルに向かう橋が焼かれてしまったため、この家に留まらざるを得なくなったのです

当時最新鋭の大砲が展示されています

カーターハウスの農場にバリケードを築いた北軍は戦闘態勢を整え、1864年11月30日の午後4時にいよいよ戦闘の火ぶたが切られました
大規模な戦闘は5時間続き、カーターハウスの建物や倉庫には2000発以上の銃弾が撃ち込まれました
一家の14人の女性と子供は、戦闘が終わるまで家の地下室にじっと息を潜めていて命は助かったようですが、あまりの恐怖からか戦闘が終わって解放された後もフランクリンの戦闘について多くを語る事はなかったと言います

生々しい銃弾の跡が残る倉庫
外から見たらこんな感じ

このフランクリンの戦いだけで死者2000人を含む死傷者は9500人にも及んだそうで、平和な農場は一日で地獄絵図のようになってしまったそうです

南北戦争はアメリカの歴史上最も多くの戦死者を出した戦争で、4年間の内戦で約70万人の命が失われました
カーターハウスはその過ちを二度と起こさないための貴重な歴史遺産として、当時の生々しい傷跡をそのまま保存しています

21世紀になっても世界のあちこちで戦争や紛争があり、多くの罪のない人々の命が奪われ続けています。自分たちの次の世代によりよい世界を残したいのに、政治家たちは歴史から何かを学んでいるのでしょうか…?
あふれんばかりの緑に囲まれ、抜けるような青空とそよ風が吹き抜ける絵画のように美しい風景のなかに、カーターハウスは静かにたたずんでいました

https://youtu.be/KJ3gC1MsIFg

次はいよいよナッシュビルへ!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?