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アメリカの光と影(2)

「アメリカの光と影(1)」では仕事の環境とホームレス問題について触れましたが、ここでは更に大きなテーマに触れておきたいと思います。それは軍需産業とGDPに関わる話です。なかなか微妙なテーマなので書くのがためらわれる部分もありますが、自分なりに状況を分析してみました。

すごい防衛費

アメリカは言わずと知れた世界一の軍事大国で、その防衛費は世界でも群を抜いて大きく、2022年の統計では2位以下である10か国(中国、ロシア、インド、サウジ、イギリス、ドイツ、フランス、韓国、日本とウクライナ)を合計した金額とアメリカ一国の防衛費がほぼ同等という、とんでもない金額です。
2022年のアメリカの防衛費は8,770億ドル、今の為替で日本円に換算すると約131兆円となり、日本の2023年度一般会計歳出が114兆円なので、日本の国家予算の全額を軍事につぎ込んでいるようなイメージになります。
これをずっと続けているのだから、他の国とはものすごい差があります。

この莫大な予算をDoD(Department of Defense:防衛省)が管理しており、38%をオペレーションとメンテナンス、24%を人件費、18%を調達費、14%を研究開発費に配分しています。(参考
特に昨今はロシアのウクライナ侵攻や高まる中国の脅威によって防衛費は増加の一途をたどっています。

日本では第二次世界大戦の敗戦以降は戦争には参加していませんが、アメリカはその後も朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争に直接関与していますし、それ以外にもイエメン、パキスタン、ソマリア、リビア、ウガンダ、シリア、ニジェールなどの内戦に派兵していますし、ウクライナには派兵こそしていませんが、大規模な兵器供与を続けています。(参考

軍事産業とGDP

当然ながら武器の開発や製造を行うアメリカの軍需産業はそれに伴って成長を続けており、世界最大手のロッキード・マーティン社の2022年度売上は633億ドル(約9兆4000億円)で、日本の出光興産や丸紅、イオンなどと匹敵する大きさです。それ以外にもRTX(旧レイセオン)、ノースロップ・グラマン、ボーイング、ゼネラル・ダイナミクスなど4兆円を越える大企業があり、世界の軍需トップ10社のうち6社をアメリカの企業が占めています。(参考
これらの企業はアメリカのDoDだけではなく、日本や同盟国にも大量の武器弾薬を販売しているのはご存じの通りです。

つまりアメリカはほぼ常に世界中に軍隊を展開してどこかで戦争や戦闘をしており、更にアメリカの防衛関連企業が世界各国に武器を販売している訳です。
そのため、アメリカの防衛予算は1960年に473億ドルだったものが現在8000億ドルを越えているので17倍に増加しています。(参考
では、これほどの規模の予算をどうやって確保しているのか?に注目してみると、興味深い像が見えてきました。

上記の防衛予算と同じ期間のアメリカのGDPを見ると、5430億ドル(1960年)から25兆4627億ドル(2022年)となんと47倍にも成長しています。(参考
つまり、アメリカの防衛予算はGDP比でみると負担は年々軽くなっていて、1960年に9%だったのが徐々に低下し、2024年は2.7%と過去最低を更新する見込みです。

私ははじめ、アメリカは正義と民主主義という名の下に世界のあちこちで戦争をする事で軍需産業を成長させる「武器商人」のようなイメージを持っていたのですが、データを調べてみるとアメリカは経済の成長がそれ以上に大きいので、軍事に回す予算比率を軽くしても莫大な防衛費が確保できているという事が分かりました。

GAFA(今はGAMAMと呼ぶそうです)のように世界を席巻する超巨大テック企業がとてつもない規模で成長を続けているのが印象的ですが、アメリカのGDPで最も大きな比率を占めているのが金融、保険、不動産などの産業セクターです(参考)。
金融やITなどの産業が世界規模で影響を及ぼし成長する事でアメリカの経済を支えつつ、その利益(GDP比率としては低いものの、他10か国分の金額)を防衛費に投じる事で圧倒的な軍事面での優位性も維持している…というのがアメリカの姿と言えそうです。
また、ハリウッド映画などのソフト面での影響力も非常に大きく、印象操作という観点でもアメリカはしたたかな国家であると感じます。

アメリカ人にとっての軍人とは

また、アメリカでは軍人の社会的地位は非常に高く、国家の防衛に尽くす軍人のために様々な優遇処置が講じられていて、自動車、電化製品、衣服、レストラン、スポーツクラブ、ホテルやレンタカーなどありとあらゆる場面で10-30%程度の割引を受けることができますし、飛行機では優先搭乗などもあります。(参考
それ以外にUSAAという軍人とその家族に金融や保険業を提供する専門の会社があり、軍に従事する家族や退役軍人に対して手厚いサービスを提供しています。
また、5月最終週の月曜日にはMemorial Day(戦没者追悼の日)、11月11日にはVeterans Day(退役軍人の記念日)がありますし、四大スポーツの試合開始時にも全員起立しての国家斉唱(歌野ではなく聴く)があります。

学校でも毎朝の朝礼でPledge of Allegiance(忠誠の誓い)を全員で暗唱するので、私の子供たちも現地の学校でまずそれを暗記する事から始めました。
ごく当然のように星条旗(アメリカの国旗)は街のいたるところで見かける事ができます。

テレビでは毎日のようにArmy,(陸軍)、Airforce(空軍), Navy(海軍)などがトップガン顔負けのかっこいいコマーシャルを流していて、アメリカ人にとって兵隊さんはヒーローであり、ある種特別な存在になっています。
日本でも自衛隊は災害時の頼もしい存在であり、街中で自衛官募集のポスターを見かける事はありますが、普段の生活で迷彩服の人を見かける事もないので、少し遠い存在であるように思えます。(アメリカでは空港などで普通に迷彩服の人を見かけます)

興味深いのは、アメリカの警察官は軍人ほど尊敬される存在ではないという事です。テレビのニュースなどで警察の不祥事はよく取り上げられていますし、映画やドラマなどでもドジでちょっといい加減な警察官(Cop)を扱うコメディなどの人気があります。その一方で軍人は映画でもヒーロー的な存在として描かれている事が多く、人気があるように思えます。

まとめ

アメリカと日本では国の成り立ちも全く異なりますし、個々の価値観や歴史感も違うので一概には言えませんが、輝かしいアメリカという国の繁栄の陰には圧倒的な軍事力で世界に影響を及ぼし続ける姿があるという事は、忘れてはならないポイントだと感じました。
日本は日米地位協定でアメリカの擁護を受けていますが、それが未来永劫続く保障はなく、何らかのきっかけて関係が悪化するとアメリカの強大な軍事力が逆に脅威になる可能性もある訳です。
そんな事が起こる事は考えたくありませんし、日本にとって何がベストなのかは分かりませんが、自分の子孫が平和に暮らせる世の中になっていってくれることを願ってやみません。




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