アムトラックでアメリカ横断:9日目後編~海に浮かぶ要塞
午前中はチャールストンの「まちなかアドベンチャー」でしたが、午後からは海に出ることにしました
チャールストンの海岸から船で30分ほど行った大西洋上に、「Fort Sumter(フォート・サムター)」という石造りの要塞があり、そこは南北戦争の火ぶたが切られた歴史上とても重要な遺跡だそうなので、行ってみることに
ここも事前にオンラインでチェックして、チケットを購入しておきました
値段は大人が$32、シニアは$29、4歳から11歳までの子供は$19で、ダウンタウンにあるLiberty Squareという船着き場から一日4本ほどが出航しています
今回は14:30出航のツアーを予約することができました
https://fortsumtertours.com/tours/fort-sumter-tour/
いざ乗船
サムター要塞のビジターセンターでチケットを見せて、出航5分ほど前に船に乗り込みました
結構大きな船でしたが、既にほとんどの席が埋まっている状態でした。アメリカ人にかなり人気だという事が分かります
海は波も穏やかで、揺れはあまり大きくありません
船は順調に進み、30分ほどすれば要塞の島に到着します
大きさは約2.4エーカー、東京ドームの1/5という小さな島です
船が接岸すると、島を管理するNational Park Serviceの職員さんから簡単な注意事項の説明を聞いてから上陸します。特に今回は島の水道が故障していてトイレが使えないため、船のトイレを使うようにとの指示がありました
橋を渡って上陸すると、すぐ芝生の広場があり、その近くに大きな大砲がいくつも展示されています
サムター要塞
この島はもともとイギリスなどの外国からアメリカを守るために建設された人工島なんだそうです
1812年、イギリスがワシントンD.C.を海から侵略して壊滅的な被害をもたらした教訓から、アメリカの海岸線を防衛するための要塞として、巨大な岩をニューイングランドなど北部から船で運んできて、浅瀬を埋め立ててこの島が建設されたそうです
その際には奴隷も沢山動員され、1829年から1834年までの5年間の歳月をかけてようやく完成しました
ところが、この島は外国との戦争に使われることはなく、その後アメリカ国内で起きた南北戦争(Civil War)の最初の火ぶたが切られた島になりました
奴隷制を継続したい豊かな南部の州に属するサウスカロライナは、奴隷制を制限して自由貿易や工業化を進めようとする北部の州(Union)の動きに反対してアメリカ合衆国を脱退してアメリカ連合国(Confederate)を結成しました
北軍(合衆国)は先だって密かにサムター要塞に軍隊を上陸させていたのですが、チャールストンに控える南軍が特使を派遣し、速やかに降伏してサムター要塞を明け渡すようにと通告しました
もしその通告を無視すれば自国民同士が戦うという最悪の戦争の火ぶたが切られるのは明らかでしたが、北軍として降伏するという選択肢はなく、交渉は物別れに終わりました
その結果、1861年の4月12日の午前4時30分、サムター要塞をめがけて南軍からの砲撃が始まり、34時間も続いたそうです
結果的に4月14日にサムター要塞で孤立した北軍は降伏し、この島は南軍に引き渡されたそうです
南北戦争終結後、この島は一時廃墟になったものの、その後第二次世界大戦ではドイツのUボートを見つけるための基地として使用されたそうです(結局Uボートがここまで来ることはなかったそうですが)
島には南北戦争時代のレンガ造りの壁に囲まれた部分と、その後補強されて軍艦のように黒塗りの低層ビルになっている部分があり、博物館と売店もあります
ここで印象的だったのは、島の説明をしてくれたレンジャーの方の締めのスピーチでした
「なぜ皆さんは美しいチャールストンの街ではなく、こんな海の中にある要塞に来たのでしょうか?その行動や動機には何か理由があるはずです。この島で起きたことを我々は歴史の結果として理解していますが、実際には当時のひとりの人間が行動した結果が連なって起きたことであり、そこには様々な思いがあったのです。岩を運んだ奴隷、弾薬を詰めて砲撃した兵士、交渉にあった将校…それぞれの人の行動があって歴史を作り、今この地に皆さんも来ている。ぜひ、この島で見たことや感じたことを他の人にも伝えていってください」
戦争反対!というような単純な表現は使わず、戦争に至るまでの人々の苦悩や葛藤も含めてこの要塞の歴史から感じ取ってほしいという思いが伝わりました
来場者もみんな神妙な面持ちでうなずき、大きな拍手が起きました
「一人ひとりの行動がすべて繋がって歴史が作られる」
これはとても大切なメッセージだと感じました
チャールストン観光の動画をまとめてみました
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