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児童養護施設に本を贈るきっかけ

児童養護施設に本を贈る活動のきっかけを書きたいと思います。

数年前まで新聞をとっていたいたのですが、月に一度、新聞の集金があり、二十歳前後の青年が配達とは別に集金に来てくれていました。

いつも物静かでひかえめなその青年が、暑い日も寒い日も、雨日も風の日も雪の日も、がんばって配達してくれていると思うと、とても親近感がわいていました。

彼は、私がフロンターレを応援しているというと、
「サッカーのチケットが余ったので…」と、集金日でもない日にわざわざ届けにきてくれたりと、とても親切にしてくれました。
私も彼に会うと、缶コーヒーや、お菓子などを「余ったから持って帰って食べて...」と渡したりと、親戚の子どものような付き合いになっていました。

ある日、いつものように彼がバイクで集金にきてくれました。
その日はものすごい寒波の夜でした。
玄関のドアを開けると薄手のジャンパーを羽織っただけの格好で立つ彼を見て、私はちょっとビックリしました。
とても冬にバイクで走る格好とは思えなかったからです。

「ちょっと! なんでそんな恰好で来たの? こんな寒い日に? 大丈夫!?」

玄関の前でブルブルと震える彼見て私は思わず、心配の声を上げました。

彼はちょっと恥ずかしそうに、
「あ…いえ、、寒いんですけど、これしか、ジャンパーがなくって...」

「え? 朝晩の配達もあるのに、そんな寒そうなジャンパーしか持ってないの?」
気まずそうにたたずむ彼を前に
「ちょっと、待ってて!」と言いうと、急いで彼に着てもらえそうな厚手のジャンパーがないか部屋に探しに行きました。

丁度、あまり着なくなっていた、しっかりした厚手のジャンパーがあり、
「私のお古だけど、よかったらこれちょっと着てみて!そんで、よかったら、もらってくれる?」
そう言って、彼にジャンパーを渡しました。

「え!? ほんとに、いいんですか!?」
首をすくめながらジャンパーを受け取った彼は袖を通すと、
「とっても、あったかいです! ありがとうございます!」
少しはにかんだ笑顔で、喜んでくれました。

そのとき、いろいろな事情があるかもしれないけど、ちょっとおせっかいな気持ちが湧き、ご家族はどうしているのかを尋ねると、

「自分は児童養護施設の出身なんです」

彼はそう静かに答えてくれました。
そのあと、明るく養護施設での生活なども教えてくれました。
(18歳までしか施設では暮らせないので、大学に行けたとしても働くしかないことなど)
その後も、集金の度に彼と世間話をする程度の付き合いでしかありませんでしたが、何か月か後に集金の人が変わり、彼と会うこともなくりました。

月日が経ち新聞もとらなくなりましたが、クリスマス近くになって養護施設に本を贈るたびに、あの寒い日の夜の彼のことを思い出します。






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