思春期ルネサンス!ダビデ君のここが凄い
ジャンプ史上初のギャグW新連載と銘打って始まった「ジモトがジャパン」と「思春期ルネサンス!ダビデ君」。
ジモトがジャパンはジャンプ史上最速?のアニメ化も決まり勢いに乗っているのに対しダビデ君はややその影が薄い様に見える。
しかしこの思春期ルネサンス!ダビデ君、個人的にはめちゃくちゃ好きだ。
なんで好きかって考えてたら思いの外しっかりとした理由が出てきたので言語化したいと思って今これを書いている。まだまとまりきってなくて読みにくいところもあるかもしれないがよかったら読んでほしい。
私が思春期ルネサンス!ダビデ君を推す理由は以下の3つで説明がつく。
①各話がハッピーエンドで締められている
思春期ルネサンス!ダビデ君(以下ダビデ君)は基本的に1話完結型の漫画であるが、その各話の多くがハッピーエンドで締められていることに大きな特徴がある。
こち亀をイメージしてもらえれば分かりやすいかもしれないが、ジャンプのギャグ漫画は基本的にバッドエンドで締められることが多い。人の不幸は蜜の味という言葉がある通り、人間は他者の不幸に対して一種の快感を得る生き物である。それが完全なフィクションであれば読者は安心感を持って不幸を目撃し、笑いに昇華することができる。また読者は不幸な結末によってフィクションから解放されている。
こち亀はその時々の時事ネタ、流行りをベースに置き、両さんがそこでビジネスをしたりして一度は成功するものの、その行き過ぎた行動により最後は悲惨な目にあってしまうというのかオチである。こち亀においては、この最後に悲惨な目に合うということが重要であり、そうすることにより読者はいつもの両さん、物語が始まる前の貧乏な両さんに戻ることで解放感を得ている。
ではなぜダビデ君はハッピーエンドで締めているのか。それは友情、努力、勝利の3要素を実直に体現しているからである。ジャンプと言えば友情、努力、勝利の方程式をイメージする人は多いだろう。しかし最近のジャンプ漫画では必ずしもそれが表現されているわけではない。それがギャグ漫画であれば尚更だ。
ダビデ君は主人公のダビデくん(作品名との混同を避けるため便宜的に「くん」をひらがな表記とする)が目標に向かって小便小僧君やゴリアテ、モナリザさんなどの力を借りながら努力をし、当初の目標を達成するという物語の展開が多いが、これはまさしく友情、努力、勝利の方程式そのものである。これがジャンプ読者の潜在的なニーズ、あるいはジャンプが培ってきたいわゆる“ジャンプ漫画”のイメージと合致している。
また、ダビデくんは内容が日常であるがために読者が自らを投影しやすい。自らを投影したダビデくんがハッピーエンドを迎えることにより読者に疑似的な成功体験を植え付けているのである。それにより読者は清々しい読後感を得ることができる。
②世界観が超異次元的なのに対し内容は超日常的である
ダビデ君に登場する人物は主にルネサンス期の芸術作品をモデルにしている。しかしその反面内容はごく普通の日常的なものになっている。そこに大きな特徴がある。
なぜそれがいいのか。ただ日常的の内容をつらつら重ねてもそんな漫画はいくらでもあり面白くない、とまでは言わないが差別化が非常に難しい。そこでダビデ君はルネサンス期の芸術作品をモデルにすることで差別化を図っている。しかも差別化に成功しているだけでなく、キャラ付けが圧倒的にうまい。これは作者の技量に加え登場人物をルネサンス期の芸術作品モデルにしているという点でなし得ている。
真実の口先生なんてキャラがいきなり登場したら読者は困惑する。あるいはその勢いだけで笑ってしまう。笑ってしまうならいいのではないかと思う人がいるかもしれないが、それはダビデ君の趣旨とは違う。勢いだけで笑わせるなら勢いだけで笑いを取っている漫画に任せればいい。しかしダビデ君の世界観があればそんな真実の口先生も読者は受け入れやすい。受け入れさせた上で、その先生の行動や言動、設定に面白さを持たせているのだ。
ダビデ君はその超異次元的な世界観により日常×ギャグというありふれた設定の中で他の凡百の漫画にはない面白さを持っている。
③ギャグ漫画の皮を被ったハーレム漫画
ダビデ君がギャグ漫画であることは自明であるが、実はハーレム漫画でもあるのだ。
ハーレム漫画、あるいはお色気漫画といえば「いちご100%」、「To LOVEる」、「ニセコイ」、現在連載中の「ゆらぎ荘の幽奈さん」、「ぼくたちは勉強ができない」など、もはやジャンプに欠かせないジャンルの一つとなっている。ダビデ君にもヴィーナスさんやモナリザさんというクラスメイトをはじめ妹のレダなど多くのヒロインが登場する。これをハーレムと言わずなんと言おう。最近ではモナリザさんの巨乳キャラを生かしたお色気シーンまで描かれている。
しかしダビデ君の凄いところはこれだけではない。ダビデくんにはヴィーナスさんという思いを寄せる人がいて、ヴィーナスさんとの恋の成就を目指して奮闘する。つまりハーレム漫画とは言いつつもその土台には確固たるメインヒロインがいて物語は二人を中心に展開されるので、読者が置いてけぼりにならない非常にわかりやすい構成となっている。察しのいい人ならお気づきだと思うが、これは往年の人気ジャンプ漫画、I”sと同じなのだ。
そしてギャグ漫画でこれをしてのけていることに意味がある。ギャグ漫画でない漫画を読んでいて突然ギャグシーンが出てくると笑えなかったりむしろ興醒めしてしまった経験がある人もいるのではないか。しかしギャグ漫画という体裁の上で出てくるラブシーンには抵抗を感じにくい。逆にその突発さゆえドキドキが増長されることさえあるのではないだろうか。
まとめ
以上で思春期ルネサンス!ダビデ君がいかに凄い漫画なのかは理解できたと思う。最近ではヴィーナスさんがダビデくんに特別な感情を抱きそうなそぶりまで見せてもう大変である。
興味を持ったらぜひ読んでほしい。打ち切りにさせないためにも。