【是枝監督映画「真実」】特別編集版はほんの僅かなシーンの追加で全く違う切り口を見せる楽しい作品 その2
※以下ネタバレを含みます。また映画館での鑑賞をもとに記事にしていますので内容が正確でないことがあります。
是枝裕和監督の最新映画「真実」の特別編集版が公開されました。通常版の「真実」よりもイーサン・ホーク演じるハンクら男性陣にもう少しだけフォーカスした作品です。実際に鑑賞しましたが、通常版とわずか10分の長いだけなのですが、通常版と違った切り口とストーリーを楽しむことができました。
前回は男性陣の1人、ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の現在のパートナー、ジャックについて記しました。今回は、リュミール(ジュリエット・ビシュヌ)の夫ハンクについてです。
実は魔法を信じていない孫娘シャルロット
映画「真実」は、作品のあちこちに「魔法」をモチーフとしたやり取りが見られます。ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)を一躍有名にした映画で演じたのは魔女、そして庭にいる亀はファビエンヌが元夫ピエールを魔法で変身させたという話、孫のシャルロットが祖母のファビエンヌに魔法をかけて欲しいとねだるシーン。「真実」特別編集版ではリュミールの夫ハンクも「魔法」について語る場面が追加されています。
ハンクと娘シャルロットが2人で公園のベンチに座って話しています。魔法について娘シャルロットは存在しないと否定します。だって、マーメイドも実際にはいないし、ユニコーンも存在しないよ、と。これに対して、ハンクはゆっくりと問いかけます。「息をしようと思って息をしている?」「心臓動いているよね?心臓動かそうと思ってる?」シャルロットは胸に手を当てながら考え込みます。ハンクは「魔法っていうのはあるんだ」と諭します。
夫ハンク(イーサン・ホーク)がかける魔法とは?
魔法は存在しないと言い張る娘シャルロットに、ハンクは魔法は存在するとゆっくりと諭します。その会話に続いて、娘シャルロットは母と祖母の関係に言及します。娘シャルロットは「ママとおばあちゃん仲悪いね」とストレートな言葉で言うのです。通常版ではシャルロットがファビエンヌとリュミールの不仲に気づいているようなシーンはありませんでしたが、特別編集版では幼いながらしっかりとその関係を理解しているように描かれています。夕食中にファビエンヌとリュミールが喧嘩するシーンでも、「真実」通常版では孫娘のシャルロットは大人の話から外されているように描かれていましたが、特別編集版では違うカットになっています。
「私もママと仲悪くなっちゃうのかな」と言うシャルロット。「今はそうでも、いつか変わることもあるんだよ」と答えるハンク。実はこの日はファビエンヌの映画撮影があり、リュミールだけがファビエンヌに同行しているのでした。娘シャルロットと公園で遊んでいるハンクは映画撮影には立ち会っていません。「ママとおばあちゃん2人だけにしてあげよう」ハンクはそう言います。これがハンクの「魔法」なのかもしれません。
(続く)
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