「日本一、副業として働きやすいスタートアップ」を目指す会社の、副業ノウハウまとめ
ミラティブ社は、始動以来、最速でベストな組織体系を構築するために試行錯誤した結果、「日本一、副業でも働きやすいスタートアップ」を目指すのが良いという現時点での結論に至りました。失敗を含む3か月の試行錯誤でノウハウが溜まってきたので、スタートアップ副業の雇用側・働く側、双方にとって仕事がもっとなめらかな社会になればと思い、現時点で見えてきたことを共有します。(長文です!)
前提:ミラティブ社の副業の現状
フルタイムメンバー11名(うちエンジニア5名・デザイナー1名)・インターン生2名に対して、副業メンバー(当社以外でも業務を行っている、直接雇用のメンバー)は約25名です。
働く量は週1日分程度~週3日程度まで様々。原則はリモートでOKで、必要に応じて出社(働く時は必ず来るメンバーもいます)。業務コミュニケーションツールはSlack。内訳は、エンジニア10名・デザイナー3名・データ分析3名・残りは企画・バックエンド・ビジネス職です。契約は、稼働の振れ幅に応じて固定給の業務委託契約か時給型かを使い分けています。稼働時間管理はSlackの日報チャンネルで、後述しますが一定は性善説運用です。
純粋にプロダクトや技術セットが刺さったエンジニアをはじめ、メガベンチャーの執行役員・元CTO経験者等も多くいて、プロフェッショナルの能力と知見をフル活用しながら事業推進できていると実感しています。
現状でもかなり副業割合高いのですが、特にエンジニアやデザイナーはもっと活用していこう、と最近意思決定しました(のでこちらでまだまだ募集中です!)。
副業での加入ソースはリファラル中心で、あとは副業マッチングサービスのYOUTRUST経由も2名います(教えると競合増えちゃいますが^^、とてもいいサービスです)。
以下、スタートアップ側・副業する側それぞれのメリットと、お互い幸せになるために重要だなと見えてきたことを書いていきます。
副業活用のメリット(スタートアップ側)
必要な業務に対して、ベストなアサインを柔軟に検討できる
「中国との交渉案件があるが、まだフルタイムの中国メンバーは不要」「上場を目指しているのでちゃんと会計処理を進めたいが、まだCFOを入れるフェーズではない」といったケースで、その領域においてトップクラスの知見を持っている人に副業で来ていただくことで、固定費を抑えながら高いレベルのoutputを活かすことができます。
個人的に昔から、何かやったことないことをやる・考える時は、「その領域にいちばん詳しい人」に必ず話を聞きに行くようにしています。一流プレイヤーの2時間のoutputは、初心者の1週間のoutputを大きく上回る、というような領域は実際に多くあります(残酷ですが…。例えばデータ分析とかはまさにそうだなと)。
こうした領域では、採用競争力が強くない状態でフルタイムを必死に探すよりも、副業でプロフェッショナルのサポートを受けながら、もし必要なら手を動かす部分に自分含む成長期待者を置く、というような構造を取った方が良い場合もあります。
実際にミラティブ社でも、インターン生が、その領域トップ級の人の直接のinputを受けてものすごい勢いで成長しています。(雇用とノウハウの流動性が、業界全体の人材レベルを上げていくとしたら、いい時代ですし、シリコンバレーはそういう基盤に支えられているようにも思えます)
(相手の事情によるが、一流ほど)刺激的な仕事を提示できれば意思決定までの障壁が低い
日進月歩で進化が進むテクノロジー業界では、イケている人ほど、新しいものへの好奇心や危機感を強く持っています。とはいえこうした方々にも、「転職」はまだまだハードルの高い意思決定であることが多いです。
現職での役割への責任感や、大手企業ならではの福利厚生や給与(生々しい話としてはストックオプションの行使可能時期といった現実的な重要お題)はもちろん転職時の重要意思決定ポイントになります。
また、「ジョブホッパー」な印象はネガティブにはたらく企業もまだまだ多いため、「最低2年はここでがんばろう」といった考えで転職をする人がまだ多数派だと感じます。
ただ、昨今増えている副業が許可・推奨されている会社の副業であれば、「こんな面白い仕事があるのに乗らないのはもったいない」という好奇心ありきの発想や、「この仕事を経験すると自分の価値をもっと高められる」という発想が心理的にしやすいです。先方の社内で「この仕事の経験を現職に還元できそうです」といった説明もしやすいかもしれません。
実際、副業メンバーからも刺激や経験についてはポジティブな声が多いです(生の声はこちら)。
「やりたくないことやってるひまはねー」はブルーハーツの名言、「やりたいことやるだけ」はブルーハーツを愛するKOHHの名言ですが、個人側にパワーバランスが移った「好きなことして生きていく」の時代において、「今しかできない楽しそうな仕事」を一流に熱意をもって提示できれば、さすがに転職は今ムリ、な人でも手伝ってくれる率はかなり高いと実感しています。(正直なところフェーズ的に強烈に魅力的な給与が提示できているわけではないので、「これはやってみたい…!」と思ってもらえているのだと思います。魅力の提示は、会社やプロダクトのミッション以外にも、技術セットや、メンバー、データ、予算等、いろんな場所に作れうるはずです)
勤務開始までが早い
フルタイム採用だと、正式入社まで2か月以上かかる、というようなことも多くあります。スタートアップのスピード感だと、正直3か月後にどんな仕事がいちばん必要になるかはよくわかりません。副業を前提にしたjoinの場合、面接でお互いぜひに、となった人にはその場でSlackに入ってもらい、即日知見を活かしたり手を動かしてもらう、ということが行いやすいです。
「いま働きたいメンバー」に来てもらえる
実はこれが一番重要かもしれません。副業したい人のモチベーションは様々ですが、いずれにせよ副業メンバーは、「通常業務とは別に、いまこの会社で働く理由」を明確にもっています。
そのため、「最近やる気が出ないんですよね…」というような相談が出ることが構造的にあまりなく、プロジェクトが完了したり本人のやりたいこととズレたら(あるいは本業が忙しくなったら)、「ありがとう!また頼むわ!」と前向きに応援団側に回ってもらえる・必要な時にまた手伝ってもらうような関係を工夫次第で作ることができます。
なお、フェアな給与を支払うのはもちろん大前提・重要ですが、給与だけで働く先を決めている人は、給与でまた移ることにもなりやすいのでおススメしません。「いまここで働く理由」は徹底的に腹落ちしてもらうのが良いです。
実際の絆を持った「仲間」、より共闘感のある応援団ができる
クラウドファンディングや昨今上場したXiaomiのオープンイノベーションしかり、「いっしょに考える・いっしょにたくらむ」ことが絆を生む、コミュニティの時代でもあります。同じミッションやKPIを見て、業績向上に必死なチームの熱量に直接触れた仲間は、より熱を持って各所で自社のプロダクトの話をしてくれたり、人を紹介してくれたりします。エモは伝播する。
実際、派遣会社さんに頼んでその会社のことをよく知らず働きにくる方(うちだと0名です)、と、直接請われて、直接その会社に興味を持って働く意思決定をした方、の間には大きなエモさの差があります。ミラティブ社の場合は、役割の違いは人としての上下をなんら意味しない、という「誰もえらくない組織」を目指しているので、副業もフルタイムも変わらない仲間、という設計思想でやっています。
副業で働く側のメリット
やりたいことをやる・やりたいからやる、を貫ける
実力があること・実力主義であることが大前提ですが、「やりたいからやる」ものが副業だと思います。やる意味がない、やりたくない、ならやる必要はないので、「どうしても会社の事情でこれをやらざるをえない」というようなことはなく、「いまこの仕事をやる」自身の理由を貫きやすいはずです。
違う領域・違う環境での個人の成長=「当たり前」の差分がお互いの価値に
例えば当社の例でいくと、「今はB2Bの会社にいるが、C向けサービスをやりたい」「今いる会社では新しい技術セットがどうしても試しづらいので、ここで試せるならぜひ」といったニーズとの一致例があります(別視点ですが、一定以上のサイズの企業経営の視点だと、こうした方々をあっさり流出させないためにも副業の推奨・許容は有効かと。メルカリさんとかこのへんさすがだなーと思います)。これが見事にWin-Winになります。
スタートアップは、傍目にうまくいっているところでも細かな部分はボロボロ、ということは多いので、現職での「当たり前」の動きや基礎整備でもベンチャーでは神の一手になることが往々にしてあります。個人のパフォーマンスが全体の成長に直結するのは少人数組織のだいご味です。
ちなみにミラティブ社の組織コンセプトのひとつは「やおよろずの神」です笑。皆が得意領域を持ち寄ることで、「神!」と感謝のチャットやスタンプが飛び交う光景が日常的になっています。誰かの役に立つのって楽しいですよね。
スタートアップ経験・体験と見極め
基本的にやらないと死にかねないPriority1事項しかないスタートアップでの経験は、(その達成のために副業メンバーにも来てもらうので)ヒリつく意思決定経験にも直結します。経営陣とフラットな距離感で、成長のためにどんな打ち手をしているのか、答え合わせ付きで間近に見れることも学びになります。(単純に別サービスのKPI細かく見れるだけでも学びですよね)。
一見キラキラしたように見えるスタートアップですが、実際の中身は多くがカオスで毎日がギリギリの勝負です。その中での体験は、カオス耐性含めて貴重な経験になるはずです。
また、残念ながらすべてのスタートアップが成功するわけではないので、うまくいかない場合のリスクも考えると、どこに入るかの見極めは当然重要です。
スタートアップ側としては、見極め目的で副業に来られるのは正直嫌ですが、相性が合わない人の正式入社はもっとお互いにとって本当に不幸になるのは間違いないので、「まず一緒に働いてみる」はお互いにとって最良の手段なことも多いです。
人間は環境の奴隷な側面があって、知らず知らずのうちに現職の固定観念に影響を受けていることは多いのだなと自分も大企業からスタートアップして改めて感じました。やりたいことと一致してスタートアップで経験を積むと、それが現職でのパフォーマンスや市場価値向上にもつながることは多いと実感しています。
もちろんお給料や市場価値
これを無視するのもそれはそれで違うと思っています。先述のとおり、給与だけで考えてしまうと正直スタートアップでの仕事ではなく他の選択肢を取った方が良いとは思いますが、対価を得つつ(=責任を保持しつつ)現職と違う仕事の経験をすることは個人としての市場価値の向上につながるはずです。
その他、実際に働いている人の生の声
中の人の実際の声もこちらでまとめています。生々しい!
双方幸せになるためのポイント
ここまで副業はいいことづくめのように話していますが、当然落とし穴や地雷はあって、我々も3か月でバンバン踏みながらラーニングしてきました。双方が幸せになるためのポイントについて、スタートアップ側の立場から以下列挙します。(副業で入るメンバー視点では、こういうところをちゃんとやってるか見極めると良いかと思います)
「リモートや副業メンバーに振りやすい仕事」の整理
プロフェッショナルとて魔法使いではありません。プロの一手がゲームチェンジになる領域がある一方、密に連携した熱量高い初心者集団が時間を使う方が、プロフェッショナルのリモートより成果が出る領域も当然存在します。「どういう仕事なら外からでもやりやすいのか?」の整理は重要です。
例えば我々で失敗したこととして、グロースハック系タスクの開発をリモートのエンジニアに依頼したケースはうまくいきませんでした(スピード出ず)。分析企画側での意図を高速で実装に落とし込んでPDCA回す領域だと、リモートだとコミュニケーションコストが大きすぎた、という例です。逆に、課題をきっちりsyncした上での細かなデータ分析等の仕事は副業でも十分に成果(むしろフラットな視点で内部では見れない気づき)が得られています。他には、「納期がマストではない、とはいえ絶対やるべきな重要事項開発を、週1メンバーで1か月かけて投入する」等。リモート向きの仕事の見極めはきっちりやるが吉です。
Missionや戦略のsyncにきちんと投資する
目指すゴールや成果の定義がズレているとどんな仕事もうまくいきません。「あなたの立場に立てばあなたが正しい、私の立場に立てば私が正しい(byボブディラン爺)」は人類の永遠の課題です。そのため、何を目指している会社なのか、何を手伝ってもらいたいのか、その最新状況はどういう感じなのか、のアップデートは非常に重要です。
例えば当社での対策としては、月に1回、副業者も集めて最新の戦略アップデートをして皆でオフィスで飲む「プレミアムエモイデー」というのをやっています。仕事している仲間の顔やキャラクターが見えるかどうかでもパフォーマンスは変わるので、毎月必ず「最近あったエモい話」を添えてみんな自己紹介するという長い儀式も沿えています笑。万が一来れないメンバーにも、即日の動画と資料共有でシンクロを図ります。(↓こんな感じで始まるエモい資料)
期待値のわかりあい
何を期待してのアサインなのかの期待値がズレていると失敗します。基本的な部分としては、頭がほしいのか、手がほしいのか、といった部分。手を動かす場合は誰でも相応の時間投資が必要なので、副業だとN日/営業日のパフォーマンス期待にどうしてもなります。その認識はすりあわせましょう。
お互いのわかりあい(双方のエントリーマネジメント)
リモートが中心になるので、期待値に対しては必ずこたえるプロフェッショナリズムや、人としての誠実さはとてもとても重要です。なので、副業だからといって採用基準を下げるのは絶対にNGで、ミラティブではフルタイムのメンバーと同じ採用基準で「いつでも・いつかフルタイムになってほしい人」のみに来てもらうようにしています。逆にメンバー側から見ても、ほんとにお金払ってくれそうかも含め笑、自分が人生の時間を投資してよい会社なのかの見極めは徹底的にやってもらいます。
誠実なメンバーがそろっているなぁと感じる実ケースとして、現職の繁忙期でどうしても稼働が取れない月があった際(某社の上場月とかネ…)に、「今月は予定よりも量を動けなかったので給与も〇〇でいいです」と"自分から"言ってきてくれました。そういうフェアなメンバーであれば、リモートだろうとパートタイムだろうと期待した分の仕事・期待以上の仕事を全力でやってくれます。
徹底的な性善説
関連して、リモートはどうしても細かな勤怠の管理がしにくいので、性悪説で組織運用している会社だとなかなか厳しいかもしれません。ミラティブ社の場合は、徹底的な性善説でやるからこそ、エントリーマネジメントには全力投資する、でやっています。「今この仕事をやる理由」があるメンバーは、小金を稼ぐためにこすいことをしないものです。(優秀な人ほど、人材評価も経営者間でやり取りされることをわかっているので、そういった自分の評価を中期で下げるようなことはしません)
分け隔てなく仲間には同じ情報を提供して、双方で信用に応えあうような組織であれば副業もフルタイムも変わらずワークします。
まとめは以上です。少しでも、副業活用してみよう!と思うスタートアップが増えたり、副業してみたい!と思う個人が増えて、日本から多くの成功スタートアップと幸せな個人が増えていく一助になれば何よりです。
最後に、ミラティブ社ではまだまだフルタイム・副業の垣根なく積極採用中です。サービスの伸びもさることながら、いま世の中にないむちゃくちゃ面白い動きを仕掛けているので、最高に面白いフェーズと思っています。特にエンジニア・デザイナーが強烈に足りていないので、この記事読んで、ぜひやってみたい!!と思った方、ぜひこちらからお声がけください!
10人前後のカオスな成長スタートアップ、最高に楽しいですよ。当社にかぎらず、スタートアップへの飛び込み、お待ちしてます!