【自戒】こんな組織じゃオワコンだ。と、ミラティブ社で意識・実践している16のこと【逆張り】
*当記事は、登壇資料の補足記事である。長文につき、時間がない方はこちらの資料のみ版だけでもご参照いただけると嬉しい。
週末、「エモさが作る組織」というテーマでフジテレビのプライムニュースαにミラティブ社を特集いただいた。
ちょっとエモフォーカスで実態よりだいぶ陽キャっぽく見える感じだったけどw、ミラティブはとにかくエモい会社にしたいと思って作ったのは事実だ。
先週はセガから元取締役CSOの岩城さんを迎え入れる発表をしたこともあり、まだまだながら「組織力」についてForbesに記事にしてもらったタイミングでもある。
「採用候補者様への手紙」もミラティブなりの正直な組織の現状をつづったものだ。
そんな折、登壇で「思考法」をテーマにお題をいただき、ちょうど最近の考えをまとめたので、outputしておく。
(何かに時間を使ったらとにかく最大限活用したいケチな性格なのだ…)
資料中にもあるが、登壇資料でもありスタンスを明確にしたかったので(あとは、やっぱ書いたからには読まれたいので少しだけパンチを意識して…--;)、「オワコン」という強めの単語をあえて使っている。あくまで自社・自分への強い自戒を込めており、特定の団体・個人・思想などを貶める意図はいっさいないのでご理解たまわりたい。
また、あらゆる人にとって最高な組織や経営など存在しない。2019年にプロダクト重視のスタートアップとして急成長を目指すミラティブ社の考える理想や自戒をoutputしたものだ。もちろんすべてこのとおりできているはずもなく、我々も、日々悪戦苦闘しているのだが、少しでも自身の会社の組織や個々のキャリア等の参考になれば嬉しく思う。以下、個別スライドの詳細を綴る。
まず前提。スマートフォンは革命だった。
「インターネットの本質は?」と問われたら、自分は「個のエンパワーメントと距離のゼロ化(含・不要な中間レイヤーの排除)」と昔から答えている。そのインターネットの力を "Power To The People"でいつでもどこでも人類全体に行きわたらせた五感の拡張機がスマートフォンだ。
あらゆる人が膨大な情報にいつでもどこでもアクセスできる、という前提に立ってサービスや経営を考えるべき、というのが自分の基本スタンスである。
ロジカルからエモへ。
論理的思考が不要になったという話ではなくて、(AIで補強された)論理的思考はもはや前提であり、その上で何をしたいか、が重要になっているというニュアンス。
論理的思考は自分に見えている景色・自己の持っている情報から最適解をはじき出すものだ。不確実性の時代・情報爆発の現代で、全てのことが見えているというのは傲慢でしかなく、「見えてない何かが起こる」「良くないこと・予想外のことは起こる」という前提でアクションする必要がある。
ロジックには不向きな状況がある、という認識をもった上でロジックを活用する人の論理以外は信用しにくい時代だなと思う。
Gunosy創業者の福島さんのこのツイートが的確。
余談ながら、僕はDeNA時代に学生向けに「ロジカルシンキング講座」というのを受け持っていたことがあり、ドヤドヤとロジックの重要性とMECEについてマウンティング気味に語っていた黒歴史を持つ…。
性悪説経営から性善説経営へ。
これは各所で書いている。人を信頼するほどコストが低くてすむ。そして速い。多段的な承認プロセスも交通費申請も、本質は「信頼」の濃度で生まれるものだ。疑いが濃いとなめらかさが消える。
そして、優秀な人ほど、現代はリファレンスが回ることもよくわかっているので、こずるいことはしない。
トラブルは必ず起こるが、一事を万事にせず、性善説を貫けることが優秀な人材を惹きつけ続けるための要諦になりつつある。
「だまされるまで性善説、だまされても性善説」とチームには言っている。
ルールや罰則への恐怖で動くチームは、ルール外の想定外事象や、突如やってくる全く新しいアプローチの本質的競合への対応に脆い。
性善説経営を前提に、規則ではなく美徳や美意識をすりあわせていくことで、規定外のことでも判断が一致する組織を目指したいと思っている。
ミッションへの共感や、価値観、行動指針といった経営要素は、チームで何を良しとするかの「美徳」で、実際の行動の中身は個々人に委ねられる。
テクノロジーで強化された人類は基本的に「縛れない」。
権限の委譲の方法としても、HOWを縛るよりも、WHYや、何の価値を届けるのか、をわかりあった上で一任していく方が、個々人の才能・可能性を解放したoutputに昇華されるなと感じている。
今世界で最も流行している音楽ジャンルであるヒップホップの強さやイズムは、HOWの縛りではなく「決して譲れないぜこの美学 ナニモノにも媚びず己を磨く」(RHYMESTER「B-BOYイズム」より)という「美学」にある。(だから、ラップがない音楽でもヒップホップ、というカテゴライズがなされることがある)
あるプレスリリースでもマウントはオワコンだ、と書いた。
裸の王様の時代から「驕りは敵」で変わらないが、王様以外の個々人が持っている情報の量や発揮できる価値の質は劇的に変化した。
多彩な個々人の価値を結集させないと、世界戦では勝てない。あるいは、価値を提供「しつづける」のは難しい。
お互いの価値観を尊重し、それぞれの得意領域を掛け合わせていく過程だけが、共に働く仲間もユーザーも惹きつけ続ける時代なのだと信じている。
特に流行に関わるC向けのプロダクトは、感性は若い方が価値が出せる、オペレーションは経験者の方が価値が出せる、というケースが多い。Facebookができた時ザッカーバーグは19歳、Snapchatができた時スピンゲルは21歳だ。基本的には「すごい若者」の方が圧倒的に希少性が高い。
そして人が「想い」「意志」や「証明されてないこと」を堂々と発信できるのは、心理的安全性が確保された環境だ。高めあう化学反応は大歓迎だが、プライドを誇示したいジジイのマウントにわざわざ付き合うような「終身雇用なのでやむなくヨイショする」などの論理は優秀な若者にはもはやない。「言ったら怒られる」の先の「言っても別にめんどくさくない」環境・「何か言うと、うわ何それマジ最高じゃんと讃えられる」環境=心理的安全性の確保が重要だ(強めの自戒)。
主張とマウントの間には細やかなニュアンスの差がある。あらゆる主張は、他者へのリスペクトと、異なる価値観の尊重のもと行われてほしい。
他者に威嚇的・高圧的な「マウントを取る」時は、多くが自信がない時・ビビっている時だ。自分のDeNA執行役員時代とかは実はたぶんこれだった。
自分の弱さとの向き合いはいくつになっても変わらないなと日々思いながら生きている。
なお、Slackはこの点でも非常に良いツールで、とにかくありのままの自分・ダメな自分、あるいはくだらない冗談や悪ノリを共有しやすい。
テクノロジーを活用して、心理的安全性のあるチームビルディングをすることを常に意識している。
なお、私は、とはいえ普通にしゃべっているだけでマウント的になりがちなキャラなので、ここは自戒がいちばん濃い。
最近は、フジロック行くのが趣味です、という人に「僕は今まで19回行った」と普通に話したらマウント取ってきますね、と笑われた。w
ただでさえ、経営者は全能感に襲われやすい職種だ。最終責任者として、「指示・命令」も手段としては行使できる。仲間の力での成果や、「運」を自身の能力によるものと誤認しやすい。物事がうまくいっているときこそ、全能感を排除して、地道に次のコトに投資していく必要がある。盛者必衰の歴史は、全能感への制裁の歴史でもある。
最近、「おこがましい」という単語をよく使う。
多様な価値観を持つ人間を「コントロール」できるなんていうのはおこがましさの塊でしかないと思う(それはたいてい全能感からくるバグだ)。
まず、「自分で全部をコントロールするなんて絶対無理」と認めるところがスタート地点なのかもしれない。コントロールできていると感じる時は、スタートアップの発想だとアクセルが踏みきれていない時=スピードが足りてない、と思うようにしている。
そして、エネルギーはカオス・混沌から生まれる。
経営者ができるのは、各人のエネルギーのコントロールではなく、せいぜい「アライン」くらいまでだと思っている。個々のエネルギーの向かうベクトル・放射の角度を決めて、その方向に最初の火を放熱する。カオスの中でエネルギーの跳ね返りから核融合や核分裂、連鎖反応が起こり、爆発力になって物事が推進される。そんなイメージ。
ハイロウズ時代のマーシー曰く「混沌と混乱と狂熱が俺と一緒に行く」のが「青春」らしい。
スタートアップは青春なので、混沌と混乱と狂熱が必要だ。混沌をアラインしよう。
国家から会社に至るまで、インターネット以前の人類は情報格差を組織運営・マネジメントの基本としてきた。
情報格差を活かし、提供する情報をコントロールして、そのアービトラージ(さや抜き)で自己利益を得る、というのが原理原則。部長は課長より、課長は普通の社員より情報を持っているので、マウントが取れる。(ある意味、能力差ではなくてチートとも言える)
ただ、スマホを持った人類は、エンパワーされており、欲しい情報を自分で集めてくることができるようになった。
例えば自分のスキルに対しての市場価値もすぐに当たりがつく。
その中で「いいからやれ」や「チームの中で〇番目の成績だから給料は上げられない」みたいな会話はなかなかにオワコンだ。
これからやるべきは、優秀な人材は自分のアクションに必要な情報は自身で集めてくることができる、という前提(情報リテラシーへの信頼)のもとで、環境を整えてその個々人をエンパワーすることだ。情報はフルオープンで、いつでもアクセス可能・取りやすい状況にしておく。
その状況下でゴールを共有して、能動的に整理・アクションしてもらう。
これはもはや散々「リーン・スタートアップ」等で語られていることであるので今更語るまでもないだろう(と思っているが、念のため)。
役員会資料的な事業計画は論理の積み重ねで、異なる情報を持っている人がそれをレビューするのは議論の前提あわせだけでも大変である。「わかってない」人たちの、そのあとの議論の的ズレのひどさといったら、という例は枚挙にいとまがない(自戒と懺悔である)。
計画が必要ないということではなく、仮説とその検証計画を責任者が責任者自身のために立案するのはむしろ必須だ。あとはとっとと実行して、「やってみてわかったこと」に最適化していく。
あらゆるもののデータが取れる時代に重要なのは、頭の良さそうな人たちのマウントの取り合い議論ではなく、実行して溜まる生データと経験だ。
そして、いちばんお客様・ユーザーに触れている人が持っている「直感」は、経験からはじきだされるものなのでとても貴重だ。それを信頼して、「わかってない」自分達は、リスクマネジメント(この点だけはたいていオジサンの方が強い。まさに経験)と、検証計画がMVPになっているか(Minimum Viable Product = 不必要に盛ってないか)、だけ指摘するくらいでよい。
そして、仮説が正しかったかどうかで評価するよりも、仮説検証の結果わかったことの大きさ・広がり・蓄積をこそ評価する。そんな感じが良いなと思っている。
ホンダの「イノベーション魂」は自分が人生で最も読み返した教典のような記事だが、そこから引用しておく。
「会社の施策を2つの軸で評価してみるとよい。お客さんが喜ぶかと、中堅から下の社員が喜ぶかだ。
例えば役員報告の資料が厚くなってるのはダメな見本だ。そんなことをしてもお客さんは喜ばない。作らされる部下も喜ばない。喜ぶのは役員だけだ。本質的なことをちゃんとやってないとだめだ。」
市場があるからやる、は、事業の可能性を説明する要素としては間違ってないのだが、順番を間違えてはダメだと思っている。
解決したいことや、なぜやるのか、なぜ自分・自分たちがやりたいのか、そういった「想い」がまずあるべきだ、という話だ。
特に0->1をやる時は、そもそも市場なんてないことが多いので、想いがより重要だ。 企業内新規事業がコケる理由の多くがここにあるように思っていたりする。基本的に新規事業はつらい。つらい時に支えになるのが想いだ。想いの差がいわゆる三木谷曲線(0.5%の差が毎日出ると年間でものすごい差になり中期の結果が劇的に変わる、という楽天三木谷さんの名言)になって中期で大きな差になる。
エンパワーされた個人は、「納得感」のないものには動かない(ため、納得感のないチームで作られたものは脆い)。
「チームの仲間が、なぜあなたがリーダーの企画に人生の貴重な時間を投資してもいいのか」への回答は、ロジックの納得感も重要だが、「まぁしょうがねぇなぁ」も含めた想いへの納得感が重要だ。
想いのないものは絶対にやらない。施策単位でも想いは絶対に求める。
例えばつい先週から当社ではリファラル採用制度(知り合いを紹介してくれたら感謝報酬をバックする制度)を始めたのだが、説明資料の最初のページはまず想いからだ。
想い・エモが大事になっているもう一つの背景は、情報インフラの整備だ。
昔はテキストしか載せられなかったネットに、写真が入り、動画が入り、ライブストリーミング(常時接続)ができるようになった。
このトレンドを僕は「脈打つインターネット」「生命的インターネットの時代」と言っている。
対面でしか想いを伝えられなかった時代は終わり、いまや想い・脈を伝える手段は整備されている。現代なら、エモは伝播する。
関連して、採用の考え方について。
テクノロジーで個のエンパワーメントが起こったということは、パワーバランスは基本的には個人側にある。
個人がやりたくないことをやっている暇はないし、報酬だけがやりがいなら他社に移れてしまう。
そんな時代に、企業ができることは、「いま、ここではたらく理由」を提示しつづけることだけだと思っている。それは、「機会」なのかなと。
「しつづける」もポイントで、長く働いてもらいたいなら、単発の機会・テンション上げだけではダメで、「はたらきつづける理由」を提示しつづける必要がある。
そして、そもそも「採用」という単語が好きでない。「採って用いる」。なんだか上から目線じゃないですか。
同じく、「HR」という単語を「Human Resource」と読むのは人を資源・モノと見ているようで何だかえらそうな気がする。
「Human Relations」を「デザインする」のが今やるべき人事的な仕事だと考えている。
この「Relation・関係性のデザイン」というのは、脈打つインターネットの時代の大トレンドだと思っていて、「PR(=Public Relations)」も、「IR(=Investor Relations)」も、「関係性」の仕事だ。
昔はテキストのプレスリリースしか使えなかったところに、SlideShareでもオウンドメディアでも動画でもライブ配信でも、様々な手段が活用できる。メディアを手段として捉えて、想いを共有して、ファンを作っていく。
ソフトバンクのIRは、もはやロジックではなく孫さんの劇場だ(エモと実績で殴られるが、内容を冷静に考えると結構ぶっ飛んでいることも多いw)。「孫さんファン」というコミュニティにエモを伝えて投資をしてもらう、ある種のコミュニティマネジメントだ。
プロジェクトを一緒にやるメンバーは、会社ミッションのファン、プロジェクトが実現する価値のファン、そして仲間同士のファン、であることが圧倒的に望ましい。僕もミラティブチーム・ミラティブの仲間の大ファンで、自慢したくて仕方ない。チームのメンバーもそうだとしたらたぶん強い組織だ。仲間に向き合って、仲間同士が楽しく最高のoutputを出せるようにHR機能をデザインしていきたい。
バラエティ・笑いの大きなトレンドとしても、マスコメディから内輪ノリへ、というシフトは起こっている。
フィッシャーズは完全に内輪ノリだし、テラハなりリアリティショーも内輪ノリが拡声されたものだと思う。
内輪ノリを楽しむには、物語・ナラティブが必要だ。(まさに、「関係性=Relations」の。)
内輪ノリの笑いはハイコンテクストで、その「わからない人にはまったくわからない感」も、またコミュニティの熱量を上げる。(レイザーラモンRGのスティーブジョブスネタが大好きなのだが、ジョブズとB'z知らない人にはなんら楽しめないだろう…)
組織トレンドも同様だと思っていて、僕は「部活感」と呼んでいる。部活、楽しかったじゃないですか。部活のような楽しさで仕事をしてはいけないとは誰が決めたのだろう。「好きなことで生きていく」の時代に、ある物事をとにかくやりたい奴らが集まると、それは自然に部活的になるようにも思う。ミラティブで働くことは、最高の部活みたいになると良いと思っている。
もちろん、部活に先輩後輩問題があるのと同様に、過度な内輪ノリは新規を入りにくくするなど様々な問題がある。このあたりをどう解決していくかは当社でも今後の経営課題になると思っており、まさに「Human Relations」のデザインのポイントになりそうだ。
ただ、ここでもテクノロジーにエンパワーされた人類は強いと確信している。昔は60年代のロックバンドの議論はリアルタイム世代の独壇場だったが、SpotifyやYouTubeでいつでも何でも聞ける今は、むしろ若者の方が量を聞いているしポップ音楽史に詳しい。共感した仲間を集めた上での、情報の設計がやはり重要になりそうだ。
そして、Mirrativという事業自体が、「古参vs新規」のようなユーザー課題に長年向き合ってきたので、人と人が集うということの本質は変わらないものだと信じている。
いずれにせよ、人数が数百人やもしかして数千人になったとしても、「大きな組織」というよりも、「小さな熱狂的組織」の「連環」の方が強いのではないかなと漠然と思っている。と、書いていて「これって群戦略ってことなのかも」と思い、やっぱり孫さんはすごい。
「面接」の45分間で、お互いの本当の相性を見極めるのはかなり難しいと思っている。100%見極めできると思っているなら、それはもはや傲慢だ。
また、「社員として入社」となったなら、相手の履歴書に記帳されるわけで、その人の人生の貴重な時間を投資する価値がありそうか、を応募者にも真剣に判断してもらわなくてはならない。それを45分の、かつ組織のごく一部の相手(面接官)の印象だけで、相手に求めてしまうというのは何ともリスクを要求しすぎな気がする。今の面接制度は、付き合う前に結婚を要求しているようなものだ(*篠田麻里子さまのようなケースもあるので時には素直に羨んでいく)。
なので、ミラティブ社では、お互いの相性や方向性の合致を双方である程度確認したあとは、面接をたらいまわしにすることはせず、とりあえずその場でSlackに入ってもらい、2週間~4週間、副業的にいっしょに仕事ができる・少なくともやり取りが全て見れるようにしている。
いっしょに仕事をしてみれば、お互いだいたいのことが(特に「お互い長くいっしょにやっていけそうか」くらいは)わかる。
企業が外に言っていることが本当に言行一致しているのか、集まっている人材は自分に学びを与えてくれそうか、などなど、Slack内で飛び交うやりとりや仕事を通じて、候補者側に存分に判断してもらう。
スタートアップにとって最も怖いのは採用ミスでもあるので、企業側のリスクヘッジの観点でもワークしている。
ここからの4つは、トレンドに対してあえて自分が逆張りをしていることを記載する。
(繰り返しだが、トレンドに対しての批判的な側面を持つものではないことも強調しておく)
「ゼロ・トゥ・ワン」の著者で名投資家ピーター・ティールも「自分だけが信じる隠れた真実」=逆張りの重要性を説いている。(「何よりの逆張りは、大衆の意見に反対することではなく、自分の頭で考えることだ。」と一節にある)
最初のトレンドは「短尺化」。人はどんどんせっかちになっていて、映画→テレビ→YouTube→3分のYouTuberと、映像エンタメの消費手段を変えてきた。自身で物事を選ぶ「めんどくささ」がリコメンドによって強化されてきた流れでもある。この短尺化の波がいきついた先の象徴が15秒のTikTokだと捉えている。
この「せっかちさ」「めんどくささ」の重要性は大きく変わらないが、次は「垂れ流し」が来ると逆張りしている。
例えば「Zenly」は友達に位置情報を垂れ流すアプリだ。もはやLINEで「今どこ?」「今ひま?」と聞くのすらめんどくさいのだと見ている。Mirrativも、モンスト中に「爆絶回る人募集!」とSNSにポストするのももはやめんどくさくなっていて、配信しておくだけで一緒に遊ぶ人が見つかる、といった側面がある。
5Gの時代になると、データ量的にもあらゆるものを常時接続することが可能になる。
短尺から垂れ流し・常時接続へ。プライバシーの概念も変わっていくはずだ。
今のトレンドは「フリーランス化」で、優秀な人がフリーランスになることで企業に搾取されず適性な報酬・所得になることは素晴らしい流れと思っている。一方で、いわゆる「フリーランス」だと給与(資金)は上がっても「アセット(資産)」がたまりづらいのが課題だ。
また、「お金のためだけにする仕事」はつらいと考える世の流れもあり、今後はあえて企業に所属して「資産」になるキャリアパスも見直されると思っている。ふろむだ氏の言う「錯覚資産」的ではあるが、「今メルカリにいて、起業します」と言われると、お会いしたことない方でもそれだけで注目してしまうのが人間心理だ。
当社も副業をフル活用しているが、お金のための副業というよりも、(もちろんフェアな報酬は払うが)「経験のための副業」をしたい人が集まっている。経験は「資産」だ。
資産は様々な形でレバレッジがかけられる。キャリアパスにも、短期の損益(P/L)ではなくバランスシート的にキャリアをとらえる、ファイナンス思考の時代が来ている。
(*いまフリーランスの優秀な方で、そろそろ「チーム」で仕事したいと思われたら、ぜひ当社もご検討ください!実際、当社には「元フリーランス」が何人かいますが、なんかむちゃくちゃ楽しそうです)
「ファクトフルネス」がヒット中だ。自分はまだ途中なのだが学びがたくさんある本だし、妄想や偏向報道に踊らされずファクトをもとにして考えることの重要性は本当に高まっており、良著と思う。
一方で、逆張り好きな自分としては、ファクトが重要と言われる時代こそあえて「ニュアンス」を大事にしたいと最近思っている。この記事の中にもニュアンスという単語がいくつか出てきた。想いをデータからのみ語るよりも、ノリやトンマナ、例示・引用によって「ニュアンス」が伝わる。
例えば、「コンセプト」はニュアンスの塊だ。Mirrativでは「友達ん家でドラクエやっている感じ」としている。「感じ」と書いているのでニュアンスそのものである。ニュアンスは、ハイコンテキストな分スピードを生み、強いチームやプロダクトを作る。(LINEのスタンプはハイコンテキストなニュアンス伝達そのものだが、スタンプのおかげでコミュニケーションのスピードが上がっているのと同様だ)
先ほどのホンダの記事から別箇所を引用する。
「車の部品設計1つをとっても、コンセプトで直線か流線かが決まる。営業もコンセプトに沿って売る。だから1つのコンセプトにのっとって作られた車は、ほかとはわずかに違う匂いを発する。お客様はその匂い、違いを敏感にかぎとるのだ。」
もちろん、ニュアンスすら科学できる時代も到来しうるが、当面は人がコミュニケーションしながら仕事をする。人を巻き込むにはニュアンスの力に頼っていきたい。
最後に、言うまでもなくビッグデータの時代である。データが重要なんてことはもはや当たり前のようになってきた。データは金脈としては石油だが、存在はもはや水だ。誰でもデータを活用できる、その時代にこそ、テクノロジーを何の目的で使うか?の哲学が求められると信じて、ある思想・哲学で芯をとおした経営を心掛けている。
と、何でエモいのか、にオチもついたところで、長文を終える。
これらの思考、自分のここ数年の考え方に大きな影響を与えた哲学書が「反脆弱性」だ。「ブラック・スワン」の著者、タレブ氏の本で、メルカリの進太郎さんも激賞していた。ミラティブ社が、変化に強い、トラブルをむしろ成長の糧にする「反・脆い」組織を志向しているのは、この本の影響が大きい。とにかく長くてパンクな本だが、記事の内容に共感された方は上巻のプロローグだけでも読むと、きっと学びが濃いと思われる(とにかくややこしい箇所も多いので、僕は冒頭の数十ページと図を何度も何度も読んでいる)。
登壇時にモデレータにもツッコまれたが、昔の自分はほぼこの「オワコン」サイドの思考法をしていた。黒歴史満載だ。
自己変革こそが変化の時代のサバイブの要諦と信じている、という適度な言い訳を用意して、この記事もまた将来の黒歴史にすべく、ミラティブ社も変化を繰り返していく。
ミラティブは、大きな資金調達を発表して、何より最高のメンバーで構成されており、まだまだ20数名の組織で最高に面白いフェーズだ。ここで書かれたことはあくまで理想で、当然、まだまだ未成熟なところも多い(むしろ未成熟なところしかない)。なので、最高の仲間を希求している。
共感するところがあった方は、ぜひ採用ページや「採用候補者様への手紙(↓掲載)」を見ていただいて、ピンと来たら気軽に応募してきてほしいと思う。
この長いテキストも、もちろんまだ見ぬ仲間に届いてほしいという気持ちがありつつ、何より自分達の経験を通じて世の中が少しでも前に進んでほしいという「わかりあう願い」だ。
世の中を少しでも前に進めるために、お互いがんばりましょう。長いテキストを読んでくださってありがとうございました。(がんばって書いたので、響くところがあったら、ぜひ拡散してほしいです!)
*いっしょに組織やっていく人事(責任者CHRO含む)・採用担当なども募集中です!
*2019/03/09追記:「具体ケース編」のnoteを追加で公開しました
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?