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侍ジャパン、感動をありがとう

侍ジャパン、優勝、そして世界一奪還おめでとう。本当に本当におめでとう。全員が仕事を果たし、全員で掴み取った優勝だと思います。
侍ジャパンが見せてくれた2週間は、私にとって最も興奮した瞬間だったといっても過言ではないでしょう。

侍ジャパンに対する想いはTwitterだけじゃ綴りきれないので、試合の振り返りを兼ねつつ、感謝をnoteに書き起こすことにしました。順番は背番号順、特例で大谷選手とダルビッシュ選手は最後に回し、監督・コーチは栗山監督のみとさせてください。また、大変失礼だとは思いますが、普段の呼び方で書くこと、敬称も略すことをお許しください。

#1 山田哲人

 ミスター国際大会こと山田哲人。今大会日本ラウンドでは牧の控えとしてベンチに座っていることが多かったです。個人的にはスタメンで使ってほしかったのですが、日本シリーズでの不調や、シーズンでの牧が持つ攻撃力を考えれば、仕方のないことだったのかもしれません。
 しかし、牧の調子があまり良くなかったこと、代打でタイムリーを打っていたことから準決勝からスタメンに名を連ねるようになりました。期待していた一発は出なかったものの、安定感のある守備と打撃を見せてくれました。特に、アメリカ戦での2盗塁は追われているという、優勢なのに劣勢のような雰囲気の中で希望のようなものでした。
 国際大会や短期決戦では、守備のミスは負けに繋がります。実際アメリカに逆転負けを喫したベネズエラは3失策をしています。正直に言いますが、牧の守備では不安でした。メキシコ戦でとった併殺、アメリカ戦でとった併殺、この2つの併殺は山田哲人がセカンドにいたからだと思っています。
 てっと、侍ジャパンに安定感のある守備と経験をありがとう。終盤の何かやってくれるだろうという雰囲気は侍ジャパンの打線の中で随一でした。これからも侍ジャパンの背番号1を背負ってください。

#2 源田壮亮

 源田について最初に触れなければいけないことは、骨折のことでしょう。韓国戦で帰塁の際、指をついてしまい、まさかの骨折。源田は、だれよりも守備を期待されていた選手で、本人もそれを自覚していたでしょう。そのような選手が骨折をしてしまうのは、想像以上に辛いことだったと思います。しかし、源田はイタリア戦からスタメン復帰し、イタリア戦ではタイムリーを放ちました。さらに、骨折してからの守備も安定感のあるもので、メキシコ戦での『源田の1ミリ』はWBCハイライト間違いないでしょう。
 私は西武ファンなので、源田の攻撃力は、発揮されると思っていました。中でも、源田の攻撃力を特に感じたのは韓国戦の金廣鉉キム・グァンヒョンを打ち崩した日本の攻撃でした。ダルビッシュが3点を失い、流れもムードも韓国に行きかけていたとき、先頭の打者であった源田は8球粘り死球を獲得しました。それに加え盗塁まで見事に決めました(奇しくも、骨折してしまったのもこの場面ではあるのだが)。その後、中村悠平の四球、ヌートバー、近藤、吉田正尚のタイムリーで一気に逆転まで持っていきました。決め切った3人が偉いのはもちろんそうなのですが、この攻撃の口火を切ったのは源田だと思っています。アメリカ戦でもそうです。ヌートバーの勝ち越し打点の前には岡本と源田のヒット、中村悠平の四球がありました。
 侍ジャパンは当初、ソフトバンク・中日戦で貧打を見せ、打撃を不安視されていました。特に、源田や中野、甲斐など長打がない野手が打つ下位打線だったため、最高の投手力と対比のように地味な下位打線と評価されていたのを覚えています。しかし、大会を通し、源田は、強力な上位打線を支える嫌な8番打者として攻撃力でも支えてくれたと思います。守備に関しては安定感のある守備に加え、アメリカ戦で見せた背面キャッチなどなど骨折しながらも期待通りの活躍を見せてくれました。本人としては、指の痛みもあり100%のプレーはできずに、届かなかった打球もあったと思います。しかし、源田の安定感のある守備はチームに不穏な空気を流すことを許しませんでした。流れを持続させる素晴らしい守備をしてくれてありがとうございました。
 源田には感謝してもし足りません。大会後に栗山監督が明かした源田のWBC・世界一にかける想いは本当に胸を熱くしてくれました。攻守で侍ジャパンの心臓を担ってくれてありがとう。願わくは、開幕戦に出場し、大喝采を浴びてくれますように。

#3 牧秀悟

 本来スタメン二塁手として期待された牧は、調子が上がらなかったこともあり、準決勝からはスタメンを外れることになりました。しかし、中国戦とチェコ戦で見せたホームランは間違いなくチームに勢いをもたらしてくれたでしょう。また、外からではわからないように部分で、牧の明るさは貢献していたのだと思います。
 持ち前の打撃という面では、決勝ラウンドでは貢献できなかったかもしれないけれど、チームに勢いをもたらしてくれてありがとうという思いでいっぱいです。これから先、侍ジャパンとして戦う機会がたくさんあると思います。その時はよろしくお願いします。

#5 牧原大成

 マッキーは鈴木誠也の代替選手として侍ジャパンに合流をしました。内外野をハイレベルに守れるユーティリティプレーヤーで、完全なバックアップ選手としての招集でした。マッキーがこれに応える義務もなく、シーズンが控える中で調整が難しくなるようなことはしたくないと思われても仕方のないことだったと思います。しかし、マッキーはこの招集に応え、最終的には優勝時のセンターを守っていました。
 マッキー、代表に来てくれてありがとうございました。内野も外野もハイレベルに守れるマッキーがいたからこそ、終盤の代打に躊躇がなかった場面もあったと思います。今回は持ち味の積極石に仕掛ける攻撃を活かせる場面は少なかったけど、今後代表に選ばれることがあったら、その打撃力での貢献を楽しみにしています。

#7 中野拓夢

 正直、中野には西武ファンとして、日本を応援していた身として頭が上がりません。韓国戦で骨折をした源田に代わり、韓国戦の途中からと、チェコ戦、オーストラリア戦でスタメン出場しました。流石に守備では源田に劣るものの、攻撃では源田の穴を埋める活躍をしてくれました。攻守で穴になってしまえば、中野だけでなく骨折をしても、代表に残る決断をした源田にも批判が向いていたかもしれません。
 四球をもらいに行かず、打ちに行けるタイプの打者がベンチにいることで最終盤では、最低限が絶対に成功できる安心感がありました。源田のバックアップとしての戦力ではなく、絶対に必要戦力だったと思います。西武ファンとしてのたくさんのありがとうと、日本を応援していた身としてのたくさんのありがとうを伝えたいと思います。本当にありがとうございました。

#8 近藤健介

 近藤はシーズンでは出塁寄りのアベレージヒッターだったこともあり、短期決戦の大事な場面では微妙な結果になってしまうと思っていました。しかし、始まってみると予想を超える結果を残してくれました。積極的に振っていき日本のヒットメーカーであることを証明しました。また、持ち味の出塁率も存分に生かしてくれました。大谷・吉田正尚という二大巨頭の前を打っているため、打線を線にしてくれたのは近藤のおかげといっても過言ではありません。要所で手の出ない近藤も見受けられましたが、積極的に仕掛けてほしいという栗山監督の意図にバッチリと応えた近藤には感謝しかありません。また、この積極的な近藤がシーズンで襲い掛かってくると考えると恐怖でいっぱいです。
 今大会を終えて、打率.346、出塁率.500と文句ない成績を残してくれた近藤には感謝しかありません。また、誠也がケガをし、スタメンになったという偶然に120%で応えてくれた近藤には日本中が勇気づけられたと思っています。こんなことは絶対にないですが、メキシコ戦での最終打席、見逃し三振になったのも9回裏の先頭に大谷がツーベースを打ち、勢いに繋げるためだったのではないかと考えてしまいます。日ハムをFAし、超高額な契約を結んだばかりだったということもあり、出場しなくても文句を言う人は少なかったと思います。その中で、結果を残し、世界一にたどり着くためのキーマンの一人として躍動してくれて本当にありがとうございました。シーズンではお手柔らかにお願いします。笑

#9 周東右京

足のスペシャリスト、侍の韋駄天として招集された周東の最大の見せ場はメキシコ戦でサヨナラのランナーとしてホームに返ってきたことでしょう。WBCを通して、代走でもぎ取らなければならないという場面が少なかったため、出番が少なかったと思います。それでも、あのベースランニングだけでも仕事を大いに果たしてくれたと思っています。あの場面、周東でなければ三塁でとまっていたかもしれないし、ホームでアウトになっていたかもしれない。そうしたら、流れも変わって敗退していたかもしれません。周東の足は侍ジャパンの韋駄天に相応しいものだと思います。本当にありがとうございました。

#10 甲斐拓也

 正直選出されたことに懐疑的だった選手その②が甲斐です。実際、甲斐は想像通りの働きというか、なんというか…という感じでした。準々決勝では大谷に首を振られまくり、伊藤大海のときの逆フレーミングなどなど批判を受けまくっていました。それに加え、準決勝からはスタメンも外れてしまいました。しかし、メキシコ戦で起こった『源田の1ミリ』だけは本当に感謝しています。源田のタッチが際どかったがゆえに源田ばかり注目されていますが、アレは甲斐キャノンがあってこそのアウトです。完璧なスローイングをしたのは甲斐です。あのアウトがなければ流れは日本に来ることはなく、正尚の同点スリーランは生まれていなかったかもしれません。
 甲斐が持つ唯一無二の武器である甲斐キャノン。日本に流れを引き寄せてくれてありがとうございました。

#12 戸郷翔征

 戸郷は二試合に登板し、そのどちらもかなり印象的な登板でした。一試合目は大谷の後を受けた中国戦での登板でした。捕手との相性もあってか相当グダってしまい、3回を投げるのに52球を擁してしまったため、球数制限に引っかかってしまいました。戸郷は中4日開けないといけなくなりました。そして、二試合目は決勝でアメリカ戦でした。開幕戦で登板した後、決勝まで登板がないという相当な負担がかかる間隔になってしまったと思います。しかし、戸郷は不安を感じさせることなく2回を投げ無失点。あのトラウトや、絶好調でこの試合もホームランを打っていたトレイ・ターナーを見事に三振に切って取り、日本の流れを確固たるものにしました。あのシーンは、巨人の若きエースとしてのプライドを感じました。
 戸郷がいなければ決勝をリードしたまま終えることはできなかったと思います。まだまだ若く、伸びしろもたくさんある投手でしょう。これから先の国際大会にもどんどん呼ばれると思います。日の丸を背負って戦う姿が今から楽しみです。本当にありがとうございました。

#13 松井裕樹

 松井はWBC球に馴染まず、調整段階から乱調な場面が多くありました。しかし、本番では大差とはいえ韓国相手に1回無失点と、チームに貢献してくれたと思っています。本当にありがとうございました。

#14 佐々木朗希

 偶然とは思えない出来事があったのは、朗希もです。東日本大震災の被災者である朗希が3.11にA代表の国際大会デビューを果たし、見事な投球を見せました。ファンは楽勝ムードだった中、初回から味方のエラーもあり失点してしまうというまさかの展開でしたが、その後は要所を締め、3回2/3を1失点で勝ち投手になりました。思った以上にいい打者の多かったチェコ打線相手だったということと、捕手の影響かストレートが多かったということもあってこの結果になったのかもしれませんが、”佐々木朗希ここにあり”というのを世界に見せつけるのには十分だったと思います。チェコ戦の後、先発したのは準決勝のメキシコ戦でした。負けたら終わりで、アメリカのアウェーの雰囲気の中で投げるというのは相当なプレッシャーがあったと思います。また、MLBの主力軍団がズラリと並ぶメキシコ戦は、画面越しに見ているだけでも怖かったのを覚えています。朗希は、結果だけ見れば4回3失点と微妙な投球だったのかもしれません。しかし、ファンは誰も朗希を責めないと思います。勝ったからというのも事実かもしれませんが、それ以上に朗希の投球に闘志を感じたからです。普段21歳という若さを感じさせないほどの落ち着きを見せる朗希が要所で見せる感情のこもった表情は、たくさんのファンの心を動かしたことでしょう。また、3点リードされている場面で正尚が放った劇的なスリーランの時の朗希の仕草を見ても、福留が正尚のホームランのあと裏で泣いていたと暴露したのを見ても、朗希がどれだけの思いを背負って先発のマウンドに立っていたのかがわかります。
 どれだけすごい投球をしても、完全試合を達成しても、朗希はまだ21歳です。精神的にも、肉体的にもまだまだ成長途中なのです。朗希はいずれ世界に羽ばたく男です。これはプロ野球ファンなら誰もがそう思っていることでしょう。そして、これから先、何度となく侍ジャパンを救ってくれると思います。一野球ファンとしてわくわくが止まりません。本当にありがとうございました。

#15 大勢

 ジャイアンツの若きクローザーは侍ジャパンでも躍動してくれました。栗林という絶対的クローザーが離脱したことによって、国際大会の経験がないのに、いきなり一番後ろを任されることになりました。そのプレッシャーは想像を絶するものだったでしょう。しかし、大勢はプレッシャーを感じさせない投球を披露し、全4登板で1失点も喫することなく侍ジャパンの優勝に貢献しました。乱調に見える登板も、終わってみれば0で帰ってくるその姿には安心感を覚えました。大勢がいたからこそ栗林の穴を必要以上に感じることはなく、戦い抜けたのだと思っています。
 これから先、大勢は栗林とともに侍ジャパンの8回9回を担っていくことになるでしょう。サイド気味のリリースポイントから160km/h近いストレートと、誰も打てるわけないフォークを繰り出し、海外の打者をきりきり舞いにするのが今から楽しみです。本当にありがとうございました。

#17 伊藤大海

 今大会中継ぎ陣で一番安定感があったのは伊藤大海でしょう。唯一、一人のランナーも出さない投球を見せた伊藤大海には、東京オリンピックのときから続く強心臓っぷりを見せつけられました。準々決勝のイタリア戦では、大谷の後を受け登板し、色々と不利な判定を受けながらもきっちり抑えてくれました。また、決勝のアメリカ戦では、圧巻の投球で三者凡退。伊藤大海が流れをぶった切ってくれたこそ、アメリカサイドに焦りが生まれ、打ち損じも増えたのだと思います。
 世界一を奪還できたのは伊藤大海の力あってこそです。完璧だったからこそ、目立たないという最高の仕事をしてくれて本当にありがとうございました。伊藤大海の闘志あふれる投球は最高でした。個人的には、今後も代表では中継ぎで呼ばれるような気がします。大変だとは思いますが、よろしくお願いします。

#18 山本由伸

 山本由伸は24歳にして日本No.1投手の看板を背負ってWBCに出場しました。そして、その看板に泥を塗ることのない投球を見せてくれました。山本由伸はオフシーズンにフォームを改良し、新フォームでWBCに臨むことになったのですが、強化試合ではらしくない投球を見せ、ストレートも走っていないように感じました。山本由伸はローテーションの一枚として絶対に外せない投手だと思っていたため、調子が上がらないならフォーム戻してくれないかなと心の中で思っていました。しかし、本番が始まってみると圧巻の投球を見せ、オーストラリア戦では4回8奪三振無失点、メキシコ戦では3回1/3を2失点と日本に勝利を呼び込んでくれました。特にメキシコ戦は失点こそしてしまったものの、山本由伸の投球がなければ正尚の劇的スリーランは生まれていなかったでしょう。私は、嫌なムードでズルズル失点を重ねない、むしろ守りでは7回表までずっと日本が優勢だったと思っています。守りで日本が優勢だったからこそ、チャンスを作り続け、相手にプレッシャーをかけることができました。その結果、あのサヨナラに繋がったのだと確信しています。
 山本由伸は次回大会の時にはMLBの選手になっているでしょう。そして、その分成長をしているでしょう。これだけ完成度の高い山本由伸ですが、まだ24歳です。伸びしろはあるに決まっていますし、それを活かせるだけの才能もあります。3年後のWBCもエースとしてチームに君臨してくれることを楽しみにしています。本当にありがとうございました。

#20 栗林良吏

侍ジャパンの絶対的な守護神として期待されていた栗林でしたが、腰の張りで、1試合も投げることなく離脱をしてしまいました。残念ではあったのですが、栗林の離脱からより一層投手陣が引き締まったような気がします。次回大会では離脱することなく、マウンドに立っていてほしいと願っています。

#21 今永昇太

 今永は第二先発として代表に召集されていました。世界で見てもNo.1のストレートでガンガン空振りを奪っていく姿は、WBCの開幕前から想像できていました。また、投球間隔的にダルビッシュの次の投手として投げるのも予想していました。その中で予想していなかったことが二つあります。ます、一つ目は韓国戦の逆転直後の展開で登板することでした。正直に言って韓国戦は金廣鉉キム・グァンヒョンが登板する他に不安材料はないと思っており、金廣鉉キム・グァンヒョンからは取れずとも、日本の投手からも取れないだろうし、変わればとれるだろうと思っていました。そのため、まさか逆転後のイケイケムードの中で登板するとは思っていませんでした。その中でも今永は3回を投げソロホームランの1本のみに抑え、見事日本の価値を盤石なものにしました。このソロホームランも、正尚の犠牲フライ、近藤のソロホームランで点差を離した後であったので、一度も韓国に流れを渡すことはありませんでした。色々な意味で絶対に落とせなかった韓国戦、守りの面で流れをつかめたのは間違いなく今永のおかげでしょう。二つ目の予想外の出来事は決勝でアメリカ相手に先発したことです。準決勝・朗希、決勝・山本由伸になるか、準決勝で朗希・山本由伸を使い、決勝でダルビッシュが投げる二パターンのどちらかになると思っていました。しかし、メキシコ戦で、劇的な勝利を収めた後の栗山監督のインタビューで「決勝の先発は今永」という発表がありました。決勝という大舞台でいきなり先発をやるというのは相当なプレッシャーがあったと思います。私自身も緊張で眠れなくなるほどドキドキしていたのを今でも覚えています。それでも今永は2回を投げ1失点。絶好調のトレイ・ターナーに打たれたソロホームランの1失点に抑えてくれました。特に2回はピンチを招きながらも凌いでくれました。2失点、3失点していたら一気に敗戦ムードになっていたので、今永には感謝しかありません。
 DeNAのエースとして、韓国戦、イタリア戦、アメリカ戦と大事すぎる試合に登板し、完璧に仕事をこなしてくれました。韓国戦とアメリカ戦では、失点こそしましたが、最少失点に抑え、日本の流れを損なうことなく、相手に流れを渡すことない投球を見せてくれたことで、日本は世界一の野球をすることができたと思っています。本当にありがとうございました。

#22 湯浅京己

 正直ごめんなさい。招集されるまで名前しか知りませんでした。しかし、強化試合を見ていると、日本人特有の強いストレートと強度のあるスプリット・フォークを装備していたので、活躍の予感はしていました。湯浅は期待以上の仕事をしてくれたと思っています。私が一番印象に残っているシーンはメキシコ戦で山本由伸の火消しで出てきたことしょう。メキシコの圧倒的イケイケ雰囲気の中、最少失点で食い止め、その後の大逆転劇に繋げるピッチングをしました。本人にとっては悔しい登板になったかもしれませんが、2点差で食い止めてくれたことに感謝しかありません。
 湯浅はこれからも侍のセットアッパーとして選出されるのだと思います。そして、本職先発の人が多い中、貴重な本職中継ぎの選手です。普段から中継ぎをやっている人にしかできない貢献もたくさんあったでしょう。本当にありがとうございました。

#23 ラーズ・ヌートバー

 ヌートバーは侍ジャパン初の日系の選手でした。チームに合流した当初は馴染むのに手間取っているように見え、ベンチの端っこのほうで静かにしていました。しかし、大谷やほかの選手たちの明るさもあってか、WBCが開幕するころには馴染むどころか、兄弟のような仲になっていました。そして、キュートな笑顔と、チームを鼓舞する姿はファンも魅了しました。”ニッポンダイスキ ミンナアリガトー”でチームだけでなく日本全体を熱狂の渦に巻き込んだと思います。また、ヌートバーは、チームに勢いをもたらしてくれました。ヌートバーが持ち込んだペッパーミルパフォーマンスは侍ジャパンの結束力を高めてくれたと思います。また、プレーでの貢献も大きかったです。一次ラウンドではリードオフマンとして、センターフィールダーとして攻守で引っ張ってくれました。WBC開幕戦だった中国戦でのファインプレー、韓国戦で同点のピンチで見せたファインプレーは忘れることはないでしょう。日本人にないパッションを持ち込んでくれたヌートバーには感謝しかありません。アメリカラウンドからは打撃としてはいまいちではありましたが、アメリカ戦で見せた1点をもぎ取る打撃はチームに”いけるぞ”という雰囲気をもたらしました。あの場面、村上のソロホームランで追いつくのみだったと思うと、試合の流れを考えれば同点で進んでいても日本が劣勢のような展開になっていたと思います。
 ヌートバーは三年後のWBCも日本代表で出場をしてくれることを公言しています。次回大会でも日本に勢いをもたらしてくれることを今から期待しています。また、この三年間で成長を遂げ、今回は打てなかったアメリカラウンドでの爆発を期待しています。本当にありがとうございました。

#24 大城卓三

 大城は第三捕手として、チームを支えてくれました。第三捕手というのは、どんな状況でもあまり出番がありません。なぜなら捕手が控えから消えたら、もしもの場合があったとき、試合は崩壊するからです。実際、捕手を2人しか招集していなかったドミニカ共和国は、捕手に代打を出せずにチャンスをものにできないということがありました。それが原因とは言い切れないですが、ドミニカ共和国は準々決勝には進出できていません。
 日本でも大城の存在は、大きかったと思います。特にメキシコ戦では中村悠平へ早々と代打を送っていたため、だいぶ序盤から甲斐に代わっていました。甲斐の打撃はNPBの中を見ても底辺で、チャンスで回ってきても一切信用できなかったのは事実です。しかし、大城がいたからこそ甲斐に代打で山川を出し、あの感動的な最後を迎えることができたのです。正直大勢とのバッテリーの時にポロポロしていた時はひやひやしました。それでも0で返ってきてくれたからこそだと思っています。
 第三捕手という難しい役回りだったと思いますが、大城がいなかったら絶対に掴めなかった頂点だと思います。本当にありがとうございました。

#25 岡本和真

 正直、岡本が選出されたときは疑問に思っていました。しかし、岡本は、いなかったらと思うとゾッとするくらいの存在感を見せてくれました。強化試合のさっぱり感から徐々に状態を上げ、イタリア戦の3ランホームラン、メキシコ戦の(ホームラン未遂と)死球、アメリカ戦の決勝ホームランと世界一を奪還するのには間違いなく必要だった打席を送ってくれました。特にアメリカ戦でのホームランはのどが痛くなるほど叫びました。結果的には1点差ゲームになり、決勝ホームランになりましたが、岡本が2点差にしてくれたおかげで、どんな場面でもソロホームランならOKというメンタルで投手も投げられたと思います。
 前回大会、前々大会と長打が足りず敗退をした日本にとって、岡本のようなアーチストは希望だと思います。巨人の四番打者として、これからも日本を支えてくれるでしょう。読売巨人軍の四番打者というのはプレッシャーも相当だと思います。しかし、そのプレッシャーの下で常にプレーしているからこそ、大舞台での勝負強さもあるのかもしれません。どんどん成長し、次回以降の国際大会でもクラッチホームランを期待しています。本当にありがとうございました。

#26 宇田川優希

 宇田川は昨シーズンにデビューしたばかりで、実力は代表クラスであっても未知数なところのほうが多かったような気がします。また、キャンプが始まって当初の段階で、チームに馴染めていないという報道もあったため、とても心配でした。しかし、ダルビッシュの働き掛けもあってか、WBC開幕前には”チーム宇田川”を投手陣が名乗るほど馴染んでいました。大会中も登板する機会はそれほど多くなかったですが、火消しとしてブルペンで投げる機会は誰よりも多かったと思います。火消しに宇田川がいるという安心感は今大会No.1だったであろう日本投手陣を支えていたと思います。
 宇田川は、これから先WBCに限らず侍ジャパンの力になってもらう場面が多くあると思います。個人的には、次回大会まではすべて招集し、経験を積んでほしいと思っています。侍ジャパンの火消し役としてブルペンを支えてくれてありがとうございました。

#27 中村悠平

 中村悠平は、一次ラウンドでは二試合に先発出場しました。ダルビッシュと山本由伸が先発の試合でマスクを被っていたのですが、これが大谷と朗希の時になっていたと思うと、恐ろしく感じる場面があります。それは韓国戦です。3点を追う展開で源田の四球のあと、中村悠平が四球を選び上位打線に繋ぎました。あの場面で、金廣鉉キム・グァンヒョンから四球をもぎ取るのは、今回選出された捕手の中では、中村悠平でないと難しかったと思います。このように一次ラウンドでも攻守で存在感を見せた中村悠平は、メキシコ戦とアメリカ戦のどちらもスタメンマスクを被ることになります。メキシコ戦では、朗希を見事にリードしてくれました。結果的には3失点をしてしまいましたが、不運なヒット二本の後の失投を打たれてしまっただけなので、中村悠平は完璧な仕事をしてくれたと言っても過言ではないでしょう。メキシコ戦では一打席しか立っていませんでしたが、準決勝でも存在感を見せてくれました。中村悠平のすごさを実感したのは、アメリカ戦で七人の投手を見事にリードしたところです。WBCという舞台で、しかも決勝という舞台で、これほどまでに難しく、大変なことをやってのける素晴らしさには感動すら覚えました。それに加え、打撃でも二つの四球を選び、貴重な勝ち越し点に繋ぎました。守備だけでなく、打撃でも見せた中村悠平の偉大さは日本にとって間違いなく重要な戦力だったでしょう。また、これまでの道のりを考えたとき、最後の試合でマスクを被り続け、ウィニングボールを掴んだのが中村悠平というのもドラマだと思います。
 今回のWBCを経て、名実ともに日本一の捕手になった中村悠平も、次回大会は35歳と出場は厳しいかもしれません。しかし、中村悠平の持つ技術は次の世代に引き継がれていくでしょう。幸い、ヤクルトには内山という将来有望な捕手がいます。もちろん、内山だけでなく、松川をはじめ、日本には有望な捕手がたくさんいます。こういった捕手たちが今回の中村悠平を見て、何を感じ、日本一の捕手がこれから先、間接的でも、直接的でも、未来に残してくれるものを今から楽しみにしています。本当にありがとうございました。

#28 髙橋宏斗

 今大会最年少として侍ジャパンに選出された宏斗には、想像できないくらいのプレッシャーがあったと思います。実際、決勝での登板はマウンドに上がるまでは足が震えていたと語っています。大差で勝負が決まっていた韓国戦、オーストラリア戦とは違い、2点差でアメリカ打線を相手にした上で、あの場面トラウトとゴールドシュミットを三振に切って帰ってくることができるというのはものすごいことだと思います。もともと私としては期待値の高い投手ではあったのですが、想像以上にすごい投手だと今回のWBC実感させられました。特に、カウント2-0からトラウトを空振りにとったスプリットは本当に感動しました。しかも、あのスプリットは首を振って投げたスプリットだったので余計に感動しました。結果的に、ピンチを招いてしまい、シュワーバーのミスショットに助けられた部分はありましたが、世界で戦える実力と武器を見せてくれました。
 宏斗はまだ若く、というよりもプロとしての経験も少ない若手も若手です。優勝したのにアメリカの法律でシャンパンファイトに参加できないくらいの若手です。これからどんどん成長していくのは火を見るよりも明らかです。個人的には、三年後は先発ローテーションを担ってほしいと思っています。その実力は絶対にあると思います。宏斗は、この先様々なタイトルを獲得していくでしょう。若き侍の成長が楽しみでなりません。そして、三年後はシャンパンファイトに参加してほしいと思っています。本当にありがとうございました。

#29 宮城大弥

 宮城は他の投手と違い、ガンガン三振を取るタイプではないため、代表の中継ぎとしてはどうなんだろうかと選出された当初は思っていました。それと同時に、使い方は第二先発なんだろうと思っていました。実際、宮城はチェコ戦で朗希の後を受け第二先発として登板しました。日本ラウンドだったので、球数制限が結構厳しい中、宮城は5回を投げ朗希と宮城の二人で試合を完結させてしまいました。WBCでは、投手運用は一つの課題のようなものだと思います。特に大差の試合は、勝ちパターンをつぎ込む勝ち試合よりも悩むと思います。そんな悩みを解決してくれた宮城には感謝しかありません。
 宮城はまだまだ若いため、次回大会以降も招集されると思います。その時が楽しみになる大会でした。本当にありがとうございました。

#33 山川穂高

 山川は強化試合がさっぱりで、当初の予想とは違いベンチスタートがほとんどでした。昨シーズンのパ・リーグ二冠としては悔しい立場になってしまったと思います。その中でも、腐ることなく声出しを続けていました。山川最大の見せ場は、メキシコ戦1アウト2,3塁で回ってきた場面でしょう。シーズン中なら三振上等でスイングをしていたところを、繋ぐ意識で見事に犠牲フライを打ち、村上のサヨナラに繋がる1点を獲得しました。あの場面、正直言ってホームランボールで、シーズンのスイングをしていれば、スタンドインしていたでしょう。しかし、シーズンのスイングをしていれば三振や内野フライだった可能性もあるでしょう。山川本人はホームランを狙った結果だと言っていましたが、アレは確実にとった1点だったと思います。
 WBC開催前の0か100という短期決戦において微妙な打撃スタイルという評価を、負けたら終わりという場面でひっくり返すような打撃を見せてくれてありがとう。チームに明るさをもたらしてくれてありがとうございました。

#34 吉田正尚

 吉田正尚には「居てくれてありがとう。」これに尽きるでしょう。正尚がいなかったら世界一になれなかったどころか、決勝にも行けてなかったと思います。上位打線がどれだけ出塁をしても、正尚がいなければ点にはなっていないし、大谷がどれだけすごくても、正尚がいなければ勝負を避けられていました。今大会、正尚が喫した三振はたったの一つ。どんな場面でも得点圏で回せば何かをしてくれる男が吉田正尚でした。正尚は今シーズンからボストン・レッドソックスに移籍し、活躍の場をMLBに変えていました。移籍初年度だし、出られなくても仕方がないと誰もが思っていた中、正尚は志願し、侍ジャパンの招集に応じてくれました。それだけでも感謝は足りないくらいなのに、チームを勝ちに導き、後輩を導き、最後はお茶目にこける。全ての野球ファンを虜にした男でしょう。
 正尚の一番印象に残っているシーンといえば、メキシコ戦で見せた劇的同点スリーランでしょう。ことごとくチャンスをものにできず、重苦しい雰囲気の中、ツーアウトから繋いだチャンスだったことに加え、後ろの打者は当たってない村上。ここで追いつくにはホームランしかないという場面で見せた最高の結果には日本中が涙したと思います。三球目のチェンジアップを空振りしたときは良くてタイムリーだなと思っていたので、ホームランだと分かった時は、喉が壊れるくらい叫びました。興奮しすぎて打球が見えなかったということもあり、ファールなのかホームランなのかわからなかったため、正尚が一塁ベースを回ったのを見たとき、「野球の神は吉田正尚なのかもしれない…」と本気で思ったのを覚えています。正尚は唯一不安だった守備面でも活躍を見せてくれました。自身が同点ホームランを放った直後、メキシコに勝ち越し点を取られてしまったのですが、三点目を防いだのは正尚でした。あの返球がなければ日本は敗退していたと思います。もし普通にメキシコに勝っていたら、あの試合のベストは正尚一択だったでしょう。個人的に正尚のメキシコ戦での熱いシーンはもう一つあります。それは9回裏に四球を選び村上を指さすシーンです。村上には届いていなかったようですが、あのシーンを見たとき、勝ったわけではないのに勝ちそうな予感がしました。侍ジャパンの絆を見た気がしました。アメリカ戦こそ四球1つのみという結果になりましたが、正尚が侍ジャパンに与えてくれたものは計り知れません。
 私個人的には大谷以外なら120%正尚がMVPだと思っています。ベストナインは獲得していましたが、それだけでは足りないくらいの活躍を見せてくれました。そして、世界中の野球ファンにMLBでの活躍を確信したと思います。正尚がMLBでさらなる飛躍を遂げ、三年後にまた力になってくれるのを期待しています。本当にありがとうございました。

#47 高橋奎二

 高橋奎二も宮城と同じく、第二先発として山本由伸の後を受け投げた一試合しか出ていません。ただ、宮城の時と違っていたのは、日本ラウンド最終戦で、既に準々決勝進出が決まっていたことでした。オーストラリア戦は早々に日本が5点リードをしたことに加え、クローザー候補であった大勢、栗林がまだ登板していませんでした。山本由伸が4回を投げたため、7回コールドも視野に入れると、7回には大勢を登板させなくてはいけませんでした。つまり、高橋奎二に与えられたイニングはたったの2イニングでした。私が高橋奎二について印象的だったのは、決勝終了後、カメラの前で「投げられなくて悔しい。次回は先発で出たい」という旨の発言をしていたことでした。優勝した嬉しさと同じくらい悔しいを思えることがとてもかっこいいと思いました。ですから、高橋奎二にはあえてありがとうとは言いません。次回大会先発として招集され、躍動する日を楽しみにしています。

#51 鈴木誠也

 誠也には、村上を元気づけてくれてありがとうと一番に言いたいです。私たちファンは、選手の裏を見ることができないので、不調だった村上にどんな風に声をかけていたのか分かりません。その中、誠也は不調の村上をいじる様な動画を投稿していました。気を使われないというのは村上にとって大きかったと思っています。それだけが要因ではないですが、その動画を機に村上は重要な場面で、大きな一打を二本も放っています。次回大会は、怪我をせずに日本の戦力になってくれることを期待しています。

#55 村上宗隆

 WBC期間中、村上に対して感謝をした回数と、批判をした回数で言えば後者のほうが多い人はたくさんいるでしょう。私もその一人です。シーズン終盤からずっと調子が上がらず、強化試合でもさっぱりでした。一次ラウンドでもさっぱりで、手を出すべきボールを見逃し、簡単に追い込まれたと思えばボールゾーンの球を空振り三振。比較的楽勝な試合が多かった一次ラウンドですら、我慢ならないくらい希望がありませんでした。日本の三冠王として期待値が高かった分、がっかり感が大きかったのも事実です。私も、どうせ使うなら、四番ではなく六番や七番で使えばいいのにと思っていました。イタリア戦で復活の兆しを見せたと思えば、メキシコ戦ではさっぱり。最後の最後まで劣勢だったこともあり、村上が打ってくれれば勝てたのにという思いは少しありました。しかし、日本球界主役の一人をこのままにさせないのがWBCという大会なのか、メキシコ戦、最終9回裏、ノーアウト1,2塁という場面で打席に立った村上は三球目のストレートを弾き返し、センターの頭を超え、サヨナラタイムリーを打ちました。どんなに不調でも最後の最後に打てばなんでも良いとはよく言ったもので、メキシコ戦のヒーローは村上が搔っ攫っていきました。あの場面、村上は、代打・バントも頭をよぎったと語っています。しかし、栗山監督の信頼に応え見事結果を残し、日本が二大会連続で阻まれていたベスト4の壁を打ち破ってくれました。一塁ランナーの周東がホームに生還したときの侍ジャパンの表情が今でも忘れられません。村上のいいとこどりはこれで終わらないのがWBCです。アメリカ戦で今永が1点を失ってすぐの2回裏、メリル・ケリーの初球ストレートを捉えた打球はグングン伸び、打った瞬間確定の同点ホームランになりました。あのホームランは日本中を勇気づける一発だったと思いますし、村上にとっても大きな一発になったと思います。最終的な成績は、打率.231 出塁率.364 長打率.462と三冠王にしては物足りない成績になってはしまいましたが、短期決戦は終わり良ければ総て良し。村上なしで獲れる頂点ではなかったと断言できるでしょう。
 冷静になって考えてみれば、村上はまだ23歳で、まだまだこれからの選手です。オリンピックの決勝でホームランを放ち、三冠王を獲ってもまだ23歳です。経験不足や、メンタル面で脆さが出るのは当たり前でしょう。だからこそ失敗で終わらなくてよかったと思います。この先、たくさんの経験を積み、一回り、二回り大きくなった姿を三年後のWBCで見れるのを楽しみにしています。本当にありがとうございました。

#63 山崎颯一郎

 栗林の怪我で、追加招集された颯一郎は一度も投げる機会がなく、一部ではアメリカ旅行に来たとも言われています。本人もまぁ複雑な部分もあるでしょう。しかし、シーズン直前のこのタイミングで追加招集に応じてくれたのには感謝しかありません。もともと選ばれてもおかしくない実力はあったので、次の国際大会からは颯一郎が躍動するのを期待しています。

#11 ダルビッシュ有

 ダルビッシュは他のMLB組とは違い、宮崎キャンプの初日から合流し、侍ジャパンに色々な意味で貢献してくれました。第二回大会の優勝を経験している唯一の選手で、最年長ということもあり、比較的若い選手が多い今大会の侍ジャパンにとってダルビッシュの存在というのは本当に大きかったと思います。私個人の話にはなるのですが、私が野球を好きになってから一番最初に好きになったのはダルビッシュでした。そんなダルビッシュが今好きな選手たちと同じJAPANのユニフォームをまとっていることにまず感動したのを覚えています。ダルビッシュの効果は本当に計り知れないものだったと思います。まずメンタル面では宇田川会を開き、馴染むことのできていなかった宇田川の心を解し、技術面ではたくさんの投手たちにアドバイスを送ってくれました。(本音を言うならその場に西武の選手もいてほしかったと思いました。)自分の調整が難しくなるのにもかかわらず、後輩たちの成長や、世界一奪還に貢献してくれるその姿は、”ダルビッシュ有”という存在の偉大さを感じさせられました。
 正直に言いますが、ダルビッシュの登板は全部不安でした。韓国戦、イタリア戦、アメリカ戦と徐々に状態は上がっていたとは思いますが、それでも全盛期には絶好調には程遠く、ひやひやする場面が多くありました。特に、アメリカ戦は打ち取った打者が全員ミスショットをしたのではないかと思うくらいでした。しかし、イタリア戦で見せたガッツポーズ、アメリカ戦に直談判して登板するという世界一への思い、その全てに感動しました。
 もしかしたら、JAPANのユニフォームを着てプレーするのはこれが最後になるかもしれません。私が野球を好きになってから一番最初に好きになったダルビッシュ最後のJAPANと思うと、感慨深いものがあります。ダルビッシュはまだ現役を続けるのが確定しており、三年後も侍ジャパンとして選出されるかもしれません。それを楽しみにしている反面、そうなったら投手の層が薄くなっていそうだなという不安もあります。ダルビッシュは誰よりも考えながら野球をやっているのだと思います。ダルビッシュの思いを受け継いだ若き侍たちが三年後活躍するのを楽しみにしています。

#16 大谷翔平

 大谷はプレー、パッション、人柄をはじめとした全てにおいて日本を引っ張ってくれました。大谷の存在感は強化試合のときから際立っていました。いきなり2本のホームランを放ち、これまで貧打で得点不足に悩んでいた侍ジャパンに違う風を呼び込みました。大谷は強化試合で投げることはなかったですが、日本にいたころとは次元が違うところを見せてくれました。
 WBCが開幕してからも大谷は圧巻の投球に圧巻の打撃を見せてくれました。開幕戦の中国戦は、投手として4回5奪三振無失点、打者としては貴重なタイムリーツーベースを含む4打数2安打2四球と、チームの勝ちに大きく貢献しました。大谷が投げて、大谷が打つというチームどころか日本中が勢いに乗る勝ちだったと思います。その後も一次ラウンドは打者として大車輪の活躍をし、韓国戦では投手が変わって初球をタイムリーにし、オーストラリア戦では自分の看板に当てる特大ホームランを放ちました。しかし、一次ラウンドの大谷は、まだまだエンジンMAXではありませんでした。準々決勝のイタリア戦、先発の大谷は1球投げるごとに声を上げ、三振を取れば雄たけびを上げていました。打席では、好機と見るやセーフティバントを仕掛けチャンスを拡大しました。試合後、「あのシチュエーションは無理に引っ張った打球がゲッツーになるのが一番最悪のシナリオ。リスクを回避しながら、なおかつハイリターンを得られるチョイスをしたつもり。」と大谷は語っていました。この言葉には痺れました。大谷ほどの”スーパースター”で”主人公”であっても、勝利に誰よりも貪欲で”欲しがらない”でいられることの凄さを感じました。「心は熱く、頭は冷静に」を常に体現しているのが大谷翔平なのかもしれません。ただ、さすがの大谷も飛ばしまくっていたので、失点をした上で、ランナーを残し降板してしまいました。それでも4回2/3を2失点と結果だけ見れば素晴らしいものでした。大谷は準決勝のメキシコ戦でも大活躍をしました。印象的なのは正尚のスリーランの前の四球を選んだ場面と、9回裏ツーベースを放ったところです。7回裏2アウトながら大谷に打席が回ってきた際、メキシコは左のロメロを投入してきました。大谷を警戒してかストライクが入りませんでした。結果的に大谷は四球を選んだのですが、その時、大谷は吠えていました。自分が打てなくても次の打者が打ってくれると思っていたからこそ、ああいう感情が出てくるのだと考えると、本当に大谷は仲間を信じているのだと胸が熱くなりました。その結果、正尚は見事にスリーランを放ち同点になりました。もう一つの9回裏のシーンは誰もが感動したと思います。1点差とはいえ、メキシコの絶対的守護神であるガジェゴスが出てくることになるため、敗戦ムードはあったと思います。しかし、大谷は、その嫌なムードを切り裂くような打球を放ち、ヘルメットを脱ぎながら二塁に到達しました。大谷はベンチに向かて、チームを鼓舞しました。あの場面、ホームランでも、ヒットでもなく、ツーベースだったというのもサヨナラに繋がったのだと思います。アメリカ戦での大谷もすごすぎました。全ては大谷のためにあったのではないかと思わざるを得ない試合でした。打撃としてはチャンスであまり巡ってこなかったこともあり、目立つ場面はありませんでした。その中でも、7回裏に見せた内野安打は9回に登板するかもしれないという中での全力疾走だったので、ビックリしました。結果的に7回に打順が回ってきたことで、肩を作る時間ができたので9回のあの名シーンに繋がっているため、この内野安打も、次に打つ正尚が併殺を打つのも全てドラマの一幕だったような気がします。9回表大谷がマウンドに向かっているとき、かつてない高揚感を感じていました。しかも、三人目の打者はマイク・トラウト。漫画でも出来すぎな展開でマウンドに立った大谷は、先頭のマクニールに四球を出してしまいました。さすがの大谷でも最後の打者がトラウトは出来すぎだったなと全世界の野球ファンが思っている中、大谷はベッツを完璧な併殺にとりました。大谷は世界最高の打者たちを相手にしても盤面をコントロールできるのかと思ってしまいました。そして、運命の最終対決がやってきました。初球のストレートは外れてボール、大谷はこの段階でトラウトが変化球をケアしていると判断したそうです。2球目はストレートを空振り、3球目はストレートが外れてボール、4球目はストレートを空振りし、大谷が先に追い込みました。この2球の空振りを見ていると、最後の球もストレートなのだろうと思っていましたし、ほとんどの人がそう思っていたでしょう。5球目が外れフルカウントになってから大谷が投じた最後の球はスイーパーでした。2009年を思い出すような三振でWBCの優勝を飾った大谷は感情をあらわにし、ベンチに向かって吠えました。
 大谷は常に私たちの想像を超えてきました。日ハムに入団した時、もっと前なら高校生の時から、私たち野球ファンを楽しませてくれていました。そんな大谷がWBCという最高の舞台で、最後のマウンドに立っていること、これほどまでに野球ファンとして幸せな試合はありません。大谷はこれからも私たちの想像を超えていくでしょう。三年後のWBCに参戦するとき、大谷はサイ・ヤング賞を受賞しているかもしれません。ハンク・アーロン賞を受賞しているかもしれません。そんな大谷率いる2026年の侍ジャパンが今から楽しみでなりません。本当にありがとうございました。

#89 栗山監督

 今大会は栗山監督が立てた筋書き通りに話が進んでいたのではないかと思うほと、美しい結末を迎えました。また、最も権威を持つ国際大会であるWBCの監督をやるということ、優勝以外は失敗だということ、プレッシャーの要因は様々あったと思います。また、ヌートバーを選出するという今までにないことをしたということもあって、試合が始まる前からいろいろな声が上がっていました。その中でも、栗山監督は自分の信じることをやり抜き、優勝まで駆け抜けました。村上を最後まで信じ続けること、山田哲人と中村悠平をスタメン起用したこと、控えに回ってしまった選手にフォローを入れることなどなど、栗山監督にしかできなかったことはたくさんあるでしょう。村上は「ムネ、お前に任せた」と伝えられたと語っていました。源田が怪我を押して試合に出た際も中野や牧原といった控え選手にフォローを入れたり、所属球団である西武ライオンズのGMに電話を入れたりしていました。プレーや采配だけじゃ見えない、栗山監督でなければできなかったことがたくさんあったのだと感じます。
 世の中には、表立って何かをしていなければ評価をしない人はたくさんいます。実際今大会の栗山監督を”選手が頑張っただけ”と評している人もいました。しかし、実際はそうではないことなんてほとんどの人がわかっていると思います。また、一番近くにいた選手やコーチたちが何よりわかっていると思います。栗山監督は今大会をもって代表監督を引退するとおっしゃっていました。栗山監督の後を受ける人は相当なプレッシャーを感じることでしょう。
 栗山監督は、ファンに愛され、選手に愛され、実力もあり、神にも愛されていたように感じます。そうでなければ、あれほどまでに美しい結末を迎えることはできなかったと思います。ここまで熱狂と感動を与えてくださり、本当にありがとうございました。

あとがき

 2009年の世界一を見て、それに憧れていた選手が2023年大会で大活躍をし世界一を奪還しました。10年先、15年先のWBCではきっと大谷翔平や山本由伸、吉田正尚、村上宗隆に憧れた世代が日本の野球を支えるのでしょう。一野球ファンとして、楽しみでなりません。
 そして、改めてにはなりますが、侍ジャパンの皆様、優勝本当におめでとうございます。WBCが開催してからの2週間は夢のような時間でした。終わってしまうのが寂しいです。最後になりますが、たくさんの感動を本当にありがとうございました。また三年後も楽しみにしています。

ここまでとても長く拙い文章にお付き合いいただきありがとうございました。よくわからない言い回しや、繰り返し述べてしまっている部分は、どうか目をつむっていただけると幸いです。


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