能代商工会議所2日目、AIを使った業務効率化セミナー開催レポート
執筆:渋谷雄大(ジャイロ総合コンサルティング株式会社 代表取締役)
年間150回以上の講演実績を持つ業務効率化&AIコンサルタント。IT導入補助金の申請支援や、DX化支援の実績多数。特に地方の中小企業のデジタル活用支援を得意とし、実践的なアドバイスには定評がある。全国の商工会議所での述べ講演実績2,000件以上。
本記事のキーワード
#業務効率化 #AI活用 #音声文字起こし #デジタルマーケティング #中小企業DX #地方創生
東北の冬の寒さが身にしみる朝。能代での2日目のセミナー。「同じ内容では面白くないな」と考えながら、朝から講座内容を修正。
地方都市ならではの温かい交流も印象的でした。初日の夜は倫理法人会の方々と意見交換をさせていただき、翌朝は倫理法人会のモーニングセミナーにも参加。デジタル化が進んでも、こういった直接的な交流の価値は決して失われないと、改めて実感した次第です。
「効率化」の本質を考える
「売上アップにつながる業務効率化」というテーマで開催した今回のセミナー。でも、私が一番お伝えしたかったのは、効率化は目的ではないということです。
ある日、飲食店で印象的な光景を目にしました。建設関連企業の経営者と社員が、契約書の件で議論をしていたんです。信頼関係を重視するあまり、契約内容の細かいチェックを怠り、大きな損失を出してしまったとか。「忙しくて契約書を細かく読む時間がない」という声も。
これって、多くの経営者が抱える課題だと思うんです。例えば、補助金の申請書類。60ページ以上ある募集要項を全部読み込むのは現実的ではありません。でも、AIを使えば数分で重要なポイントを抽出できる。こういった活用法を知っているだけでも、ビジネスの進め方は大きく変わってきます。
明日から使える便利なツールだと思うが、どう使うのか?がわからない経営者が多い。
本当はツールの紹介だけで終わりたくなかったんです。そこで、その場でリアルタイムにデモンストレーションしながら進めました。
特に反響が大きかったのが音声文字起こしツール。会議や商談の内容を自動で文字に起こしてくれるんです。参加者の中に地域メディアの記者さんがいらっしゃって、「取材の文字起こしが劇的に楽になりそう」と、休憩時間に熱心に質問されていました。
実際にAIセミナーや支援を行っていると、僕達みたいにAIに興味を持って日頃から触れている人たちではないわけです。だから深く理解している僕達の感覚でお話すると、良いのはわかるが、、、とピンとこない回答が増えてしまいます。概念論や仕組みだけを教えてもわからない。大切なのは、自分たちが使ったときの改善イメージが見えるかどうか?もっと言えば、え、どうやってチャットに入力すればいいの?からです。こういう小さなところが引っかかり、先に進めなくなる経営者が多いということです。
専門家になればなるほど、こういうところは飛ばしがち。だから僕が実際にどうやって業務に使っているのか?の操作をその場で画面で見せながら見てもらう。これが一番なんです。
我が社の"実験"から見えてきたこと
実は、うちの会社では働き方改革の一環として、AIを活用した業務改革を進めています。特に力を入れているのが、経験の少ないスタッフでも高度な業務ができる仕組みづくり。
例えば、お客様との商談内容を文字起こしして、それをAIに分析させると、提案書と返信メールの文案を自動生成してくれる。普通なら半日以上かかる作業が、驚くほど短時間で完了します。これによって、育児や介護と仕事の両立も、より現実的なものになってきています。
地方企業のデジタルマーケティング挑戦事例
印象的だったのは、地方の特産品を扱う企業の事例です。首都圏の富裕層をターゲットにしたいという相談があり、無料の統計ツールで、特定のエリアの世帯データを分析。ターゲット層が多く住むエリアを特定し、効率的な販促活動を展開しました。
驚くのは、その費用対効果。従来の新聞広告やチラシのような面的な配布と比べ、ピンポイントで潜在顧客にアプローチできる。結果、問い合わせ数は従来の3倍以上、成約率は5割増しを達成できたそうです。
デジタルマーケティングの可能性
展示会やイベントの活用法も面白いんです。例えば、大規模展示場で業界イベントが開催される時。会場周辺エリアだけに絞ってSNS広告を配信する。展示会で疲れて休憩中のスマホチェック、そこにバッチリ広告が表示される。
主要駅周辺での広告展開も効果的です。乗り換え時間の暇つぶしでスマホを見ている人に、「近くにこんなお店があります」というアプローチ。従来の駅貼りポスターとは違う、新しいアプローチが可能になってきています。
AIツール活用のコツ
面白いのは、AIツールの使い方って、最初は妄想から始まるんです。「こんなことできたら面白いな」という想像力が大事。その妄想を実現するツールは、実は既にたくさんあるんです。
例えば、会社の強みを分析するのにAIを使う。過去のブログ記事や会社案内をAIに読み込ませると、「こんな強みがありますね」と指摘してくれる。人間には見えていなかった自社の価値に気づくこともあります。
Webサイト作成も変わってきています。従来なら数十万円かかっていた制作費が、AIツールを使えば月額数千円で。しかも多言語対応も簡単にできてしまう。インバウンド需要を狙う地方企業にとって、大きなチャンスになるはずです。
これからの展望
AIやデジタルツールは、決して大企業だけのものではありません。むしろ、経営資源の限られる中小企業こそ、これらのツールを活用すべきです。
特に印象的だったのは、参加者の方々の目の輝き。「自分たちにもできそうだ」という希望が見えたのではないでしょうか。デジタル化って、結局のところ「やってみる」が一番大事なんです。
AI活用は「妄想」から始めよう
最後に参加者の皆さんにお伝えしたのは、「まずは妄想から始めよう」ということ。「こんなことができたら面白いな」という想像力が、実は新しいビジネスのヒントになるんです。
例えば、「お客様との会話を全部記録して、それを商品開発に活かせたら」という妄想。実は、音声文字起こしツールとAIを組み合わせれば、すぐに実現できる。大切なのは、「できるかも」と思ってトライしてみる勇気です。
明日からでも、まずは一つ。気軽に試せる文字起こしツールから始めてみませんか?きっと、新しいビジネスの可能性が見えてくるはずです。