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過剰投資をすれば必ず反動で不況が起こる

そこに資金を投じた人々がパニックを起こす


先週末の米国雇用統計は大方の予想を大きく上回る強いものだった。
論客のサマーズ元財務長官などは2週間前の0.5%利下げは失敗だったと非難している。
平均時給は3.97%増、労働予備軍は959万人で前年比164万人も減っている。
非農業労働者数は前年比1.56%増と順調で、週次失業保険申請は22万件で警戒水準の30万にはほど遠い。
雇用が悪化するのは企業収益が明瞭に悪化してからというのは、経済観測の基本常識だろう。
なので筆者にはFRBがどこを見て労働市場の先行きを懸念しているのか理解できない。
多分例によってデータを見誤っているのだと思う。

とはいえ、株価が崩れ始めれば生成AI投資一極で支えている設備投資は全面崩壊となり、多方面でライトオフ、つまり帳簿価格を実際の評価に洗い替えすることで発生する損失が発生し、リーマンショック以来のパニックが発生するのは不可避と思っており、米国の金利は名目GDPを大きく上回っているので、十分抑制的であり、緩やかに政策金利を下げる方針は間違っていないと筆者は思う。
利下げ後も大手銀行のプライムレート(優良企業向け貸出金利)は8.0%となお高い水準だ。

問題は市場の期待があまりに楽観に傾斜しすぎていることである。
IT不況もリーマンショックも過剰な株高と投資が原因であったが、投資家はいまだに夢を見続けて危険な投資を拡大させている。
毎度のことだが先週MITのアセモグル教授(トルコ生まれ57歳)が現在の生成AIブームに警鐘を鳴らしている。
「多額の資金が無駄になるだろう」。
AIによって奪われる職は今後10年で5%に過ぎず、経済効果もそれに見合う程度で、巨額な投資に見合う成果は起きないと断言している。
筆者は3-4年もすればGPUは価格性能比で100分の1以下に値下がりし、必要な計算量も劇的に節約できると予想する。
早晩ずっと安価な業務用AIサービスが提供されるので、計算資源をドカ食いする今の(旧式な)生成AIのハードウェア投資は無駄だと思っている。

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