生成AI周辺ビジネスのひどく悪い予感
木村 喜由の『マーケット通信』Vol.2204
2年で10倍になったNVIDIAだが将来の地位は保証されていない
筆者が株式投資に参加して50年になるが今朝のNVIDIAほど注目を浴びた決算発表はなかった。
直近株価145.89ドルで時価総額3.58兆ドル、円換算で555兆円、たった1社で東証プライムの6割に相当する。
2年前にOpenAIがChat-GPTを発表した時点での調整後株価は15ドル前後、2年で10倍である。
この当時の一株利益は18セント、PER83倍だから、投資家はよほどの急成長を見込んでいたことになる。
しかし時価総額はすでに50兆円であり、当時30兆円程度だったトヨタ(こちらはPER12倍)を大きく上回っていた。
この時点で多くの機関投資家の保有対象となっていたはずだ。
それが今や価値において世界最大企業というのだから、注目を浴びるのは当然だ。
しかし、より注目度が高まっているのは、その利益急増のペースの異様さと、今後の展望についての意見対立が激烈だからだ。筆者は株価の将来については悲観派の立場。
というのは株式市場は、21世紀になってからのアップルを例外として、トップ企業の凋落、株価が高値から4分の1に値下がりするという経験をしているからだ。
ましてNVIDIAが所属する半導体産業は、技術革新が活発で目まぐるしく新技術が台頭し、今ダントツだからといって将来の業界順位が保証されるということは全くない。
8-10月の業績は売上高351億ドル、営業利益219億ドル、純利益は193億ドル、前年の2.09倍でもちろん急成長を維持しているが、実質的に生成AI・データセンター関連のほぼ一本足打法であり、中核製品の粗利益率は90%近いと推定される。
これだけ規模が大きくて利益率が高ければ、同じ分野で仕事内容を熟知しているライバルが新規参入を考えるのは当然であり、現に主要購入者であるプラットフォーマー各社も内製化あるいは提携により大幅なコストダウンに取り組みつつある。
この事実を踏まえた上で、今の同社の株価を買う価値があるか、という問いに答えなければならない。
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