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陶酔の中で終わる強気市場

木村 喜由の『マーケット通信』Vol.2208

何一つ問題がないように思えた時が天井に


ジョン・テンプルトン卿(1912-2008)は筆者が最も尊敬する投資家である。
投資家に与える示唆においては、ウォーレン・バフェット氏より数段上の人物である。
バフェット氏は幸運にも米国経済の大成長期のベストの時期に全盛期を迎え、銘柄入れ替えはほとんど行わず、自信をもって保有できる銘柄に絞った、単純なバイアンドホールド戦略を貫いただけである。
新規に登場した成長株はほとんど無視し、晩年に最大保有銘柄となったアップルでも初めて投資したのはわずか8年前のこと。
少なくともトレーディングとか銘柄入れ替えのノウハウという点では格別注目すべきものはない。

これに比べるとテンプルトンははるかにアグレッシブで、60年代から誰も知らないソニーやホンダなど日本の成長株に投資を開始し、ITバブルの最中には超割高な小型銘柄を空売りしたり、9.11テロの後には暴落した航空株を大量に買ったり、臨機応変、天衣無縫の対応を見せている。
彼自身が運用していたファンドの運用成果(55-92年)はSP500の20倍だったといえば多く説明する必要はないだろう。

「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、陶酔の中に終わる」という有名な投資格言は彼のものである。
まさに現在の米国市場は、その陶酔の中にある。
ビットコインの急騰、利下げは急ぐべきでないという指標が多い中で債券が急騰する不思議、世界中が米国のインデックスファンドに集中的に投資を振り向けている状況だ。

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