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自分の足元に銃弾を撃つトランプ

木村 喜由の『マーケット通信』Vol.2222

隣国への高関税、自分の支持者にも中間選挙にも大打撃


トランプは有言実行の人物である。
発言を100%実行するとは限らないが、よほどのことがない限り、発言に即した行動を取る。
その意味では信頼できるともいえる人物だ。
なので、今回の関税引き上げ発表にも、延期の発表にも驚いていない。
とはいえ20年に自分で結んだカナダ・メキシコに対する非課税協定UCMCAがまだ有効期間中なのに、いきなり25%関税を掛けるとしたことは商取引の信義にもとる行為であった。

これは両国に対して無礼であるだけでなく、これを前提に事業を行っていた企業にとっても寝耳に水の出来事である。
そして何よりも、その関税の最大の被害者は、最終的に増税分を負担する米国の消費者である。
前にも書いたが、関税の引き上げは、ほとんど関係両国の経済にネガティブに作用する。
許されるのは、輸入国側での当該商品の産業が非常に弱く、国家政策としてその振興策を実施している場合とか、道徳的・医学的にその商品の野放図な流入が好ましくない場合だけである。

今回のトランプ関税引き上げはそのどちらでもない。
関税引き上げは、通常、低所得者における税の負担率が高まり、逆進的である。
すなわちメキシコもカナダも低廉な商品を米国に売っており、その恩恵を最も受けているのは米国の低所得者層である。
より正確に言えば国境付近に住んでいる共和党支持者層の比率が高い。
皮肉なことに、トランプは自分の熱心な支持者を狙って、経済的いじめをしているようなものである。

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