字が下手な奴こそ焼酎を買え
※漫画版、およびドラマ版ドラゴン桜を断片的にしか知らないため、設定など一部異なる場合があります。
某日 某県 書道教室『ドラゴン桜』にて
お前たち、よくうちの教室を選んでくれた。俺は師範の『ドラゴン=桜・エイブ(Dragon-Zakura Abe)』だ。諸事情によりフリー素材で失礼する。よろしくな。
さて、お前たちがここに来たその目的は一つだろう。すなわち、"字が上手くなりたい"……。
もちろんそうなれるように指導するのが俺の仕事だ。
しかしいくら俺が教えたとしても、一朝一夕で上達するのは不可能。
ではどうする?
お前たちはじっくり時間をかけて字を上達させるなんてことは耐えられないだろう。
そういう顔をしている。全員全然堪え性なさそう。ドラゴンの俺にはわかる。
ではどうする?
簡単だ。
まずは「自分の字に自信を持つこと」。
たとえ下手な自分の字でも、それを「下手だなあ。本当に書道教室に通うだけでこれがマシになるのだろうか」と思うか「意外と悪くない字だなあ。これなら習っているうちにさらに良い字を書けるようになるかもしれない」と思うかでは、教室に通い続けるモチベーションに大きな差が生まれる。
今日お前たちには自分の字に自信を持って、初日を終えてもらおう。
では何をする?
いいか、お前たち。
これだ。語感優先で「買え」と言ったが買わずとも酒瓶が1本あればいい。あと焼酎じゃなくて日本酒とかでもいい。
どういうことかさっそく説明しよう。
焼酎や日本酒と言った和酒の瓶──あれにはラベルが貼っていて、そのラベルには商品名が書いてあるだろう。
……勘のいい奴は気が付いたようだな。
その商品名。なんとな~くのイメージだが「だいたい筆で書いてありがち」なはずだ。
つまり……
いいか。先に言っておくがこれは「酒瓶に書いてある筆文字あんま上手くなくない? 誰でも書けそうじゃない?」という意味ではない。
「素人の筆文字でも酒瓶に貼ることでまるでモノホンの酒のラベルの筆文字っぽい感じに見えるんじゃない?」という意味だ。
ちなみにここには本当なら実際の焼酎の画像も載せようかと思ったんだが、ちょっと人として(ドラゴンだけど)よくないかもなと思ってやめておいた。たまたま見つけて載せた写真の酒瓶の文字が実は著名な書道家の人が書いたやつでした~とかだったらマズいし。著名じゃなくてもマズいけど。
こっちとしては酒瓶の文字下手じゃない? という意味で言ってるわけじゃなくても、その辺のニュアンスを変に曲解するバカいるから。バカは東大に行け!
まあつまり、これでやることはわかっただろう。
①好きに文字を書く
②書いた文字を酒瓶のラベルの代わりに貼り付ける
③不思議とどんなヘボい文字でも達筆に見える!?
たったこれだけでどんなに下手なお前たちの字でもいい感じに見えるようになり、お手軽に自己肯定感を高められるって寸法だ。
もう一度言うがこれは「元のラベルの文字がヘボい」という意味ではなく
「素人のヘボい文字でもラベルっぽくすればいい感じに見えるはず」という意味合いだからな。ここまで言ってもわからない人はうちじゃなくて東大へ行ってくださ~い。
わかったら善は急げ……準備をして取り掛かるぞ!
用意するもの
とりあえずこれが必要なもの全てなんだが始める前に一つ断っておくことがある。
今回、適当な酒瓶としてこちらの「米焼酎 しろ」を選んだわけだが……
決して「この筆文字なんか誰でも書けそう感」でこの酒を選んだわけでは断じてない
これは本当だ。そもそもこの文字に誰でも書けそう感あるか? ないだろ?
いい字じゃあないか。白い紙に映える極太の、たった2つの平仮名。
こんなスキーのジャンプ台みたいな美しい角度の「し」、書けますか?
書けないでしょ? センスが違うねやっぱ。絶対プロが書いてる。プロじゃなかったとしてもプロ名乗っていい出来よ。最高。東大。
今回この酒をチョイスしたのには理由がちゃんとあって、
・ラベルの紙が白で余計な装飾もないからただの半紙でもマネしやすそう
・瓶がマットなので写真を撮った際に反射しなさそう
これらのことから「しろ」を選んだんだ。本当。
特に2番目。本当は和酒っぽい茶色の瓶にしようかな~と思ってたんだ。
俺は普段酒飲まないから適当にドラッグストアの焼酎売り場に行ったんだが、反射しない加工がされた茶色の酒瓶が全然なかった。
これ証拠の写真。
ほら。ないでしょ? この写真も反射を気にしてちょっと離れたところからズームで撮ったから微妙に画質悪くてよくわかんないかもだけど、光沢のある瓶ばっかりでしょ?
反射しないタイプの酒瓶は「しろ」とそれのなんかもっといい「しろ」、あと「晴耕雨読」ってやつしかなかった。全部白色マット加工の瓶。
だからこれを買ったというわけだ。わかってくれたな?
あと文鎮はセリアに売ってなかったので家にあった折りたたみノコギリで代用する。
やるぞ!
待たせたな。手順としては
半紙に好きな文字をしたため→それをラベルと同じくらいの大きさに切って貼り付ける→完成
となる。最初から切ると書きづらそうだからな。
ではラベルの大きさを測っておく。
少し大きめに横13cm×縦12cmとしておこう。手はうちの生徒の手だ。
これで半紙におおよそのアタリを取って……
スタート!
あっ、すずり買い忘れた。いやでも多分これもセリアになかったんだよな…
仕方がないので家にあった捨てる予定の小皿で代用しよう。
さあ、好きに書け!!
なるほど、初手カタカナとは攻めたな。
固定観念に囚われないいい発想だ。他の奴らも続け! ベストを尽くせ!
フッ、いいぞお前たち。書道に限らず、習い事とは楽しんでやるもの……
その楽しさはきっと今から忘れられない思い出になるはずだ。
ではこれらをいい感じに切って……
貼って……
完成!!
果たして…?
初手からカタカナのみで構成されたラベルは「うわ キモ」と一蹴されてしまいそうな不思議な感覚だ。しかし意外にも異物感が少ないのはあまり文字の種類が多くないせいだろうか。記号的な文字の見た目はモノクロのデザインとほどよく融合している。いいぞ、この調子だ!
素晴らしい。所々にかすれを交えた太めの筆文字はまさしく和酒のラベルそのもの。四字熟語の字面もピッタリマッチしていて違和感ゼロ。水みたいにスッキリして飲みやすそうだ。なんなら実際あるんじゃないか、この名前の酒。あったらすみません。
これも良い。「隆」の字が大きく、力強い安定感を醸し出している。体の一部がHOT HOTするくらい辛口の味わいが想像できるな。
文字としては一見上手いとは言い難い筆致だが酒のラベルにすることで「なんか味のある字だな」感が十二分に出ている。これぞこの企画の成功例。俺の考えはやはり間違っていなかった。
ボケちゃった。
牛角のキャッチフレーズ? みたいなアレだ。ここまでやってだいたいわかったが、「短文かつ太文字」の方がラベル感出るな。文字の太さはまあなんとでもなるだろうが、長文だと文章になってしまって名前っぽさが薄れる。
……? なんか違うな。なんだろうな。「払い」がよくないんだろうか。支払い感出ちゃって。いや支払い方法の一つだからそりゃ出るよな。「d払い」っていう言葉の語感自体は面白いんだけどな。
これはなかなか。漢字のみを極太で書くとやはり酒名らしさが出る。
でも英検って8級とかあるんだろうか。(5級までしかなかった)
あと画面に白いものしか写ってないせいでピントが合わない合わない。
これは「っぽい」ぞ!
かなり「っぽい」。2文字という少なさ、「乙」の文字の太さがいい感じに酒名っぽさを出している。「葉」の文字も、貼る前はふっにゃふにゃで変だな~と思ったがこうしてラベルにするとそれが一転してプラスになるとはな。最高。東大。味の方も銘酒 藤井隆とはうってかわって甘くトロリとした飲み口だろう。
さて、長くなるのでイマイチだったヤツは以下にまとめる。
優勝は……
乙葉!!
いや、優勝とか決めるつもりは全然なかったんだが、あまりにもこれがよかったので便宜上優勝とさせてもらった。
2位はもちろん「藤井隆」。筆で書いて焼酎の瓶に貼ったら一番それっぽくなる夫妻グランプリ優勝です。おめでとうございます。
ということで
さあ、お前たち。どうだった。
今回の企画でかなり自分の字に自信が持てただろう。
いくつか微妙なやつもあったが、それは文字の上手さうんぬんよりワードチョイスの問題だから気にしなくていい。
もちろん我が書道教室『ドラゴン桜』に通い続ければ、こういう小細工をせずとも魅力ある達筆になれることは師範であるこの俺が保証しよう。
また会おう!
作・ジャッホ フリー素材・https://illustimage.com/
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