pusher現象について
プッシャー現象とは
姿勢調節障害の1つであり、脳血管障害(右半球障害)に多くみられる。
プッシャー現象の3徴候
①麻痺側への傾斜
②自らの非麻痺側上下肢を使用して押す現象
③傾斜した姿勢を正中位へ戻そうとする介助への抵抗
※傾きや押す現象のみが観察されて、修正への抵抗が出現しない場合にはpusher現象ありと判断するのは妥当ではなく、3徴候すべてが陽性である場合にpusher現象ありと判断するべきと考えられている。
評価
SCP:①自然な姿勢での傾斜②非麻痺側上下肢の外転や伸展(押す現象)③修正への抵抗を座位、立位で評価する。最重症が2点、pusher現象がなければ0点となり、合計6点~0点のスケール。
判断基準:下位項目>0(3徴候すべてが重症度を問わずに出現した場合)
プッシャー現象に対する理学療法アプローチ
視覚的な垂直判断を利用したアプローチが推奨されている。
この方法は視覚的な情報を積極的に利用して自己身体軸の垂直軸からの逸脱を修正させようとする試み。指示を理解でき、鏡を注視できる症例においては、すぐ明らかな効果を得られる。
治療概念
1.直立姿勢の知覚的な乱れの理解
患者自身が直立であると自覚して起立している姿勢が、実際には直立ではないことを認識してもらう(口頭、鏡)
2.身体と周辺環境との関係の視覚的な探求と確認
視覚的に垂直と判断する能力(SVV)は身体を垂直位と判断する能力(SPV)よりも保たれている。
視覚を利用して垂直な構造物と自身の身体軸との乖離を認識させる。
セラピストが、自身の前腕を垂直位であると提示し、その垂直位に患者の身体軸を合わせてもらう。
3.垂直位到達に必要な動きの学習
麻痺側へ傾斜した姿勢を、他動的に正中位へ修正→抵抗
自発的に非麻痺側へリーチするような課題→抵抗しない場合が多い
①輪投げを用いたリーチ課題(成功か失敗がわかりやすい)
②起き上がりの逆パターン練習(on elbowに枕を置き、自発的に取り組む)
押すこと自体を抑制する工夫
1.座位・車椅子での前方にテーブル使用し前腕を乗せる
2.麻痺側、座面にウエッジを入れる
3.麻痺側からの移乗、介助者に手を回しての移乗
4.縦方向の手すり使用しての立ち上がり(横手すりより容易)
5. 点滴スタンド(棒)やあえて杖を使用しない歩行
6.壁面を利用した立位練習
まずは、背面と麻痺側に壁が位置した状態から立位保持(LLB使用してもよい)
次に、麻痺側壁に接した状態から離れるようことに挑戦。非麻痺側上肢での非麻痺側へのリーチ課題を行う。
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