カットアウトとは?
内反転位などによりラグスクリューの先端が骨頭から上方や前方へ突出してしまうこと。
特に、不安定型の骨折では、良好な整復位や固定性が得られにくいために発生のリスクが高くなる。
大腿骨転子部骨折術後のカットアウト頻度は、short femoral nail(SFN)で1.6~5.3%
原則的には、転位がそれ以上進まないように荷重量を減らして骨癒合を図る。
*骨癒合が進まなかったり、転位が大きくなったり、痛みでADLが阻害される場合は再手術が行われる。
原因
①整復不良、ラグスクリューの骨頭内挿入不良
②骨皮質が脆弱な場合
③TAD20㎜以上
④不安定型骨折
⑤頸基部骨折
合併症
①顕著な骨粗鬆症
②糖尿病
③関節リウマチ
PTにできることはあるか?
・超音波治療(骨癒合を促進)
・荷重量を調整(歩行器、平行棒での歩行、基本動作練習、スクワット)
・荷重時のアライメントを確認(正しい位置で荷重が乗せられているか・回旋動作などが入っていないか)
・疼痛評価(NRS)での継続した比較(日に日に疼痛が落ち着いているか)
・既往歴・骨密度のチェック
・頚体角を確認(内反股となっていないか)
・レントゲンでのTADを評価
TAD(Tip-apex distance)とは?
*¹Dtrueはラグスクリュー径
図1 TADの算出方法
エックス線単純写真正面像および側面像で骨頭の頂点からラグスクリュー先端までの距離を測定する。 ラグスクリュー径を基準にX線写真の拡大率を補正して、真の距離を算出する。 正面像と側面像から求めた距離の合計をTADとする。 TAD値が20以下になるとラグスクリューのcut outの危険性が低くなる。 ラグスクリューの真の直径をDtrueとすると、TAD値は以下の計算式で求められる。
TAD=(Xap×Dtrue/Dap)+(Xlat×Dtrue/Dlat)
テレスコーピングとは?
骨折部が望遠鏡の縮めるときのように短縮してしまうこと。
CHSやγ-nailなどのラグスクリューはスライディング機構を有しているため、多少のテレスコーピングは問題ないとされている。
術後2週間以内に8~10㎜以上テレスコーピングすると骨頭回旋と共にカットアウトの危険な予兆であると報告されている。
過度のテレスコーピングに注意!(大転子部の疼痛)
*骨頭裂破:カットアウトのこと