一応重症化は抑制?しかし感染はむしろ拡大?(2022年1月29日)
ロベルトコッホ研究所から、毎週木曜日にWochenbericht(週報)が発行されています↓
最新の1/27発行の報告を見てみると、いろんなデータ&考察が載っていますが、28ページにオミクロン株の感染データとして↓の情報が載せられています。感染者の中でもオミクロン株に感染してたのが確定した方々において、年齢層毎、接種状況毎に統計をとったものです。
この表のドイツ語部分をおおざっぱに日本語に訳し、さらに人数だけでなく割合もだしてみると、こちらになります↓
この表からいろいろ考察できそうですが、今回は簡潔に黄色くハッチングした箇所だけで考察したいと思います。5-17歳の層は、ドイツではもう接種可能ですが、大人と比べてまだそれほど接種者は多くないと思われるため。また、ICUと死者のデータについては、18歳以上でもICUに入った方々と残念ながら亡くなってしまった方々は数が少ないためです。
では18歳以上の層で、有症状感染者の結果を見ると、18-59歳も60歳以上も、いずれも未接種者の割合が一番低いことが分かります。この結果だけで、接種に感染予防効果がないことは明らかであろうと考えます。
ちなみに1/29現在、ドイツにおいて接種状況毎の人口比は、おおざっぱに下記になります(ソースはこちら)。
<18-59歳>
未接種:2回:ブースター=18%:27%:55%
<60歳>
未接種:2回:ブースター=12%:14%:74%
このため、単純に人工比で考えたときに未接種者がもうかなり少ないので、未接種者の感染者割合が少なくなるのではないか?・・・といった意見もあるかもしれませんが、そうシンプルには考えられないのではないかと私は思います。というのも接種状況により、検査頻度が全く違うからです。州によっていろいろ細かいところは違いますが、現在おおざっぱに言って下記のような場面で検査を受ける必要があります。
未接種者:職場に入るとき、電車等公共交通機関に乗るとき
(なお未接種者はたとえ検査陰性でも外食不可、博物館等にも入れません)
2回接種者:レストランで食事するとき、博物館等の施設に入るとき
ブースター接種者:検査せずにどこにでも行ける
これを考慮すると、未接種者は人によってはほぼ毎日検査する人までいるのに対し(仕事していない、公共交通機関も使わないという方は、逆にほとんど検査しないかもしれませんが。しかし18-59歳の年齢層ではそういう方の割合は少ないのではないかと推測します。60歳以上では、仕事のために検査が必要という方は減るかもしれませんが、公共交通機関が足として必須の方は多いのではないかと思います)、ブースター接種者は基本的にほとんど検査することがないと考えます(実際私の周りのブースター接種者は検査を受けたことがない方がほとんどです。そもそもブースターする理由が、検査するのが面倒だからという人が大半のように思います)。ブースター接種者で検査するのは、よほど症状があって気になるとき、高齢の親を訪問する前等に念のため、あとは日本等たとえブースターしていようとも入国時に検査結果を提出する必要があるような一部の国に行く場合・・・といった機会に限られると思われ、未接種者と比べて遙かに検査機会は少ないと考えられます。このため、検査回数まで考慮した場合、未接種者全体の母数は決して人口比で上の接種者よりも少なくないと思われ、それにも関わらずこのような結果となっているのは、よほど接種者が検査した際に引っかかる確率が高い・・・ように思えてしまいます。もしも現在ドイツにいる方々全員に一律で検査を行った場合、さらに大幅に接種者の中で感染者が多い・・・という結果が出てくる可能性もあるのではないでしょうか?
次に入院した方々の結果からは、18-59歳ではブースター接種者が割合としては一番低いですが、一度でも接種した人(=2回接種者+ブースター接種者)という観点で比べた場合、未接種者のほうが接種者より少ないことになります。60歳以上でも、未接種者のほうが接種者より少ないです。
一方で、入院した方々は有症状感染者のうち症状が重い方々であろうと推測し、たとえば18-59歳の入院治療者の未接種者181人は、18-59歳の有症状感染者12236人のうち症状が重い方だったと考えて、181/12236=1.5%が重症化したと仮に仮定します(実際のところ入院者が必ずしも重症者とは限らないのかもしれず、言葉の定義として不適切かもしれませんが、ここでは入院者を重症化した方々と仮定してみます)。このような仮定の下、他の接種状況に応じた重症化割合まで算出すると↓になります。
こうしてみると、年齢層に関わらず、重症化割合としては未接種者のほうが高いといえる結果のように考えます。ただし、接種のおかげで重症化を大きく抑えている・・・とまで言えるでしょうか?たとえば18-59歳で見たときに、↑の表だけ見れば、未接種者は1.5%重症化しているのに対し、接種者は0.8%または0.6%と1/2に抑えられているように一見見えるかもしれません。ですが見方を変えると、未接種者のうち98.5%が重症化しなかった、接種者は99.2%または99.4%重症化しなかった・・・わけで、それほど大きな差ではないようにも思えます。
政府としては、以上のようにオミクロン株に対しても重症化を抑えられる?ことから接種推奨のスタンスなのかもしれませんが、しかし接種者のほうが感染確率が高くなる?とすれば、感染確率×重症化確率で総合的に見た場合、果たして接種メリットのほうが勝ると断定できるものなのでしょうか?
なおこの考察はあくまで1/27発行の週報に載っていた上記データでだけで考察したものであって、今後もこのような傾向が続いてより顕著になるのか?、それとも感染や重症化状況に変化があるのか?、注意して見ていってみたいと思います。