
シンガポールのスタートアップ~直近1年間の調達額ランキング(シード・プレシード)🦄TOP10企業をご紹介~|データシートも公開!
はじめに
インターンの松永です。私は現在シンガポール国立大学(NUS)ビジネススクールに在籍しています。今回は、シンガポールのスタートアップ事情についてまとめたいと思います。
世界のスタートアップ・エコシステムに精通している、RouteX(記事のリンクはこちらから)では、「シンガポールのスタートアップ環境」について以下のようにまとめられています。
・政府による積極的な支援(シンガポール政府が、起業家への助成金や特許の商業化サポートなど、スタートアップ支援を積極的に行っている)
・大学による積極的な支援(NUSを中心とする国内の主要大学が、起業の啓蒙活動やプログラム、インキュベーション施設を積極的に運営している)
・アジア市場のハブ的位置付け(シンガポールのスタートアップエコシステム自体が、シンガポールの国内市場ではなく、もっと巨大なアジア市場を意識して、サービスを開発するための「窓口」として捉えられている)
同様に、各国のビジネス環境に精通しているJETRO(記事のリンクはこちらから)によると、シンガポールのスタートアップ事情について以下のようにまとめられています。
政府の後押しもあって、シンガポールを拠点とする情報通信メディア(ICM)やフィンテックなどデジタル技術分野での起業の動きは近年、活発化している。シンガポール国立大学(NUS)の起業支援部門NUSエンタープライズの調査(2017年5月)によると、2015年末時点でハイテク系スタートアップ(注1)は5,111社で、2004年の2,757社と比べると2倍近く増加した。また、通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)の積極的な振興策が奏功して、シンガポールに拠点を置くフィンテック企業は480社(注2)と、東南アジアで最もフィンテック企業が集積している。
注1:このハイテク系スタートアップとは、シンガポールで登記し、株式50%以上を個人が保有している上、研究開発(R&D)への支出と人材投入が多い分野に属する。
注2:シンガポール・フィンテック協会(SFA)2017年11月発表資料、Tracxn社のデータ引用。
本noteでは、シンガポールの代表的なスタートアップについてご紹介した後に、直近1年間(2022年2月8日から2023年2月6日迄)のシード・プレシード調達リストから、調達額ランキングTOP10をご紹介していきます。
*調達額等個別企業の情報は、Crunchbaseを中心に参照しています。
シンガポールの代表的なスタートアップ
数十億ドルを調達し、既にIPOを果たしているシンガポールのスタートアップ2社をご紹介します。
Grab(東南アジア版のUber。スーパーアプリ展開)
事業概要:東南アジア版のUber。配車サービスのみならず、フードデリバリー、電子決済など多様なサービスを統合したスーパーアプリを運営。シンガポールやマレーシア、インドネシア、ミャンマーなどで事業展開。
設立:2012年6月
累計資金調達額:40億(USD)
上場:NASDAQ(2021年12月2日)
時価総額:128億米ドル(2023年2月10日時点)*Bloombergの情報を参照
2014年12月にソフトバンクグループから約300億円の出資を受けた事でも話題です。
Sea(ECプラットフォーム「Shopee」など展開)
事業概要:EC プラットフォームの「Shopee」を始めとし、オンラインゲーム、デジタル金融サービスなど多岐に渡るインターネットサービスを展開。
同社のIPOは、アメリカでの東南アジア企業による、当時の最大規模となった。
設立:2009年5月
累計資金調達額:35億(USD)
上場:ニューヨーク証券取引所(2017年10月20日)
時価総額:359億米ドル(2023年2月10日時点)*Bloombergの情報を参照
中国のテック系コングロマリット「テンセント」から出資を受けている事にも注目です。
直近1年間シード・プレシードの調達額ランキングTOP10企業
*調達額等個別企業の情報は、Crunchbaseを中心に参照しています。
*集計対象期間は2022年2月8日から2023年2月6日迄
Capital C Corporation
関連カテゴリー:フィンテック
事業概要:クレジット、Buy Now Pay Later、資金管理ツールなどデジタルサービスを通じて、大衆向けのワンストップ金融ソリューションを提供
設立:2017年
直近調達額:約5,300万米ドル(2022年6月8日)
Treehouse Finance
関連カテゴリー:フィンテック、分析、仮想通貨
事業概要:DeFiデータ分析プラットフォーム。DeFi投資家のデータ分析、リスクマネジメントを手助けし、DeFiコミュニティのイノベーションを促進。
設立:2021年8月
直近調達額:1,800万米ドル(2022年3月16日)
Intella X
関連カテゴリー:ブロックチェーン
事業概要:ブロックチェーンWeb3ゲームプラットフォーム。コミュニティ主導の自立型Web3ゲームエコシステムを構築。
設立:2022年
直近調達額:1,200万米ドル(2023年1月17日)
Digital Entertainment Asset
関連カテゴリ:ブロックチェーン、仮想通貨、ゲーム、メディア&エンタメ
事業概要:ブロックチェーンエンタメプラットフォーム。遊んで稼ぐ、Play to earnのNFTゲームを開発
設立:2018年8月
直近調達額:1,000万米ドル(2022年12月14日)
*吉田直人氏、山田耕三氏により創業
Apeiron
関連カテゴリー:ブロックチェーン、オンラインゲーム
事業概要:遊んで稼ぐ、Play to earnのNFTゲーム「Apeiron」を開発
直近調達額:1,000万米ドル(2022年4月28日)
MetaTrust Labs
カテゴリー:ブロックチェーン、サイバーセキュリティ
事業概要:Web3セキュリティソリューションプロバイダー。南洋理工大学(NTU)のリサーチチームによって設立
設立:2022年5月17日
直近調達額:1,000万米ドル(2022年9月11日)
MBD Financials
カテゴリー:ブロックチェーン、仮想通貨
事業概要:様々な金融取引や活動を行うことができるメタバースサービスを提供。
設立:2022年4月1日
直近調達額:1,000万米ドル(2022年8月15日)
TotallyAwesome
カテゴリー:サイバーセキュリティ、デジタルメディア、ソフトウェア
事業概要:アプリ、ゲーム、ウェブサイトを安全に利用するためのキッズ、ファミリー向けプラットフォームを提供
設立:2015年
直近調達額:970万米ドル(8/17/2022)
Optty
カテゴリー:フィンテック
事業概要:BNPL(後払い)サービスの統合プラットフォームを手掛ける。59カ国以上、36通貨で利用可能なOpttyは、小売業者および決済代行業者向けに41種類のBNPLサービスを統合したプラットフォームを提供。
設立:2021年
直近調達額:970万米ドル(2022年4月27日)
Trailblazer Games
カテゴリー:ブロックチェーン, デジタルエンタメ, オンラインゲーム、ビデオゲーム
事業概要:ブロックチェーン技術を活用し、世界中のプレイヤーを集めるWeb3ゲームを構築。所有IPのNFTコレクション販売も行う。
設立:2021年
直近調達額:820万米ドル(2022年3月18日)
まとめ
以上、シンガポールのスタートアップ事情についてまとめてみました。東南アジアに拡がるスーパーアプリの「Grab」やインターネットサービス企業「Sea」の今後の展開には注目したいです。
尚、シード・プレシード調達案件に関する独自調査から、調達額ランキングTOP10において、フィンテック領域及びブロックチェーン・Web3領域で事業展開する企業が大半を占めることが明らかとなりました。もともと金融街として栄え、近年ではハイテク系スタートアップのインキュベーションハブとして発展する、シンガポールのスタートアップエコシステム独自の特徴のように思えます。
ご案内
データシートを無料公開!
本noteで参照した調達リストを公開します。データシートは適宜更新予定です。注目案件に関しては、次に案内するジャフコのツイッターサブアカウントの方で毎週配信していきます!

Twitterアカウントフォローのお願い
ジャフコのTwitterサブアカウントでは、シンガポールに加えて米国の資金調達動向など、スタートアップに携わる方・興味のある方にお役立ちするコンテンツを多数提供していきます。是非こちらのリンクからフォローお願い致します!!このnoteに関するツイートへのいいね&リツイートもお待ちしてます :)
\\📔note更新!//
— ジャフコ|スタートアップ トレンド情報発信 (@jafco_intern) February 13, 2023
シンガポールのスタートアップ~直近1年間の調達額ランキング(シード・プレシード)
🦄TOP10企業をご紹介~|データシートも公開!
米国に加え、シンガポールの注目スタートアップも紹介していきます!🇸🇬https://t.co/EUkf0Ep7HT
関連記事
※本記事の内容の一部は、信頼できると考えられる公開情報に基づき作成しておりますが、その正確性を保証するものではありません。また、記載した見解は、必ずしも会社の立場、戦略、意見を代表するものではありません。掲載された内容によって生じた直接的、間接的な損害に対しては、責任を負いかねますので、ご了承ください。
※本記事は、2023年2月10日時点の情報に基づきます。