【全文無料公開】「ブンデスリーガ 2024-25 第14節」ボルシアMG vs キール 簡易分析レポート
「ブンデスリーガ 2024-25 第14節」
ボルシアMG vs キール 簡易分析レポート
4-1(前半3-1/後半1-0)
Ⅰ.「はじめに」
選手の質を考えると、11位(13節終了時点)に沈んでいると言って過言ではない状況のボルシアMG。
今シーズンは試合によって出来・不出来の差が大きく、直近5試合は2勝2分1敗。
今節、板倉選手はCBとしてスタメンに名を連ね、試合終盤にはボランチに入り、フル出場で勝利に貢献。
福田選手はベンチスタート。後半79分に試合を決定づける4点目が入った後の3枚替えにも彼の名はなく、チーム内での序列の低さを痛感させられた瞬間であったと言えるか。
対するは昇格1年目のキール。
13節終了時点で17位と自動降格圏内に沈んでおり、直近5試合は1勝4敗(4連敗中)。
今節、町野選手はベンチスタート。62分に左IHで途中出場するも、可もなく不可もなく、これと言って見せ場はないまま試合は終了してしまい、チームは5連敗。
器用な選手であるため、IHもある程度は出来てしまうとは思いますが、やはりベルマーレ時代から見ていた身としては、CFとして起点になってからゴール前に入って行く、まさにボルシアMGの先制点における、クラインディーンストの様な動きを期待したいところ。
ちなみにその先制点における、オノラ選手のマイナスのクロスに関してですが、クラインディーンスト選手が、長い距離を走って飛び込んでくる力が最大限に活きる「ふわりとした滞空時間の長いボール」を選択しており、最高のアシストであったと思います。
あと、ゴールには至りませんでしたが、クラインディーンスト選手のBOX内での、相手CBを軽く押す形でのマークの外し方も見事でした。
キールのCBが距離を詰め過ぎという問題はありますが、ファールは取れない程度に軽く押している様に見えるにも関わらず、押した直後には相手とかなりの距離が出来ており、単純にパワーの問題なのか、それとも押す身体の位置などにコツがあるのかわかりませんが、興味深いシーンでありました。
今回は「ボルシアMG攻撃の狙い」をメインに、対する「キールの守備の修正」や、先日行われた「J1昇格プレーオフ決勝」の話も交えながら、簡易分析レポートという形で分析・解説していきたいと思います。
ちなみに「簡易分析」なので全文無料公開と致します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ.「フォーメーションの確認」
ボルシアMGは「4-2-3-1」をベースに採用。
ビルドアップ時は状況に応じて「4-4-2」「3-4-2-1」の様な形へ可変。この可変が「攻撃の狙い」に直結していると考えられるため、詳細は後記します。守備時は「4-2-1-3」で前線からの同数プレス。
キールは町野選手の古巣である湘南ベルマーレと同じ「3-1-4-2」(守備時「5-3-2」)でスタート。
後半からはボルシアMGの攻撃の狙いを封じるためか「3-4-2-1」(守備時「5-2-3」)にベースを変更。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
広告
「2024 J1リーグ 分析レポート」を6本セットでマガジン化しました。
単体で購入した場合「1本100円×6本=600円」のところ、シーズン終了に伴い「50%オフの300円」で販売しています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅲ.「ボルシアMG攻撃の狙い」
キールのWB裏
ボルシアMGの攻撃の狙いのひとつは「キールのWB裏」であり、前半、左右両サイドから何度もここを狙っていた中で、26分の2点目は正にこの狙い通りの得点となりました。
キールはフォーメーションの章にて説明した通り、前半の守備時は「5-3-2」に可変していました。
この形は一見、後ろに5枚・中央に3枚と壁が厚く、崩すことが難しい様にも見えますが、それはあくまで「中央」の話であり「サイドのレーン」は非常に薄くなっています(図Ⅰ参照)。
ボルシアMGはビルドアップの際、両CBが外に開き、連動してSBも開きます。そうなると、キールの2トップはボルシアMGのSBまで追うことが出来ず、サイドにフリーの選手が生まれます。
更にSBの前では中盤のサイドの選手もフリーの状態にあり、この時点でサイドにおいて「2対1」の数的優位の状況を作り出せています。
※ 「3-1-4-2」でも仕組みは同じ
ここまでセット出来れば後はシンプルな話であり、ボルシアMGのSBにボールが入った際、中盤サイドの選手は意図的に少し低い位置を取り、キールのWBがそこに食い付き次第、裏のスペースにロングボールを送り込むだけとなります。
ロングボールに対しては、2点目のシーンの様に中盤サイドの選手が走り込んでも良いですし、2トップ(もしくは1トップ+2シャドー)化していれば、その一角が走り込んでも中は足りており、その後の展開に困ることはありません。
これが「ボルシアMG攻撃の狙い」となります。
ちなみにキールの5バックは名ばかりと言いますか、実質「3CB+2WB」となっており「5枚で1セット」と言える程の連携は取れていませんでした。
そのため、WBが釣り出されても3CBのカバーが遅く、また、ボルシアMGのロングボールに対して3CBは、守備の原則である「キックモーションに合わせて数歩下がる」という裏へのケアも出来ておらず、これでは失点が嵩んでしまうのも当然という状態にありました。
5バックとファジアーノ岡山
実質「3CB+2WB」という現象は、守備時に5バック化する3バックのチームが陥りがちな点ではありますが、その点「J1昇格プレーオフ決勝」でのファジアーノ岡山の5バックは見事に5バックと呼べる完成度にあったと思います。
また、ブロックだけでなく、前線からのプレスも洗練されており、守備組織の部分ではJ1でも十分にやれる印象を受けました。
ただ当然のことながら、J1はJ2よりも個のレベルが平均的に見て高いわけであり、個人あっての組織という点も含め、個の部分でどれだけ食い付いて行けるかが成功の鍵となるかと思います。
あとは何と言っても点が取れなければ「勝ち点3」は手に入らないわけであり、この日のルカオ選手はスーパーでありましたが、この試合を観た限りでは、チームとしての攻撃面での課題は残るという印象を受けました。
個人的に守備組織が構築されているチームに好感を持っているので、来シーズンのファジアーノの試合を楽しみに待っています。
キール 守備の修正と課題
キールは後半からベースを「3-4-2-1」(守備時「5-2-3」)に変更することで、前線3枚のサイドの選手が相手SBまでプレスを掛けられる様になり、サイドのスペースも埋められる様になったことで(WBの守備対応は曖昧なままでしたが)、前半の様に一発でWB裏を取られるシーンは見受けられなくなりました。
但し、サイドのケアを意識し過ぎたのか、今度は中央への縦パスを差し込まれるシーンが増えた様な印象を受けました。
また、中央でボールを受けた選手に対して、キールのDF陣は視線(時には身体の向きまで)が集中してしまう癖があり、4失点目はまさにその点が原因であったと思います。
この点も含め、端的に言ってしまえば、組織の前に個人における守備の基本が身についていない選手が多いため、これではシステム変更という対処療法を施したり、単純に後ろに人数を掛けたりしたところで効果は表れず、失点は嵩み続けてしまうかと思います。
攻撃面では、サイドチェンジが少なく、また、1点目のゴラッソのイメージが選手の頭の中にあったのか、点差が開いて焦っていたのか理由は分かり兼ねますが、強引に打ちに行くシーンが多かった様な印象を受けました。
これではゴラッソ以外でゴールに至る可能性は低いと思われるので「3-1-4-2」システムを使い続けるのであれば、サイドの幅(WB)を使って揺さぶり、相手のマークを分散させた後、前線6枚という数的優位を活かし、三角形を作りながらBOX内に侵入という形を目指すべきかと思います。
ちなみに1点目は確かにゴラッソではありましたが、元を辿れば、GKを含めたビルドアップでボルシアMGの同数プレスを回避したことに始まり、そのズレを活かしながら、味方の横にパスコースを作り、サイドチェンジも織り交ぜた上でのゴールであり、こういった形を偶然・単発ではなく、再現できる様な指導・落とし込みを監督が出来れば、まだ前半戦ということもあり、巻き返しのチャンスはあるかと思います。
「味方の横にパスコースを作る重要性」に関しては「2024 J1リーグ第38節 ヴィッセル神戸vs 湘南ベルマーレ」の分析レポート(有料部分/100円)で解説していますので、興味のある方は以下のリンクからご覧下さい。
「ブンデスリーガ 2024-25 第14節 ボルシアMG vs キール」の簡易分析レポートは以上となります。
有難うございました。