【全文無料公開】「皇后杯 第46回 準決勝」浦和レッズvs INAC神戸 分析レポート(1/24更新)
「皇后杯 第46回 準決勝」
三菱重工浦和レッズレディースvs INAC神戸レオネッサ 分析レポート
4-1(前半2-1/後半2-0)
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Ⅰ章とⅢ章の一部に正確とは言い切れない表現・分析がありました。
選手・読者・関係者各位に対し、訂正してお詫び申し上げます。
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Ⅰ.「はじめに」(1/24更新)
前回大会決勝の再戦となった一戦。
現在、リーグ戦における勝ち点・得失点差は同数。総得点差で3位のレッズと2位のレオネッサ。
WEリーグ開幕以降、初年度はレオネッサ、2年目・3年目はレッズが優勝。
更には優勝を逃したシーズンは両クラブ共に2位につけており、間違いなく国内女子サッカーを牽引している存在である、強豪同士が相まみえた皇后杯準決勝。
レッズは、守備では整理された前線からのプレスで、レオネッサのビルドアップを上手く封じており、レオネッサのエースであるスアレス選手に対しても、パリ五輪代表の石川選手を中心に対応できており、90分を通して安定したパフォーマンスを披露していた印象。
攻撃では、塩越選手や伊藤選手がレオネッサのバイタルエリアを使うシーンが多く見られ、この点は事前分析でチームとして狙い所に定めていた可能性が高いと思います。
また、本職はCBでありながら、今シーズン、クラブではCFでの起用が続いている、パリ五輪代表の高橋選手が圧巻のパフォーマンス。
フィジカルを活かしたポストプレーや、DF経験が活きたと思われる、プレスからの絶妙なボール奪取で攻撃の起点となり、フリーランニングでスペースを作り、更にはセンス溢れる浮き球でのアシストに加え、自らゴールも決めており、1得点2アシストの大活躍で勝利に大きく貢献。
レオネッサは、守備に関してはレッズの攻撃の裏返しでありますが、バイタルに位置取るレッズの選手に対し、CBは前に出られず、ボランチは背中に入られており、自由を与え過ぎていた印象。
また、スアレス選手を抑えていたレッズDF陣とは対照的に、高橋選手を封じることが出来ず、その差が出た一戦と見ることも出来るか。
攻撃に関してもレッズの守備が良かったこともありますが、レオネッサ自身の出来が悪かったことも事実。
前半、選手の立ち位置や配球が良くない中でのビルドアップでは、レッズのプレスを掻い潜ることが出来ず、後半からはフォーメーションを変更し、ミラーゲームの構造になっている中、DFラインから繋ごうとするため、相手に引っ掛かるシーンが目立っていた印象。
そこで今回のレポートでは「レオネッサのビルドアップの改善点」「バイタルを使用したレッズの攻撃」をメインに分析・解説していきたいと思います。
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Ⅱ.「フォーメーションの確認」
レッズは「4-2-3-1」をベースに採用。
守備時は「4-4-2」に可変する、オーソドックスなスタイル。
レオネッサも同じく「4-2-3-1」でスタート。
守備時は基本的にこのままの形。攻撃時は右SBの守屋選手を一列前に出し「3-4-2-1」に可変。
後半からはベースを「4-4-2」に変更。そして攻撃の際には4トップ気味の「4-2-4」の様な形に可変。
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Ⅲ.「レオネッサのビルドアップの改善点」(1/24更新)
フォーメンションの章にて前記した様に、レオネッサは前半、攻撃時には右SBの守屋選手を一列上げて「3-4-2-1」に可変していました。
この可変と代表選手でもある守屋選手の個の質を考えれば、彼女がレオネッサのキーマンの1人であることは間違いありませんが、その彼女に対し、全くと言っていい程、ボールが通っていませんでした。
レオネッサのビルドアップの際、守屋選手が図Ⅰの様に、レッズのSBに近い、非常に高い位置(もしくは反対にレッズSHの視野に入る低い位置)を取っているシーンが何度か見受けられました。
確かにこの位置で前向きでボールを受けることが出来れば、チャンスに繋がるかもしれません。しかし、実際にそうであった様に「味方CBから距離があり」「下でのパスコースを作れておらず」「相手SBが目の前にいる」この位置では、ボールを受けること自体が難しいと考えられます。
また、これも実際にあったシーンですが、高い位置を取っていることにより、味方選手がボールを失った際、長い距離を走って自陣まで戻る必要が出てきてしまいます。
幾ら抜群の走力を誇る守屋選手でも体力は有限であり、そういった意味でも、上がるタイミングや立ち位置が重要となって来るかと思います。
そこで僕としては図Ⅰの矢印の先、つまり「相手SHとSBの中間」に位置取ることをお勧めします。
ここに位置取るだけで、サイドCBからのパスコースを確保でき、距離的にもCBからのロングボールを受けることが出来る様になるかと思います。
そしてこの2点の実現にも関わる、何よりも重要な利点が「相手SHとSBに、どちらが守屋選手につくのか迷いを生じさせることが出来る」点となります。
その結果、以下の3つの優位な状況を生み出すことが想定できます。
① 相手が守屋選手に誰がつくのか決め切れていない間にパスを通せば……
→守屋選手はフリー・前向きでボールを受けることが出来る
② SHがついてくれば……
→サイドCBの持ち上がりや縦パスが入り易くなる
③ SBがついてくれば……
→SB裏のスペースにシャドーの選手が流れることで、CBを引き出せる
ちなみに中間ポジションを取れていても、味方選手からパスが出て来なかったシーンもあり、この点はチームとしての改善が必要となります。
ただ、出て来なかった場合も上下に動き過ぎず、愚直に中間ポジションに居続けた方が、相手にとっては嫌なプレーだったかと思います。
今回は守屋選手ひとりのポジションニングに焦点を当てる形となってしまい、万が一彼女が目を通せば、良い気分はしないかもしれません。
しかし、数メートルの移動ひとつで状況は一変し、彼女の良さ(動画9秒~参照)が出ることとなるはずであり、そういった想いを込めて指摘させてもらいました。
ということで、今後も守屋選手のクラブ・代表での活躍を勝手ながら期待しております。
※ 動画は今回の試合ではありません
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Ⅳ.「バイタルエリアを使用したレッズの攻撃」
Ⅰ章にて前記した様に、バイタルに位置取る(入って来る)、レッズの塩越選手や伊藤選手に対し、レオネッサのCBは前に出られず、ボランチは背中(死角)に入れてしまっており、結果としてピンチ・失点シーンを招いてしまっていました。
まず、ここで注目して欲しい点はBOX内の人数です。
レオネッサがGKを除いて5人いるのに対し、レッズは裏へと抜けて、そのままオフサイドポジションにいる伊藤選手を除けば、CFの高橋選手1枚しかいません。
これは明らかに人員過多であり、これではバイタルが空いてしまうのも無理ありません。
ちなみにこれは伊藤選手の裏抜けにレオネッサのボランチ、サンプソン選手がついて行き、そのまま最終ラインに吸収されてしまった結果であり、レッズが一枚上手であったと見ることも出来るかもしれません。
また、最終的にバイタルからシュートを放つこととなる塩越選手にボールを落とした、高橋選手のポジションニングも見事でした。
相手CBの前でボールを受けた場合、塩越選手のシュートコース上に立ってしまう可能性がありますが、図Ⅱの様に相手SBの前であれば、その心配はありません。
このレッズの同点シーンは冒頭にて記載した通り、レオネッサのボランチの背中(死角)で塩越選手がパスを受けています。
ここでは相手CBも寄せて来てはいましたが、塩越選手に入ったパスも、塩越選手から出たパスもダイレクトであった分、潰し切れませんでした。
また、アシストを決めたレッズの右SB遠藤選手ですが、このシーン含め、駆け上がるタイミングとスピードが素晴らしく、昨年末の初キャップに続き、ニールセン新政権においても活躍が期待できる選手だと思います。
あと、このシーンに関しても高橋選手のポジショニングの良さが光っていました。
図Ⅲの様なシーンでは、ゴール前まで入って行って潰されてしまうCFが少なくない中、高橋選手は動き過ぎず、マイナスのクロスが入る位置で待つことが出来ていたため、相手DFが寄せ切れず、ゴールが生まれたと僕は考えています。
来週「1月25日(土)13:00」には「アルビレックス新潟レディースvs三菱重工浦和レッズレディース」の決勝が、エディオンピースウイング広島にて開催(NHKBSで生放送)されます。
興味・お時間のある方は是非!
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「皇后杯 第46回 準決勝 三菱重工浦和レッズレディース vs INAC神戸レオネッサ」の分析レポートは以上となります。
有難うございました。