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【マンツーマンプレス攻略法】「ブンデスリーガ 2024-25 第16節」ボルシアMG vs バイエルン 分析レポート

「ブンデスリーガ 2024-25 第16節」

ボルシアMG vs バイエルン 分析レポート

0-1(前半0-0/後半0-1)


Ⅰ.「はじめに」

 両チームにとって2025年の初陣となる一戦。

 ホームのボルシアMGは、中盤の右サイドが定位置であるオノラ選手が欠場
 オノラ選手とクラインディーンスト選手(CF)の関係性は、相手DFにとって脅威となる攻撃の形であり、無得点で終わった今回の敗戦には、彼の不在が響いたことは事実。
 最もバイエルンのマンツーマンプレスに対して、ボルシアMGは前半、正に手も足も出ておらず、後半序盤は、守備スタイルの変更を機に光明が見え始めていたものの、失点以降は再び自陣に封じ込められつつあった印象。
 
そのため、オノラ選手がいても厳しい試合になっていた可能性が高いことも、また事実。

 日本人選手に関しては、板倉選手はCBでスタメン・フル出場
 中央から釣り出され、ピンチを招いたシーンはあったものの、基本的には90分を通して、安定したプレーを披露。ケイン選手を筆頭としたワールドクラスの選手相手でも臆せず、バイエルンの攻撃を跳ね返し続けていた印象。        
 福田師王選手は後半ATに今シーズン初出場。依然、厳しい状況に置かれており、出場機会を求め、今冬の移籍市場でベルギー・オランダ辺りのクラブに期限付きで出ることも選択のひとつか。


 対してアウェーのバイエルンは、トップ下のムシアラ選手が欠場
 代わりにトップ下に入ったミュラー選手が「らしい」とも言える、中間ポジションでのボールの引き出しや、敵陣での献身的な守備から好機を生み出しており、中でも前半21分の攻撃シーンには、彼の良さが凝縮。
 終盤に交代でトップ下に入ったニャブリ選手も、裏抜けとドリブルでチームに勢いをもたらしており、ビッククラブの層の厚さを改めて実感。

 前半に関しては、守備では前線からのマンツーマンプレスでボルシアMGを完全に封じ込めており攻撃では約7割という圧倒的なポゼッション率を記録
 「ボールを持たされていた」という様な数字のマジックではなく、主導権を握ってボールを回せていたものの、ボルシアのCBをこじ開けることが出来なかった印象。
 後半はボルシアMGが前からプレスを掛けてきたことにより、流れを持って行かれ、序盤は劣勢が続いていたものの、コマン選手の投入からの得点以降は再度ペースを握ることに成功。その勢いはニャブリ選手の投入で更に加速。
 ケイン選手が中盤まで落ちることで出来たスペースを、ニャブリ選手が使うなど、二人の関係性も良く、結果としてPKの1点のみで終わったものの、前半と打って変わって、複数得点が入っていても不思議ではなかった印象。


 そこで今回のレポートでは「ミュラー選手の良さが凝縮された動き出し」「バイエルンのプレスと攻略法」をメインに分析・解説していきたいと思います。

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Ⅱ.「フォーメーションの確認」

 ボルシアMGは「4-2-3-1」をベースに採用。
 守備時は「4-4-2」の3ラインに可変。バイエルンのビルドアップの形に合わせて「4-3-3」で対応するシーンも。
 前半は前線から激しくプレスを掛けることはなく、3ラインをコンパクトに保ち、スペースを消しながら構える守備スタイル。後半序盤は前線からプレスを掛け始め、流れを掴むも、失点以降はトーンダウンした印象。

 バイエルンも「4-2-3-1」をベースに採用。
 ビルドアップ時は、ボランチの一角であるキミッヒ選手が最終ラインに入り「3-4-3」に可変。守備時は「4-4-2」をベースとしながら、前線からマンツーマンプレスを掛けており、数字はあくまでも初期配置

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Ⅲ.「ミュラー選手の良さが凝縮された動き出し」

相手選手との接触のないボールの受け方(映像44秒~)

図Ⅰ.ミュラー選手の良さが凝縮された動き出し(ボールの引き出し方/映像44秒~)

 流れの中でボルシアMGの守備陣形が少し乱れていますが、ミュラー選手はボルシアMG「4-2-3-1」の中盤「2」と「3」の中央のスペースから、相手選手の間に顔を出してボールを引き出しています。

 理想は図Ⅰの円の中でボールを受けてターンすることですが、「4-4-2」と異なり「4-2-3-1」はトップ下がいるため、直通でパスを受けることは難しい状況にありました。
 それでも中間ポジションという死角から顔を出すことで、相手との接触がない状態でボールを受け、スムーズに前を向くことに成功しており、何気ないプレーではありますが、フィジカルに難のあるミュラー選手の、真骨頂とも言えるシーンだったかと思います。


「動き出しの速さ」と「動き出した後の速さ」(映像53秒~)

図Ⅱ.ミュラー選手の良さが凝縮された動き出し(BOX内への飛び出し/映像53秒~)

 図Ⅱは図Ⅰの続きとなります。
 ライマー選手からキミッヒ選手へとバックパスが流れ出した瞬間、敵味方含め、他の選手が立ち止まっているのに対し、ミュラー選手のみ、トップスピードでゴール前に走り始めています

 ボールが動いている間、多くのDFはボールの行方を目で追ってしまっており、ボールが蹴られる瞬間、自身のマーカーを見落としている傾向にあります。
 コーナーキックの際、ショートコーナーを使い、リターンパスをファーサイドに蹴るシーンをよく見るかと思いますが、あれはこの原理を使ってフリーの選手を生み出そうとしている典型例となります。
 ちなみに映像を見て頂ければ一目瞭然かと思いますが、このシーン、ミュラー選手以外にも複数の選手がボルシアMGのDFの背後を取ることに成功しています。

 実はこのシーンでは、ボルシアMGの中盤の選手が一人、ボールが動いている間にミュラー選手の動き出しを確認しています。しかし、冒頭にて記載した通り、ミュラー選手がトップスピードで入って来ているため、目線を外した次の瞬間にはシュートを打たれてしまっています。
 そういった意味でこれは「動き出しの速さ」だけでなく「動き出した後の速さ」まで兼ね備えていた、ミュラー選手の個人戦術が光ったシーンと言えるかと思います。

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Ⅳ.「バイエルンのプレスと攻略法」

ボルシアMGのビルドアップvsバイエルンのプレス 概要

図Ⅲ.ボルシアMGのビルドアップvsバイエルンのプレス 基本形

 ボルシアMGはビルドアップの際、必ずと言っていい程、両CBがペナルティエリア幅まで開きます。
 通常の相手であれば、図Ⅲの様に開くことで相手CFを引きつけることが出来、ボランチへのパスコースが出来る仕組みとなっているのですが、バイエルンはマンツーマンでプレスを掛けてくるため、ボランチへのボールも狙われてしまっています。
 そのため、後ろで何本かパスを繋いだ後、苦しくなってロングボールを蹴り、バイエルンに回収されるという悪循環に陥っていました。

マンツーマンプレスの攻略法

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