JAEAの先輩職員をご紹介!(技術職)
栗原 寿幸
核不拡散・核セキュリティ総合支援センター CTBT技術協力室
2021年度入社。核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN) CTBT技術協力室に配属。包括的核実験禁止条約(CTBT)に係る放射性核種監視観測所、公認実験施設の運用に従事。
茨城の住みやすさに魅了されて
なるべく茨城から出たくない。大学進学を機に茨城へ移り住み5年弱、就活生時代の私が考える就職先選びの条件の1つでした。千葉最南端の田舎町で生まれ育った私は東京や大都市での都会的な生活が苦手で、特に人込みや満員の電車が苦手でした。かと言って、生まれ育った町はあまりにも何もなく不便で、将来は田舎でも都会でもないところで過ごしたいと考えていました。
大学院では光合成細菌の光捕集タンパク質複合体の構造解析について研究していたため、最初は生化学分野の企業を考えていましたが、大学院時代に参加したSPring-8夏の学校、大学院の研究でX線結晶構造解析をするために訪れたKEKの放射光実験施設、大学院の放射線実習をJAEAで実施した経験から、加速器、照射施設や原子力の分野に興味を持つようになりました。これらの中から大学院時代の研究と少しでも関りがあり、なおかつ茨城から出ないで済む所を、ということで、光合成と原子力は大きく括れば同じエネルギー分野だなと大胆なこじ付けからJAEAの就活に臨みました。
もう一つ、JAEAにエントリーする上で考えていた条件としては国際的に活躍できる仕事がしたいというものがありました。JAEAの就活の際には様々な研究や技術の分野からエントリー先を選ぶこととなります。その中から、説明会を通して、最も国際協力を前面に押し出していた核不拡散・核セキュリティに関する業務を第一志望にエントリーし、現在の部署に配属されました。
特に国際機関との繋がりが深い、JAEAの中でも珍しい仕事
CTBT検証体制の国際監視制度(IMS)では、89カ国が運用する321カ所の監視観測所(地震波180、水中音波11、微気圧振動60、放射性核種80カ所)と、放射性核種観測所で捕集された試料の解析を行う16カ所の放射性核種監視実験施設による実験的核爆発の検知を目的としたネットワークを設置しています。私は日本に設置されている沖縄と高崎の放射性核種監視観測所の運用と、東海村の放射性核種監視実験施設での解析業務に従事しています。また、IMS施設で得られたデータの集積と解析を目的としたCTBTOの国際データセンター(IDC)と協力し、放射性核種データの分析を実施する日本の国内データセンター(NDC-2)のメンバーとして、粒子観測所のIMSデータの分析を実施しています。
その他に、CTBTOが条約発効後に実施できる現地査察活動(OSI)において、発効後の査察官向けトレーニングの内容を精査するために、代用査察官として模擬トレーニングに参加し、トレーニング内容の評価を行っています。CTBTOは代用査察官からのフィードバックを基に、条約発効後に実施される査察官向けトレーニングを再構築します。
JAEAは国内外の研究機関等と深い繋がりがありますが、核不拡散・核セキュリティ総合支援センターは、特に外国機関との繋がりが濃く、JAEAの中では少し珍しいセンターだと言えると思います。国際的に活躍出来る人材にならなければいけないというのはプレッシャーもかかりますが、非常にやりがいのある仕事だと思っています。
不安を和らげてくれたのは手厚い教育制度
私がJAEAに入るうえで唯一?不安だったことが、原子力に関する知識をあまり持っていなかったことです。生化学の分野で放射線を使うようなことはほとんどなかったため、急に原子力の現場で働くことが不安でした。しかし、入ってみて驚いたことに、JAEAは職員への様々な教育を実施しているということです。これは、いわゆる業務を教える(引継ぎ?)やOJTだけの話でなく、放射線計測に関して数日間実施される講義や実習、資格取得のための講義から、応急救護に関する講座まで、希望した人が参加できる教育がたくさんあります。私は放射線計測実習に参加したことで、放射線や検出器に関する基礎的な知識や技術について改めて学ぶことができ、不安が少し軽くなりました。
専攻は必ずしも役に立たなくていい
業務を遂行する上で、理系の学生として物理や化学の講義で齧った知識は多少役に立つこともあります。しかしながら、大学3年後期の研究室配属以降に培った知識はある意味では(特定の分野にのみ)偏った知識です。残念なことに、生化学の研究室で私が培った破砕した光合成細菌の溶液から特定のタンパク質のみ分離して結晶化する知識は、今のところあまり業務を遂行する上で役に立ったことはありません。
ただし、このことに落胆しているわけではなく、むしろ未知の知識を学ぶことに楽しみを覚えています。原子力専攻をもつ大学はまだ少ないですし、学生時代に核不拡散・核セキュリティについて専門的に学んだというレアな人材はなかなかいないでしょう。原子力分野の面白いところは、物・化・生・地の領域、もっと言うと理系や文系の垣根を越えて、様々な分野から志を持った人々が集まり、それぞれの視点からの考えをぶつけ合い、そこから生じる化学反応にあると思っています。
文字だけでなく肌で感じた情報を大切に
私は担当教授が他大学へ就職が決まったことにより、大学学部の研究室で大学院進学をすることができませんでした。同大学の他の研究室へと進学したのですが、学部と大学院で研究内容が変わり、修論発表までの約1年半で研究の貯金が無い状態から成果を出す必要がありました。2、3日車で仮眠を取りながら家に帰らず研究に没頭することもざらにありました。そんな中で就活にまでなかなか意識が行かず、インターンや実習にはほとんど参加できていませんでした。
就活は情報戦だと思います。そして、ネットや就活サイトを覗いて情報を集めることは誰でもできますが、インターンや実習に参加して企業の雰囲気を肌で感じること以上に有用な情報はないと思います。今ではそう思いますが、自分では実践できていませんでした。これを読んでいる学生の皆様には、まだ時間とタイミングがあれば、ぜひともそういうものに参加していただき、自分の肌で感じた情報を基に就活に励んでいただきたいと思います。