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「共創なんて生ぬるいんだよ」18歳定年法人代表の葛藤と絶望 川村賢人#1
ほんの少しだけ変わった17歳。
中学まで青森県の田舎で育ったのに、今は何故か東京で一般社団法人の代表をやっている。
それも、自分が設立した法人ではない。
そんな彼には抑えきれないほどの葛藤があった。
ー 社会との葛藤
ー 大人との葛藤
ー 自分との葛藤
赤裸々に語る彼の姿は、まったくもってキラキラしていない。
生き生きもしていない。
悪い意味で17歳には見えない。
でも、なにかを起こしそうな予感がほんの少しだけする。ほんの少しだけ。
ジャドーが話を聞いてみたい若者を取材する『今ドキの若いモンたち』
一人目は、一般社団法人Sustainable Game*¹代表の川村賢人さん(17)。高校入学を機に上京し、2022年6月より、一般社団法人Sustainable Game*¹の代表理事を同法人創業者の山口由人さんより引き継いでいます。
よくいる「高校生社長」なんかとはすべてが真逆な人でした。
いやー、初回からなかなか緊張感があるインタビューでしたよ。
*¹ 一般社団法人Sustainable Game
企業やNPO、自治体と連携し、社会問題解決に向けた社会共創の場の創出に向けて活動する中高生による一般社団法人。主な活動として、街を歩きながら課題を発見する教育プログラム「課題発見DAY」の主催、ソーシャルグッドなリアリティ番組「SPINZ」の企画・運営、社会問題を解決したい未成年が共創したい企業と出会えるプラットフォーム「Flare」の運営が挙げられる。未成年と企業による共創プロジェクトの支援等の事業活動を行い、40社以上の企業との実績を持つ。定年は18歳。
おい、大人。本気でやれよ。
池田(インタビュアー):今日はよろしくお願いします。
川村賢人さん(以下、川村(敬称略)):こちらこそ、よろしくお願いします。
池田:さっそくお聞きしたいのですが、なぜこのインタビューを受けていただけたんですか?あまりメディアに出るのはお好きじゃないと聞いたのですが。
川村:いや、別に取材を受けることが嫌いなわけではないですよ。たしかに、ほとんどのメディアはセンスないことしかしないなとは思っていますけれど。
池田:(初っ端からフルスロットルだ)
川村:このインタビューを受けさせていただいたのは、タイミングが良かったから、ですかね。
池田:タイミングが良かった、とは?
川村:いま、どうしても…言いたいことがあって。Twitterで書くには文字数が足りない、かといって自分でnoteを書くのは小ぎれいになってしまう。そんなときに池田さんから「Sustainable Game代表としての今までの葛藤や、世間に向けて言いたいことを取材形式で記事にしないか」と提案を受けて。これはやるしかないなと。
池田:ほう。それで、誰にどんなことを言いたいんですか?
川村:「Z世代ならばこうである」という、くだらないステレオタイプを持ちながら、惰性で僕らと仕事をしようとしてくる大人が多すぎる、ということです。
池田:なるほど。怒りを伝えたいと。
川村:怒り、というより諦めですね。いや、諦めというよりも絶望に近い。
池田:何かきっかけがあったんですか?
川村:先日、某テレビ局から、ある番組への出演依頼がありまして。詳細は言えないのですが、若い世代向けの深夜番組でCO2の排出量を減らすためにはどうするかを実際に検証しながら考える、みたいな企画で。
池田:一見、Sustainable Game(以下、SG)の事業内容とマッチしている気もしますが…
川村:いや、それこそステレオタイプでしょ!
「未成年のための会社=気候変動や環境問題に関心がある」から、テキトーに「Z世代」とか「CO2削減」みたいなワードを並べた企画を作れば乗ってくるだろ、みたいな。今回だけではないんです。過去にもいろんな企業から似たような依頼があって。
ほんとに浅はかだし、舐めんなよって思います。
池田:す、すみません。つまり、Z世代という括りで見るのではなく、個人の俺たちのことを理解しようとしてくれよってことですか?
川村:いや、そんな傲慢なことを言いたいんじゃありません。
正直言って、テキトーな企画書を僕たちが受け取るのは、ある意味しょうがないと思うんです。特に大企業だと上司から言われたことをやりたくなくてもやらなきゃいけないから。少し取り繕ってそれっぽいものを出してくる大人が多いのはごく自然なことだなと。
ただ、それでも惰性で作られた企画を送られてくるのは、精神的にきます。
池田:なるほど。川村さんの今の気持ちを短く言うと「仕事を舐めるな!」ということですか?
川村:たしかに。絶望より、怒りとして僕の感情を表すとそうなりますね。おい、大人。本気でやれよ。と。
まだ親の金で養ってもらっている17歳が何言ってんだと思われるかもしれませんが、一法人の代表として言うなら、まさしくそういうことです。現在SGには5人のメンバーがいるのですが、彼らに給料はでていないんです。オフラインイベントのときに交通費が出るくらいです。
池田:そうなんですね。
川村:でも、会社としてはお金をもらって仕事をしている。メンバーはタダ働きにもかかわらず。もちろん彼らは、お金ではない、貴重な経験なんかを得ているでしょう。でも、そんな彼らに対して最低限の敬意を払うためにも、惰性で作られた企画に乗るわけにはいかない。
池田:たしかに。
批判されなきゃ、意味がない。
池田:本気の人や企業は、どのように見極めるんですか?
川村:うーん。見極め方とかあるんですかね。その人が本気で言っているのかどうかなんて企画書を見ればわかると思います。CO2削減って書いてあるけれど、別にしたいと思ってないでしょ、本当に地球環境が心配ならそんな企画は作らないだろ、みたいに思うことがほとんどですが。
池田:なるほど。では、いかにもな言葉、流行りの言葉を使ってくる人は本気じゃない人が多い、と。
川村:はい。そうだと思います。本気じゃないか、ただの馬鹿か。
池田:ただの馬鹿…
では逆に、本気の人はどうやって見極めるんですか?
川村:それは、批判してくる人ですね。あ、だからさっきの「本気じゃない人の見極め方」に対する回答は批判してこない人になりますね。
池田:ほう。たしかに批判してくる時点でそのトピックに対して深く考えている可能性が高いですよね。
川村:ただ、この批判してくれる大人はあまり多くないんですよね。今のSGにかかわってくださっている大人はほとんどが批判をしてくださる方々ばかりですが。
池田:それは恵まれていますね。
川村:本当にそうです。まあ、だから、このインタビューを記事にするとき、タイトルにでも「18歳定年法人」って入れてくださいよ。それを見て「おもしろい!」なんて思った人とは仕事はできないな、と思います。逆に「いや、現実的に考えて厳しいんじゃない?」とか批判的に捉えてくれた人がいたら、本当にうれしい。僕はそういう人たちと仕事がしたい。批判されなきゃ、意味がない。
池田:(ちゃんと入れときました!)
共創なんて生ぬるいこといつまで言ってりゃいいんだよ
川村:でも、偉そうなこと言っていながら、僕は自分に対して一番不快感を覚えているんですよ。
池田:え、社会や大人にではなく?
川村:自分に。
池田:というと?
川村:SGのWebサイトや紹介文には何回も「共創」って言葉が使われていますよね。でも、僕にはこの意味が分からない。正確には、共創なんて生ぬるいこといつまで言ってりゃいいんだよって思っています。
競う方の競争をするからこそ自然に共創している状態になるんじゃないですかね。だから、共創をテーマみたいにするのは生ぬるい。
池田:そんな気持ちでSGの代表をやっているのが不快だということですか?
川村:いや、これを誰にも言えていない状況が不快なんです。
池田:それは、なぜ言えないんでしょうか。
川村:やっぱり怖いからです。これを言っちゃうことでいろいろなものを失ってしまうのではないかと思って怖いんです。
池田:でも、それを言わないことは、さっき川村さんが批判していた「本気じゃない大人」と同じく、本気じゃない状況ではないですか。
川村:まさしく、そうです。完全に自分のことを棚に上げている。だから自分に対して一番不快感を覚えているんです。これは本当に一刻も早くどうにかしないといけないと思っています。
池田:その一歩がこのインタビューに応じるということだったのでしょうか。
川村:そう、かもしれません。
#2につづく
#1は2023年4月のインタビューをもとに作成しています。#2からはその2か月後(2023年6月)のインタビューをもとに作成しています。心境の変化などがあり大変興味深いです。公開をお楽しみに!
取材・テキスト/池田