質問「どんな破滅型の作家がいましたか?」に対しての回答 note投稿6回目
今回もQuoraでの自己回答の転載です。
「小説・文芸」関連の回答って人気がないのか、Quoraでも閲覧数が伸びないのですが、それでもこの回答は、個人的にも気に入っているものです。
果たしてnoteではどうなのでしょうか?
Quoraで僕のアカウントに届いた質問は「どんな破滅型の作家がいましたか?」というものです。
以下は僕の作成した回答内容です。
『質問ありがとうございます。
映画『人間失格 太宰治と3人の女たち」主題歌入り本予告
※太宰治が本当にこういう人間だったかどうかは諸説あります。
「太宰治」の「人間失格」に出てくるような、主人公こそ「破滅型」の典型です。
しかしそんな「ダメ人間」ではなく、「不幸の連続」みたいな数奇な人生を送った不幸な作家をご紹介します。
ハーマン・メルヴィル(Herman Melville)1819~1891
小説『白鯨』の作者です。
1819年 ニューヨークの食料品輸入商の三男として生まれる。
1832年(13歳)父が多額の借金を残し死亡。学校を中退して働き始める。
1835年(16歳)で教員の資格を取るが、債権者に追われて夜逃げ。
1839年 船乗りになる。
『無風状態』はっぴいえんど
※本文の内容にあまり関係ないのですが、この曲の歌詞に『エイハブ船長』(白鯨の登場人物)が出てくるので。
ここからがすごい。↓
1840年 捕鯨船アクシュネット号の乗組員となり、翌年太平洋へ航海。その中で厳し過ぎる環境に嫌気が差す。
1842年 マルケサス諸島のヌク・ヒバ島で仲間と脱走、先住民タイピー族に出会う。
8月にオーストラリアの捕鯨船ルーシー・アン号に救われるが、タヒチ島で乗組員の暴動に巻き込まれイギリス領事館に逮捕される。
10月にはここからも脱走しエイメオ島(現在のモーレア島)に隠れた。
11月 アメリカ捕鯨船チャールズ・アンド・ヘンリー号に救われる。
この波乱万丈な航海は、
1843年4月ハワイに着くまで続き、その後の彼の作品に大きな影を落す。
1843年8月 ハワイのホノルル滞在中に、アメリカ海軍フリゲート艦ユナイテッド・ステーツ号の水兵に採用される。
1844年 ようやくランシンバーグに帰郷する。
約4年間の留守中に、実家は家計もよくなり兄弟も独立していた。
暮らしに余裕の出来たハーマンは文筆業で身を立てようと、当時流行していた海洋小説(上のリンクが19世紀海洋小説の代表作)に手を染め、マルケサス諸島の体験をもとに、
1845年 処女作『タイピー』を発表。
1851年 代表作『白鯨』を発表するなど精力的に創作活動を続けるが、諸作品はことごとく評価されず、文筆で身を立てることは出来なかった。
その後、外国の領事館や海軍に職を求めるが雇い口は見つからず、生活に追われながら細々と小説を発表する状態が続く。
1866年12月 47歳にして妻の親戚の伝手でようやくニューヨーク税関の検査係の職を得るが、その後も不幸は続く。
4人の子供の内、長男マルコムのピストル自殺、自宅の焼失、次男スタンウィクスの出奔(1886年サンフランシスコで客死)など。
1890年 傑作『ビリー・バッド』完成。
翌1891年、死去。享年72歳。
難解な作風のため、一部の愛好者を除いて無視され続けていたメルヴィルの作品。
再評価というよりもやっと脚光を浴びたのが、死後30年以上経過してから。
1921年に再評価の動きがおこる。
この年、レイモンド・ウィーバ著『ハーマン・メルヴィル 航海者にして神秘家』が発表され、メルヴィルの評価は上昇し、『メルヴィル著作集』全16巻の刊行。
Moby Dick 1956 Trailer | Gregory Peck
映画「白鯨」Moby Dick.1956 監督 ジョン・ヒューストン 出演 グレゴリー・ペック、リチャード・ベースハート、オーソン・ウェルズ他
※この作品は3度目の映画化で、原作に忠実に作られたが、前2作に比べて興行的に大失敗となった。暗く難解な原作を再現したため、観客が作品のストーリーや雰囲気に付いて行けなかったのが敗因と言われる。しかしその後、『ジョーズ』などの海洋パニック映画の原点として再評価された。権利関連は主演のペックが所有していた。
『白鯨』はサマセット・モームの『世界の十大小説』に入っている。
『白鯨』がモームの世界の十大小説に選ばれたことや、『白鯨』の数回の映画化などの影響で、メルヴィルの存命中に考えられなかったことに、
今やアメリカを代表する文学者として世界中に知られるようになった。
ちなみに『白鯨』の登場人物、「スターバック」一等航海士の名前が、
おなじみ「スターバックスコーヒー」の名前の由来となりました。
それと余談ながら、グレゴリー・ペック主演の映画『白鯨』(1956年)は、ペック主演のほか、監督 ジョン・ヒューストン、脚本はヒューストン監督とSF作家として高名なレイ・ブラッドベリ、出演者にはオーソン・ウェルズがいたりと、個人的に見所の多い作品です。』
回答は以上です。
回答投稿日 2020/10/04 現在(2021/05/18)の閲覧数 1,433 高評価 40
※Quoraでこの回答にコメントしてくださったあるユーザーさんが、のちにtwitter上でこの回答をシェアしていたのを見て嬉しかったのを覚えています。