自分を愛おしくさせる方法
だいぶ前になるが、あるお宅に行ってHPの更新作業をしていたことがあった。
応対してくれるのは、北欧系の美人な奥さんだ。
たまに気が向くとコーヒーを入れてくれる。
砂糖とミルクもたっぷり入れてくれる。
それは目をつぶろう。
5年に1度くらいは、無条件に砂糖とミルク入りのコーヒーを出してくれる人にぶちあたる。
わたしがパソコンの前で作業をしていると視界のはじっこに、キッチンでコーヒーを入れている奥さんの姿が見えた。
次の瞬間、彼女はカップを持ち上げ、コクリと飲む。
ウンとうなづく。
(あのぉ、味加減は納得なさったようですが、
今、味見をしたコーヒーはわたしに出そうとしているものでしょうか?)
やがて、奥さんがきちんと味見をしてくれたコーヒーはわたしの前に出された。
これは彼女の国の文化なのか。ならば目をつぶろう。
ある日のことわたしが作業を終えて帰ろうとすると
訴えかけるような大きな瞳で奥さんは、
「コンド イツ クル?」と言う。
きゅぅ~~ん
(なんだ、この気持ちは・・)
同性であるにも関わらず、
急激に奥さんへの愛おしい気持ちがこみあげ、
つい、
「あしたまた来るから」と言いそうになった。
「コンド イツ クル?」
たどたどしい独特のイントネーションで発せられる言葉には、
媚薬が含まれているらしい。
外国人ホステスと恋に落ちるお父さんの心理にはじめて共感した。
と、同時に、こんなに一瞬にして愛しさの感情が生まれるなら
(これは使える)と思った。
でも、今のところ使ってみたい相手もいないので、
部屋でひとりつぶやいてみる。「コンド イツ クル?」
いつの間にか、ゼンジー北京になっている自分に気づく。