「参加者が2人しかいない研修」をどう運営するか?~タイ起業10年記⑪
師匠の話をもう少しだけ続けたい。
私が彼から学んだことはあまりに多いのだ。
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研修・セミナー事業をやっているものにとっての恐怖の一つが「参加者が集まらないことへの恐れ」である。人が少ないと寂しい雰囲気になってしまうし、自社主催の研修であれば会社のイメージにも影響しかねない。
私の師匠はそんな修羅場を何度もくぐってきた。
参加者が「たった2人」の3日間の研修を運営したこともあるそうだ。
「研修の朝、参加者が会場のドアをあけると、椅子が2つ並んでいるだけ。参加者は驚くだろう。その際にどんな声かけるか?」と師匠は私に尋ねた。
私だったら「今回は皆さん忙しい時期で、、、」などと、つい言い訳をしてしまうだろう。
あるいは、ひょっとしたら研修を中止にしてしまうかもしれない。
しかし師匠は言った。
「元気よく満面の笑みで、”おはようございます!”と言うんだ。
すると、参加者は、”今日は2人しかいないんですか?”と聞くだろう。
そこに、”そうです!さぁ、こちらへどうぞ!”と自信を持って言えなきゃダメだ。」
主催者が不安の顔を少しでものぞかせると、参加者は不安になってしまう。だから自分を信じて、堂々と場を始めなさい。
彼はそう言うのだった。
師匠の研修では、グループにわかれて行うアクティビティがある。
個室に分かれてディスカッションをするのだが、2人のクラスを2グループに分けると、それぞれのグループは「1人」になってしまう。
というか、それはすでにグループですらない。
だが、師匠はそれをモノともせず運営したという。
「今から、独り言を言ってください!」
参加者は、課題に対する考えをぶつぶつと声に出しながら、ワークに取り組んだという。
その結果、問題なくアクティビティは完了したそうだ。
「場に責任を持つこと」とはどういうことか。
それを師匠は常に教えてくれた。
どんな状況であろうと、参加者にとっては重要な時間だ。その場を引き受けて、意味のある時間にしてお返しする。
そこに全身全霊でぶつかる覚悟、そして勇気の大切さを身をもって教えて頂いた。
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師匠は、経営者としてのマインドも沢山教えてくれた。
会社を初めてしばらくの間、もがき苦しむ私が彼からもらった言葉はたくさんある。ここに主なものを紹介しておきたい。
などなど。
根性論に聞こえるだろうか?
自分はこれらの言葉は本質を突いていると思った。
現実を評価し、反応するのは常に自分。人間はものの見方次第でプラスにもマイナスにもなる。だから常に自分自身のものの見方を整えないといけない。そういう姿勢を常に学ばせてくれた。
こうした師匠との問答の中で、自分の経営者としての「軸」のようなものが出来上がっていった。
彼の存在が無ければ、私は会社を10年続けてこられなかっただろう。
(⑫につづく)