タイ人と面接しまくった話~タイ起業10年記⑦
事業をスタートしてまず重視したのは「採用」だ。
「早くチームを持て」という先輩のアドバイスに従い、稼いだお金は迷わず人材につぎ込もうと思った。何より、自分は人事屋なのでタイの人材マーケットに精通していなくては話にならない。
すぐに広告を出して、応募を集めた。
幸い、タイはジョブ掲示板に広告を出せば、とにかく応募は来る。大半は箸にも棒にもかからない人材だったりするが、100通、200通と見ていけば中には「当たり」がある。そこに行きつくまでとにかく履歴書を見まくり、面接をしまくった。
この「面接をたくさんこなす」というプロセスは新しい市場にチャレンジする自分には本当に良い勉強になった。
自分の会社には、どういうレベルの人材が集まるのか。
優秀な人材というのは、どれくらいの給与水準なのか。
大学のカラーにどんな違いがあるのか。
履歴書はどれくらい"盛られて"いて、それをどう見抜くのか。
こういうのは、「数」をこなさないと感覚がつかめてこない。
未体験の市場に挑戦するとき、営業であればまずはお客さんをたくさん回ると思うが、採用も同じだ。土地勘を掴むために、自分で沢山人材に会うというプロセスは絶対に経験した方が良い。
人材エージェントさんを使えば採用は早いが、エージェントさんのフィルターを通した人材しかわからない。フィルタリングを自分でやらないと、お勧めされた人が上位何%の人材なのか、というのが体感的にわからないのだ。
だから自分は、タイに来たばかりの人には、エージェントさんに依頼するのと並行で良いので、「自分でも100人くらい面接しましょう」とお勧めする。
人事で一番大事なのは、採用である。
採用を間違えてしまうと、どれだけ後から良い教育をしても無意味だ。成人した人間を教育で変えるのは限界があると僕は思っている。
ビジネス教育に携わる人がそんなことを言うのか、と思われるかもしれない。でも、教育者だからこそ教育の使い方を分かっていないといけない。
「誰もが頑張れば必ず成長する」という性善説の人間観を僕は持っている。
ちゃんと教育をすれば、「100」の能力の人間を105、110に成長させることは必ずできるし、それはとても価値があることだ。
一方で、「100」の能力の人材が「200」になる確率は高くない。
人間のポテンシャルはそれぞれ違うし、成長スピードもまた違うからだ。
結果に責任を追う経営者なのだから、ドライな目を持たなくてはいけない。結果が出てないのに「今いるみんなで頑張ろう」というのはナイーブすぎる。
「一人一人の成長を信じること」と、「絶対的なポテンシャルが高い人材を探すこと」。この2つは併存するのだ。
特に、スピードが求められるベンチャーが意識すべきは「教育よりも採用」である。教育をやっている僕が言うのだから、信用して欲しい。(と、いつも言っている。)
・・・そんな感じで必死で採用活動を初めて、自分としては「これは凄いメンバーだ」と思える人材が何人か入ってくれた。
彼らに出会えて、これなら勝負できるという確信を掴んだのだ。
(つづく)
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ちなみにタイの採用で意識したいことは以前こちらのブログにまとめました。