「感謝と貢献」。タイのスーパースター、ガンちゃんから学んだこと~タイ起業10年記⑫
私がこの10年間でお世話になった恩人を二人挙げろ、と言われたら間違いなく前回書いた師匠の鶴田先生と、ガンちゃんを選ぶだろう。
ガンちゃんはタイにいる人であれば知らない人はいない有名人だ。
流暢な日本語を駆使し、通訳や司会を務めて多くの人を魅了している。
起業する際に、ガンちゃんは僕の会社の経営パートナーになってくれた。
タイ人無くしては経営ができないタイという国において、これ以上の強力な味方はいなかった。
起業してまもなく、僕は師匠の鶴田先生のセミナーに、彼を誘った。
二つ返事で彼はタイからわざわざ日本まで一緒に来てくれた。
とはいえ、その時の僕はまだ師匠のことを良く知らなかったので、得体の知れない海外のセミナーに誘ってしまって果たして大丈夫だったかな、と内心実は不安だった。
セミナー会場のドアを開ける直前に、僕は彼に「・・もしつまんなかったらゴメンね」と期待値調整をした。そのことは後から何度もネタにされた(笑)
結果として、そこでの共通体験が持てたことは素晴らしかった。
セミナーの体験から、僕らはある「合言葉」を持ち帰った。
その言葉はここでは明かせないのだが、要するに「何があっても信頼しあおう」ということを意味する、そんな言葉だ。
問題にぶつかるたびに、共通体験を思い出し、その「合言葉」を使って難局を乗り切ってきたのだ。
ガンちゃんは「感謝と貢献」というキーワードをよく使う。
僕はその姿から、「軸を持って仕事をするとはどういうことか」をいつも教わっている。
と、意思決定の際にその言葉を使う。
指針となるアイデンティティが明確になっていると、意思決定が早い。そして迷いが少なくなる。
そういう姿をいつも見せてもらっていて、とても尊敬していた。
しかし、僕とガンちゃんは一度袂を分かったことがある。
経営方針の違いでちょっとしたいざこざになり、それまで一緒に使っていたオフィスから僕らのチームは出ることになった。また、それ以来気まずくなって、しばらく連絡を取らなくなった。
ただ、自分の中では「年に1回は連絡を取ろう」と決めていた。
「何となく会いたくないな」と思った時にこそ、勇気を出して会いに行くというのは僕のモットーでもある。
このままだと今年は会わずに終わっちゃうな、、という時も、「少しだけお茶をしないか」と年末ギリギリに呼びだして、近況報告をした。
無味乾燥な会話になったこともあったかもしれないが、それでも関係性を切らさずにいることが大事だと思った。
繋がってさえいれば、きっとどこかで、何かがまた生まれる。
そう自分に言い聞かせられたのは、あの「合言葉」が自分の中にあったからだ。
そんな僕らは去年、オンラインセミナーでひさびさに場を共にした。
一緒に何かの場を運営するのは、ひょっとしたら7年ぶりくらいだったかもしれない。
ともにタイで仕事をし、志を共にするパートナーとの仕事は、空白期間が問題にならないくらいスムーズで、そして楽しかった。
また時を経て互いに力を溜めた上でのコラボレーションは、以前よりずっと大きなインパクトが出せる手ごたえもあった。
彼から学んだ「感謝と貢献」は、今では自分のアイデンティティの一部にもなっている。
(⑬に続く)