「自分を信じろ。」すべてを変えた師匠との出会い~タイ起業10年記⑩
起業してまもなく、「おススメの人物がいます」と知人から勧められ、会いに行った人物がいる。それが鶴田哲生先生だ。
彼との出会いが私の人生観を大きく変え、その後の起業家人生を支えてくれたと言っても過言ではない。
鶴田先生はベテランの研修講師で、長年にわたって想いを込めて研修事業をやってこられた方だ。
現在既に70歳を超えておられ、ご体調の問題もあり昨年会社をたたまれたが、今もお元気でいらっしゃる。私がお会いした時は、65歳でありながら物凄くエネルギッシュに研修講師をされていた。
紹介してくれた人物を信頼していたので、直感的に彼の研修に申込み、タイ人パートナーと一緒に日本まで飛行機に乗って受講してきた。
そこでの衝撃体験は今でも忘れられない。その学びは10年経ってもなお残っていて、タイ人パートナーとの共通言語になっている。
私の研修業界歴も長くなるが、10年以上たっても語り草になる研修というのはなかなか無い。
研修の内容をつぶさに説明することはできないのだが、彼の凄さは研修内容よりも研修講師としてのスタンスにある。「人前に立つとはどういうことか」を彼は僕に叩き込んでくれた。
彼のメッセージをいくつか紹介する。
他にも言い尽くせないほどのメッセージがあるが、彼の言葉はいつも人生の本質を表していた。私は経営者としてのあり方、研修ファシリテーターとしてのあり方を彼から叩き込まれたと思っている。
特に覚えているのが、彼が私をチームを救ってくれた時のことだ。
6-7年前のことだが、タイの組織があまりうまく行かなくなった時があった。その時に、わざわざタイに来ていただいて、社内で研修をやってくださった。その結果、たった1日の研修で自分のチームがよみがえったのだ。
どんな設計にしようかと事前に相談すると、彼は「手法は問題じゃない。想いを分かち合うんだ」と私に言った。そして、シンプルに一人一人が前に出て話すというだけのアクティビティにほとんどの時間を使った。すると、一人一人が涙ながらに話し、その場はどんどん温かく感動的な場に変わっていった。そして僕のチームの雰囲気は大きく変わったのだ。
「ただ一人ずつ順番に話すだけ。それでチームが強くなる」。
そんなことを言われても、普通はそんな研修は誰も買ってくれないだろう。だが、実際に僕の目の前でそれは起きた。それを作ったのは、進行役としての鶴田先生の「本気の佇まい」だ。その場にコミットし、命がけで進行する。その覚悟と迫力、そして本人のさらけ出しが、人の心を開かせたのだ。
研修業界は、どちらかというと「トレーニングは属人的であってはいけない」という思想が強い。そういう常識の中で生きてきた自分からすると、鶴田先生からは真逆のものを見せつけられ続けた。「再現性なんてありえない」というそのスタンスは、僕の価値観を完全に破壊した。
再現性を持たせるというのは、提供側のエゴなのだ。
以来、僕は場を進行するときは「その場にコミットしているか?」ということを常に自分に問いかけている。まだまだ彼のように出来ているとは思わないが、未熟な自分を少しでも高めていくのにその自問は役立っている。
僕は彼からプログラムを受け継ぎ、それは「リーダーシップの旅」というプログラムに昇華し、数年間にわたって継続している。ずっとタイで行ってきたが、今回初めて東京でも行うことができた。
これからも色々なところで実施していきたいと思っているが、それはビジネスの為というよりは、ひとえに鶴田先生への恩義を返すためだ。お世辞にも有名になったとは言えない先生だが、一部に熱烈なファンを作った方で、僕もその一人だ。
人生の本質を常に体現し続けた彼のメッセージを私は伝え続けていきたい。
(つづく)
追伸:
鶴田先生は以前動画にも出て頂いた。5本ほどの動画だが、よかったら見て頂きたい。