【終活110番015】艱難辛苦の「2・5・8」
改めて、親子三世代の関係性を見てみましょう。
話を分かりやすくするために、サザエさん一家で考えてみます。
「タラちゃん・サザエさん・波平&フネ」の三世代です。
ちなみに、ちびまる子ちゃんの「さくら家」でいうと、「ちびまる子・お父さんお母さん・おじいちゃんおばあちゃん」。クレヨンしんちゃんの「野原家」の場合、私の記憶では祖父母はあまり登場してこなかったように思います。つまり、しんのすけの両親・ひろし&みさえは、実家とは物理的にも心理的にも距離が離れていたのかもしれません。子ども向けの番組としてはめずらしいのではないでしょうか。
さて、テレビの中のサザエさん一家は、すべてのキャラクターが歳をとりません。
ですから、何年たとうがハッピーな状況が続きます。
タラちゃんのみならず、ワカメちゃんもカツオも永遠に小学生です。思春期も受験も就職も結婚もありません。タラちゃんの父親であるマスオさん。彼だって、リストラされることもないし、定年退職することもありません。祖父母である波編もフネも、介護が必要になるなんてありえないし、いついつまでも元気な暮らしが続いていきます。
言ってみれば、これこそが、親子三世代が「10歳・40歳・70歳」までの世界です。
でも、これが現実世界であればそうはいきません。
タラちゃんが小学校を卒業するまでには、ワカメちゃんもカツオも受験があります。部活をはじめとするさまざまな交友関係の中で、恋愛もするでしょう。失恋したり、友だちとの仲たがいもあり、挫折を味わうこともあるでしょう。波平もマスオも仕事がなくなり、サザエさんもパートに出なければならなくなります。波平とフネは次第に心身が衰えて、いよいよ介護の心配が出てきます。当然、認知症やら感染症やらのリスクもある。無料がん検診を受けたら、本人は痛くも痒くもないのに、がんの摘出手術なんてオファーをされることも。
そんな状況に陥るタイミングが、親子三世代が「20歳・50歳・80歳」となるころです。
波平やフネにもしものことがあれば、サザエ・カツオ・ワカメには相続争いが起きるかもしれません。マスオに加え、カツオとワカメの配偶者の思惑も入り混じって、遺産分割協議は紛糾するかもしれません。波平とフネが何もそなえていなければ…。
こういった状況変化は、この世に生まれたものならば、100%確実に通らねばならない道です。理屈では、だれだってわかるはずです。にもかかわらず、ほぼすべての波平&フネはそなえていない。あるいは、まちがったそなえ方をしてしまうのです。サザエとマスオだって同様です。そして、そなえておかなかったことの悲劇は、残された子どもたちに降りかかるということ。私たちは誰しも、それを肝に銘じておく必要があります。