【終活110番045】財産承継の鉄則
シニアの相談を受けていて実感するのは、親子関係について悩んでいる老親が多いということ。自分の死を意識するようになったときに、感覚的に7割の人が、「いま一度、昔のようにわが子との良好な関係を取り戻したい」と懇願するケースに出くわします。逆にいうと、歳を重ねるに連れ、親子関係が悪化してしまうことがとても多いということです。
親子(身内)間トラブルの元凶は、突き詰めれば、多かれ少なかれおカネの問題です。親は老いて尚おカネに執着して手放さず、一方で介護などのサポートを子に期待します。子にしてみれば、たまったものではありません。そして親は、そんな子どもを「冷たい」と嘆くのです。でも、何とかしてあげたい気持ちはあるものの、負担だけが上乗せされて身動きがとれなくなってしまうのは困る…というのが子ども側の言い分です。
過酷な現代を生きる子どもたちに、金銭的な裏づけを示すこともなしに、「親の面倒を子が見るのは当たり前」…みたいな感覚で接していると、だんだんと雲行きがおかしくなっていきます。老老地獄への扉がちらついてきます。おカネの話抜きにして面倒をみてもらうことなど甘い夢。砂の城にすぎません。これが真実です。
ここはむしろ、逆転の発想をしてみてはどうでしょうか。つまり、子どもに対して、どれくらいのものを残してあげられるのか、残してあげられないのか。そこのところを完全にオープンにした上で、エンディングまでの支援を依頼するのです。そうしたほうがよほど親子間の心理的距離が縮まり、子どもたちにも覚悟が定まるのではないでしょうか。
元気なうちからの財産継承は、結果的に親子間の信頼と絆を強めるものです。多くのシニアが望む、良好な親子関係を回復するためには、もっとも有効な方法と言えるかもしれません。そうすることで、子に媚びず気を遣わず、誰に負い目も引け目もない…。そんなクールな老後を実現できると思うのです。
親が元気なうちから、贈与税節税に配慮しながらおカネを徐々に子どもたちに引き継いでいく財産承継法のことを、私は『生前相続』と称しています。その目的は、①老後の良好な親子関係の維持 ②子の役割の明確化と覚悟の促し ③緊急時の子の負担軽減 ④有事の無駄な費用や税金の最小化…です。
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