終活でいちばん大切なこと
今回は、老い先にそなえるために、もっとも有効なことについて書いてみます。介護や医療のことを学習するのは面倒くさい。エンディングノートを書くのも面倒くさい。自治体に出向いてあれやこれやと相談するのも面倒くさい…。そんな人たちにはお奨めの方法です。
そもそも、やたら時間とお金をかけて、官僚たちが意図的に複雑怪奇に設計した社会保障制度を勉強してみたところで、いざという時には何の役にも立ちません。また、誰がいくら注意しようとも、振り込め詐欺の被害はいっこうに減る気配がありません。どんなに用心していた人でも、その手の輩からかかってきた電話を取ってしまったら最後、かなりの確率でダマされてしまうのです。要は、いくら学習しても用心しても、さしたる効果はありません。とても哀しくて残念なことですが、それが老いるということなのかもしれません。
なので、円滑な老後を過ごすためにも、ここは発想を変える必要があると思うのです。これまで、漠然とした老い先への不安に苛まれながらも、何ひとつ具体的なアクションをとらぬまま今日まで来てしまった人たちにとって、起死回生の老後対策になるはずです。
もう老い先にそなえるために学ばなくてもいいんだ!
老後のさまざまなリスクを限りなくゼロにする方法があるんだ!
取るべき唯一無二のアクションはこれだ!
そう快哉を叫んでいただける具体的方法論をご紹介しましょう。
それは、終活本を読み漁ったり、終活講座に通ったりするようなまどろっこしいことではありません。ズバリ、老後の伴走者を確保することです。エンディングを迎えるまでに直面するであろう老後のさまざまな問題について、いつでもなんでも気軽に相談できるパートナーを見つけて関係を構築しておくことです。これが結論です。
本気で円滑な老後を手にしようとするのであれば、50歳の大台に乗ったらすぐに、安心老後のパートナーを確保すべきです。本人や、忙しい子どもたちに代わって、いつでもなんでも気軽に相談に乗ってくれて、必要とあらば、同行・代行・請負にまで対応してくれるプロフェッショナル。そんな老い先案内人とも言うべき誰かと懇意な関係が作れたとしたら、老後のリスクは大きく減らせるはずです。
これこそが、国や子どもたちに過度に依存することなく、自分が描いた通りの生涯主役人生を全うするための切り札です。またしても継続することになった自公政権が推し進める自助社会をサバイバルしていく上で、もっとも有効なリスクヘッジの方法だと思います。
それでは、忙しい子どもたちに代わって、いつでもなんでも気軽に相談できるあなたの老後の伴走者、あるいは、安心老後のパートナーとは、果たしていったいどこの誰なのでしょうか。
ポートワシントンで長く暮らしている友人の話では、米国の富裕層シニア世帯には5人の専属顧問がいるそうです。お金のプロであるファイナンシャルプランナー。社会関係性を問題なく維持するための弁護士。健康を維持するための医者。精神的拠り所となる牧師または神父。そして最後が、日常的な困りごとに対処してくれるソーシャルワーカーです。
日本では、医療や介護が必要になると、主に医者が、多くの専門職で構成されるチームを先導するケースがほとんどです。これに対して、欧米ではチームの主導権をソーシャルワーカーが握っています。ソーシャルワーカーが患者や利用者の総合窓口であり、必要に応じて、彼らから医者や看護師等の専門職に作業を要請するという構図です。
他にも、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、ホームヘルパー。さらには、患者や利用者の生活に必要となる製品・サービスを提供する企業群までネットワークを張り巡らせて、生活の質を高める役割を果たしているそうです。
それでは、欧米のソーシャルワーカーに相当するプロが日本にいるでしょうか。真っ先に思いつくのがケアマネジャーだと思います。正式名称は介護支援専門員。2000年の介護保険スタートと同時に誕生した専門資格で、要介護者のためにどんなサービスをどれくらい提供するのが望ましいかをプランし提案し調達するのが仕事です。が、ケアマネジャーは要介護者しかサービス対象としていないので、例えば、まだ50歳代で元気な人が相談したいと思っても相手にはしてもらえません。
また、要介護度の低い人や予備軍からの相談を担う地域包括支援センターという相談窓口が、概ね中学校区にひとつあります。本来はここが拠り所となって然るべきなのですが……。機会があったら一度たずねてみてくさい。
基本的に、介護以外のことは守備範囲外だし、相談対応レベルが個々人の知識や善意に依存しているため、正直、納得感は低いです。要員不足・人材不足で頼りにならない。これが私の率直な感想です(ゴメンナサイ)。ローカルだと、地域の社会福祉協議会が休日に公民館等で開催している福祉相談会というのもあったりしますが、期待すると空しいだけかもしれません。
他にも、懇意にしている医者(かかりつけ医)がいれば、諸々の相談に乗ってくれるかもしれません。しかし、結局は生活習慣病の症状に対して薬を処方するのが医者の役目であって、その症状を引き起こした原因を見つけてくれることはないし、生活習慣病を未然に防ぐための方法について教えてくれることもない。ましてや、からだの問題以外について耳を傾けてくれるかというと、これはもう考えるまでもないでしょう。
信託銀行では積極的に資産管理や相続・遺言サービスを扱っていますが、実態は富裕層向けのサービスであり、一般大衆層が何でも相談していいかとなると、答えはNO。どうしても慇懃無礼なところがあって、富裕層でないとそうそう親身になってはもらえないと考えたほうがいいでしょう。
外資系保険会社のFPも同様ですし、弁護士はとにかく高い。司法書士という選択肢もありますが、やはり法律分野で一番リーズナブルなのは行政書士になるでしょう。フットワークも軽いし人当たりもいい場合が多いです。
なお、生命保険会社は契約者向けサービスとして、無償で24時間365日対応の電話相談を行っていますが、残念ながら総花的かつ表層的な回答がほとんどです。当然、地域に密着した情報は手に入りません。
となると、消去法で残るのが社会福祉士ということになるのですが、これについては次の記事で書いてみます……ね。