【終活110番016】わが子との別れは突然やってくる

子どもの成長とともに、親子の心の距離が離れていきます。何者も侵すことのできない絶対的な親子愛。それは、子どもの世界が親の手の中だけだった時の話です。

子どもが社会との接点を持つようになると、親の価値観だけがすべてではなくなります。学校の教師や塾の講師、クラスメイトに部活の先輩たち、もちろん、インターネットの世界も大きく影響します。こうした様々な価値観に触れる中で、私たちは取捨選択を繰り返しながら一個の人格を形成していきます。

そして、だれもが経験するように、かつてはもっとも信頼し愛していた自分の親に対して、時にネガティブな感情を抱くようになります。その感情は思春期に一気にピークを迎え、以降、親とは一線を引くようになるのです。

蜜月の親子関係は、ある日突然やってきます。それは季節の変わり目のように緩やかで優しいものではありません。そんなバリアを敷くわが子を理解できずに、親の側も戸惑うことが増えてきます。感情を表に出してしまうようなことがあると、さらに子ども側の抵抗が顕著になります。多くの場合、10歳になるかならないか。そんなタイミングで子どもは精神的自立を迎えるわけです。これが心理的レベルでの親子の別れです。

遠くの大学や会社に通ったり、結婚したり。そんな人生のビッグイベントがきっかけとなって、子どもは親と別の生活を始めるようになります。これが物理的な親子の別れです。子どもに子どもが生まれると、つまり、親がおじいちゃんおばあちゃんになると、束の間、三世代の距離が縮んできます。

子はかすがい。そんな言葉がありますが、赤ちゃんが生まれて10歳くらいまでの間は、三世代で時間を共有する機会が増えるものです。この10年間は家族愛を再認識するには格好の時間です。

こういう幸せのさなかにあるときこそ、本当であれば老後の話を詰めておくべきです。仕事と一緒です。仕事であれば、順調な時にこそ、まさかに対するそなえを講じておくでしょう?

でも、なかなかプライベートだとそうはいかないのです。幼な子の天真爛漫な可愛らしさに目を奪われ、また、祖父母世代もまだまだ元気で介護のことなど想像すらしていない…。
みんながみんな幸せに浸りきっている10年間と言っていいでしょう。

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