【号外】親に終活話を切り出す方法
予定はなかったのですが…。およそ5ヵ月五ヵ月ぶりのオフではありますが、急きょ書くことにしました…(涙&笑)。
先週末にダイヤモンドオンラインにアップされた『お盆休みに親に訊いておきたい10項目』が(私)史上最大の反響を得て、180人もの人から資料請求がありました!超うれしかったですっ! *下に貼っておきます…。
ちなみに、無料謹呈した資料というのは、『老親リスク診断シート』と「終活リスク診断シート」です。
前者は現役世代のみなさん向け。後者は老親世代向けのもので、簡単な20個の質問にYes or No で答えるだけで、現時点でのリスクを点数化できる…というものです。
予想外に大勢の人からリクエストを戴いて舞い上がってしまったので、診断シートに加えて、有料カウンセリングで使用しているリスク診断ガイドまでプレゼントしてしまいました。私、意外と気前がいいもんで(笑)。
それで、ですね。
夕べから今朝にかけて、三人の方からメールをいただきました。いずれも、「親に終活のことを訊いたらケンカになってしまった。どうすればいいか」という主旨でした。で、ちょっと迂闊だったかなぁと思ったので、これを書いているわけです。
あるべき終活の6ステップ
老親世代の人たちに対しては常々、キチンとした終活の進め方について、『決記縮伝頼渡(ケッキシュクデンライト)』という6つのステップを提唱しています。*2022年10月31日&11月1日付けの記事をご参照ください。
エンディングまでの8つの想定課題について、方針を決めて、それを紙に記して、(サポートしてほしい相手との)こころの距離を縮めて、それから内容を伝えて、サポートを具体的に頼んで、最低でもそれに係るコスト相当のおカネを渡してしまいなさい。そうすることで相手側にあなたの老い先を支えようという覚悟が定まるのです…。あなたが思い描いたように人生を全うしようと思うなら、ギブ・アンド・テイクを忘れてはいけませんよ!
こんな話を20年間、しつづけてきているのですが…。実はこの6ステップのなかでいちばんの肝が『縮』なのです。
多くの場合、エンディングまでのサポートを依頼する相手はわが子になりますよね。でも、親子関係というのは不思議なもので、わが子の成長につれて、物理的・心理的距離が離れていくものです。その溝を埋めずして唐突にSOSを投げたとしても、親子に特有の照れや気まずさゆえに、建設的な対話ができなくなってしまうことがままあるのです。
ましてや、終活という、死を連想させるような重たいテーマになれば尚更です。料理でいう下ごしらえのような、長年かけて少しずつ離れていったこころの距離を縮めてから本題に入るべきです。親子で同居していたり、近くに住んでいて毎日のように顔を合わせていたりしない場合には、徐々にコミュニケーション頻度を高めていく必要があるのです。
終活話の前にすべき下ごしらえ
ですが、ダイヤモンドオンラインの記事では、このあたりのガイドが文字数の都合で割愛してあります。私にメールをくださった3人の現役世代の方たちは、久々に実家に戻ったお盆休みに、下ごしらえをしないまま、単刀直入に「おふくろ(おやじ)、終活、やってる?」と斬りこんでしまったそうです。
そのうちのおひとりは、母親から「突然なんなのよ。あなた、私のおカネでも狙ってんじゃないでしょうね」と笑い飛ばされ、カチンときて喧嘩になってしまったとのことでした。これ、親子あるあるです。
読者のみなさんの親御さんが、残念ながら、終活に対して真摯に向き合っていない場合には、みなさんの側からアプローチしなければなりません。親がまったく老い先にそなえていなかったり、みなさんが知らされていなかったりしたら、面倒や不利益を被るのはみなさんだからです。
ただ、思春期から今日までの長きにわたり、親との物理的・心理的距離が離れてしまっていて、お盆休みとお正月にしか顔を合わせず、たまに実家に帰っても真面目な話を微塵も交わさないような関係性であったとしたら、いきなり終活話を切り出すというのは、やはり早計です。然るべき手順をスッ飛ばしてしまうと、親御さんのほうもちょっと構えてしまうことが多いと思います。
具体的なこころの距離の縮め方
まずは日常的なコミュニケーション頻度を高めることです。仕事や家庭で忙殺される中、電話をかけるというのはウザいと感じる人も多いはずです。でも、現代はメールもあるし、それ以上に簡単なLINEもあります。まぁ、親御さんに情報リテラシーがまったくないとなると、電話と手紙しか術はありませんが…。
最低でも週一回。毎週、電話や手紙というのはちょっと負担になるかもしれませんが、LINEであれば十分に可能です。それこそ、1分もかかりません。何もダラダラと長文を書く必要などありませんからね。基本、ワンメッセージOKです。
今の季節なら、こんな感じでしょうか…。
・おふくろ。熱中症にご用心!
・おやじ。ケチケチしないでエアコンつけろよ!
・おかあさん。水分補給、忘れないでね!
・おとうさん。暑いからって、昼からビールばっか飲んでちゃダメだよ!
なにげない写真を貼ってもいいかもしれません。孫の動向を教えてあげるのも有効です。誕生日、結婚記念日、父の日、母の日、重陽の節句(9月9日)、四季折々のイベントの時などは、グリーティングカードなんかもいいですよね。
私の仕事柄、「息子がこんなの送ってきてくれたんですよ~」などと言いながら、うれしそうに見せてくれる高齢者がいかに多いことか!
やらない手はありません。
あなたのマインドシェアを高めてからが勝負!
ここだけの話ですが、兄弟姉妹がいる人は特にやるべきです。誰よりも早く、親御さんとのこころの距離を縮めるようにしてください。理由は…、おわかりですよねぇ…。
とにもかくにも、親御さんのマインドシェアを高める必要があります。親御さんの日常の中に、いつもあなたのことが頭と心の中のどこかにあるようにするのです。そのためには、やっぱりコミュニケーション頻度が大切になってきます。
ふだんLINEやメールなどよこさない娘や息子からメッセージが届いたら、はじめは「?」となるかもしれません。でも、これが日常的になってくると、やっぱり親の側はうれしいものです。自分のことを気にかけてくれてるのかなと思うと、こんど帰ってきたらいっぱいご馳走を作ってあげようとか、一緒に一杯やりたいなとか、たえずあなたの存在が意識のどこかにある状態を作ることができるでしょう。
いよいよ終活話の切り出し方
こうしたコミュニケーションを3ヶ月も続ければ、実家に戻った時に、あなたが終活話を持ち出したとして違和感はないはずです。頃合いを見て、「そういえばさぁ~」と切り出して、同僚やご近所さんが親の介護のことでかなり大変みたいでさぁ~…とはじめます。もちろん、フィクションで全然オッケーです。ウソも方便です(笑)。
親御さんが話に乗ってきたタイミングで、「わたしも娘と息子のために終活、はじめたんだよねぇ。人間なんて、明日どうなるかわかんないんだから…」とつないでいくようにします。
ダメ押しで、『まさかの三原則(まさかは突然やってくる、まさかは必ずやってくる、親のまさかは子のまさか)』とか、『親子の三原則(親はひとりじゃ死んでけない、死んでも切れない親子の縁、親のまさかは子のまさか)』とかの話をすればパーフェクト!
その上で、「おかあさん(おとうさん)は?」とやるようにしてください。ここまでくれば、いくらケセラセラな親御さんであったとしても、多少の問題意識・危機意識・当事者意識が芽生えてくる筈です。
そうすると、話はおのずと、「終活って、何をどうやるんだ?」という展開になっていきます。そうなれば、このnoteに散りばめられたたくさんの記事たちが使えると思います(マチガイなし!)。今回、ダイヤモンドオンラインの読者に差し上げたリスク診断シートも、存分に威力を発揮することでしょう。
老親にそなえさせるには戦略がいる
お盆休みに終活話を切り出せなかったり、切り出したらケンカになってしまったり…。そんな方たちは、まずはLINEによるコミュニケーション頻度の向上に取り組んでください。そして、親御さんたちの胸のうちの、あなたのマインドシェアを高めるようにしましょう。
「気にかけてくれるんだなぁ」・「かわいい奴だ」・「仕事、順調なのかな」・「孫は元気にしてるかな」等々、あなたに対するポジティブ感情を喚起させて、親御さんの日々の暮らしの中で、いつもあなたの存在があるように仕向けることです。
人間、歳を重ねる程に気むずかしくなるし、頑固になっていきます。然るべき作戦を練ってから話を進めないと、無用な親子喧嘩で終わってしまいかねません。きちんと下地を作ってから本題に入っていくのがスムーズです。
約束です。
老親リスクにそなえてください。
あなたの仕事と家庭と人生を損なうことがないように!
そのためにも、まずは親子間のこころの距離を縮めることから始めてみてください。
追記)
写真は、今から14年前。認知症の父と長男と3人で、九州旅行に出かけた時のモノです。このときの話は、2023年6月18日付けの記事に書いています。
【参考図書】
【参考動画】