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親子の不思議(後編)

前回までの記事(「親子の不思議(前編)」・「同(中編)」)で、親子関係の推移について触れながら、親世代が早期にそなえることの大切さを書いてきました。

今回は、話をさらに分かりやすくするために、サザエさんファミリーすなわち磯野家を例にして考えてみましょう。あの、「タラちゃん・サザエさん・波平&フネ」の三世代が登場する国民的アニメです。

ちなみに、ちびまる子ちゃんの「さくら家」でいうと、「ちびまる子・お父さんお母さん・おじいちゃんおばあちゃん」ですね。クレヨンしんちゃんの「野原家」の場合、私の記憶では祖父母はあまり登場してこなかったように思います。

つまり、しんのすけ(しんちゃん)の両親である「ひろし&みさえ」は、実家とは物理的にも心理的にも距離が離れていたのかもしれません。子ども向けの番組としてはめずらしいのではないでしょうか。あるいは、核家族化が当たり前になってからの作品だったことが大きいかもしれません。

さて、テレビの中のサザエさん一家は、すべてのキャラクターが歳をとりません。ですから、何年たとうがハッピーな状況が続きます。タラちゃんのみならず、ワカメもカツオも永遠に小学生です。思春期も受験も就職も結婚もありません。タラちゃんの父親であるマスオさん。彼だって、リストラされることもないし、定年退職することもありません。祖父母である波平もフネも、介護が必要になるなんてありえないし、いついつまでも元気な暮らしが続いていきます。言ってみれば、これこそが、親子三世代がみなハッピーな「10歳・40歳・70歳」までの蜜月の世界です。

でも、これが現実世界であればそうはいきません。タラちゃんが小学校を卒業するまでには、ワカメちゃんもカツオも受験があります。部活をはじめとするさまざまな交友関係の中で、恋愛もするでしょう。失恋したり、友だちとの仲たがいもあり、挫折を味わうこともあるでしょう。

波平もマスオも仕事がなくなり、サザエさんもパートに出なければならなくなります。波平とフネは次第に心身が衰えて、いよいよ介護の心配が出てきます。当然、認知症やら感染症やらのリスクもある。無料がん検診を受けたら、本人は痛くも痒くもないのに、がんの摘出手術なんてオファーされてしまうことも。そんな状況に陥るタイミングが、親子三世代が「20歳・50歳・80歳」となるころです。

波平やフネにもしものことがあれば、サザエ・カツオ・ワカメには遺産相続争いが起きるかもしれません。マスオに加え、カツオとワカメの配偶者の思惑も入り混じって、遺産分割協議は紛糾するかもしれません。波平とフネが何もそなえていなかったとしたら…。

こういった状況変化は、この世に生まれたものならば、100%確実に通らねばならない道です。理屈では、だれだってわかるはずです。にもかかわらず、ほぼすべての「波平&フネ」はそなえていない。あるいは、まちがったそなえ方をしてしまっています。サザエとマスオだって同様です。そして、そなえておかなかったことの悲劇は、残された子どもたちに降りかかるということ。私たちは誰しも、それを肝に銘じておく必要があります。

これは、非常に重要なことです。親がそなえぬままに「まさか」が起きたなら、不利益を被るのは現役世代(子ども)です。仕事や家庭でてんてこ舞いしているさなか、突然厄介なことが起きるのです。親のことを厄介などというと不謹慎かもしれませんが、現実には本当にめんどくさい。これが真実です。

人間50歳ともなれば、明日の朝、今日と同じように元気に目覚める保証はありません。一瞬先は認知症です。一瞬先は感染症です。一瞬先は寝たきりです。十の位を四捨五入して100歳になるみなさんは、老い先のことで子どもたちに負担をかけたくないのであれば、即刻そなえるべきです。

残念ながら親がそなえていなそうであれば、子どもの側からそなえさせるように誘っていく必要があります。親と子は一蓮托生。だから、エンディングまでに想定される諸課題ごとに、親子で具体的な段取りについて共有しておかねばなりません。

えっ?方法がわからないって?大丈夫。次回からは、『たった20の質問に答えるだけ!老親リスク診断』と題して、老親の何を知っておくべきなのか、親に何を準備してもらえばいいのか…についてお話していきます。まずは、親子関係の現状を知ることから始めていきましょう。

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