老親リスク回避の4ステップ『縮伝頼渡』(その1)縮める
さて今回からは、現役世代のみなさんが老親問題で厄介や不利益を被らなくて済むように、一日も早く取り組んでほしい具体的な作業についてお話しします。
『縮伝頼渡(しゅくでんらいと)』。
何かの呪文のようですが、もしよろしければ、本当に呪文だと思って、「しゅくでんらいと、しゅくでんらいと」と繰り返しながら、まさかが起きてしまう前に老親対策に取りかかってください。ご自身の老親をイメージしてみて、以下、思い当たる場合は、即アクションです。
・能天気に『どうにかなるさ』などと言っている
・『うちは大した財産もないからノープロだ』
・『子どもたちがみんな仲いいから話し合ってやってくれ』
・『ちゃんと遺言を書いてあるから大丈夫』
・親がすでに後期高齢者(75歳以上)
・(この記事を読んでいるあなたが)ひとりっ子ではない
・親と月に一度もコミュニケーション(LINE等も可)をとっていない
なお、現状でも頻繁に親子で対峙しているという場合は、ステップ1はスッ飛ばしてしまって問題ありません。次回の記事(ステップ2:伝える)から始めてください。
それでは、4つのステップ「縮伝頼渡(しゅくでんらいと)」の最初のステップ『縮める』に入っていきましょう。
ステップ1『縮める』は、長い歳月をかけて離れてしまった親子間のこころの距離を縮める作業です。
時間をかけて徐々に離れていった親子のこころの距離を縮めるには、やはり、それなりの時間をかけなければなりません。しかも、老親のまさかはいつ現実のものとなるかがまったく読めません。こうしている瞬間にも起こり得ますし、今夜かもしれないし、明日かもしれない。だから一日も早く取り組んでほしいと思います。
やること自体は簡単で、日常的な声かけだけです。本当であれば、老親のほうからすべきことだとは思いますが、それをただ待っていても仕方ありません。いつ来るかわからないものを待つことほどムダなことはありません。迷うことなく、子どものほうからやるべきです。
なぜなら、親のまさかは子のまさかだからです。結局、親に何かがあれば、子どもの側はスルーできないからです。親子の縁は死ぬまで切れない。いや、死んでも切れないものなのです。であるならば、事が起きてしまう前に手を打っておいたほうがいいのです。現役世代のみなさんとすれば、それが自分のためなのです。老親のリスクヘッジ。ういうことです。
ということで、もしもあなたが「親と疎遠だなぁ~」と感じているとしたら、まずは3ヶ月、週に一度は親にメッセージを送るようにします。老親との接触頻度を意識的に高めていくのです。わざわざ無理をして実家に帰る必要はありません。実際問題として、お盆休みと年末年始くらいしか親と顔を合わせないというケースは多いですからね。電話もちょっとストレスになるという人が多いので、メールやLINEや手紙で代用するようにします。別に、親からレスがあろうとなかろうと、そんなのはどうでもいいです。
親の誕生日、母の日&父の日、両親の結婚記念日、バレンタインデー、ホワイトデー、七夕、重陽の節句(9月9日)、ハロウィン、クリスマス、お正月はもちろんですが、あなたの誕生日、あなたのお子さんの誕生日に親への感謝をひとこと贈るだけで親と言うのは感激するものです。鉄板です。
イベントがなかったとしても、最低、週に一度はメッセージを送るようにしてください。桜や新緑や紅葉の季節、出張先から、街で見かけたお店や景色等々、配偶者や恋人や親しい友人にLINEするのと同じように、老親にもマメにやるようにします。ついでに言っておくと、同じことをあなたの娘や息子にもやっておきましょう。
で、メッセージの中身ですが、基本は、「問題ない?何かあったらいつでも言ってきてね!いつも応援してるから!」的なことで十分です。「出張ナウ」(死語ではありますが、老親世代にはちょうどいいかも)と添えて出張先のきれいな景色を写メで送るとか、娘や息子の入学式・卒業式に「こんな大きくなったよ。いつもサンキュ~ッ」とか、11月22日に「ご無沙汰。いい夫婦、してる?」とか……。アイデアは無限です。好きな相手には頻繁にメッセージを送るでしょう? その時に、ちょっとアレンジして親にも送ってあげればいいだけの話です。
ただ、ここぞという時には、メッセージカードと一緒に、親の好物や話題のお菓子なんかを宅配便で送ってあげるるといいでしょう。いちばん無理がないのは、やはり誕生日でしょうか。「誕生日おめでとう!父さん・母さんがいたから私の今があるんだね。心配ばっかかけちゃってゴメン。いつも応援ありがとう!」のような流れがオススメです。謝罪から感謝の流れが、読む側のこころをキュンとさせることが検証されています。
要するに、別々に暮らしていて、滅多に顔を合わせることのない老親のマインドに、あなたの存在が常時あるように仕掛けるわけです。本来は、たまに会って飲んだり食べたりしながら、老い先のことについてさりげなく口にできれば理想ですが、長いこと疎遠だった場合、いきなりこんなことをすると疑心暗鬼になられても困りますので、まずはバーチャルでいくほうがハードルが低いはずです。
バーチャルであっても、「なんか照れる~」・「ちょっとこっぱずかしい」とおっしゃる人が多いのですが、老親リスク回避という大目的のためには四の五の言ってる暇はありません。まして兄弟姉妹がいる場合、親名義の財産分けにおいて、このステップこそがあなたを優位な立場にもっていくためのはじめの一歩なのですからね。躊躇しないでください。
さいごに繰り返しますが、老親リスクを回避すべく親に早期にそなえさせようと思うのなら、何の予告もないままに「終活やろうよ」とか切り込むのは得策ではありません。下ごしらえとして、親子間のこころの距離を縮めておくことが絶対条件です。円滑な老親リスクヘッジのためには戦略が要るということを、しっかりと肝に銘じておくようにしてください。
それでは次回は、縮伝頼渡(しゅくでんらいと)の『ステップ2:伝える』について書いていきます。
【参考動画】
永遠の親子愛で紡ぐ魔法の終活【千葉TV『シャキット!』 - YouTube