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【ドクトルJの告白023】食品メーカーが生活習慣病の共犯者

食べ物についてもちょっとだけ触れておきましょう。薬だけではなく、今日流通している食べ物にも私たちの身体に好ましくない化学物質が大量に含まれています。農家の人たちは、売り物の農作物とは別に、自分たちが食べる分は無農薬で作っています。出荷するほうは見栄えをよくするために、栽培の過程で大量の農薬や化学肥料を使っているのを知っているから収穫しても怖くて口にできないというのです。

かつてハンバーガーチェーンの社長は、「自分の孫にはハンバーガーやフライドポテトを食べさせない」と言っていました。また、大手乳製品メーカーの部長は、「わが家では牛乳は飲まず、豆乳です」と照れ笑いをしていました。ジャンクフードをはじめとする加工食品を製造販売しているメーカーは、私たちを不健康にすることで成り立っている商売なのです。世の中の真実とはこういうものなのですね。医師が薬を飲まないという話はこれに通ずるものがあると思います。でも多くのひとたちは、こうした真実を知らされないのですね。

調べてみると、もう7,8年も前になりますが、米国のNIHが重要な発表をしています。がんの発症については、50%が食物関連、30%が煙草に依存しており、食べ物の消化吸収や代謝異常が大きな要因であるという内容です。それ以降の研究成果により、食生活を変えること(食餌療法)でがんを予防したり改善したりできることもわかってきており、がんの治療に際しては、いわゆる3大治療法(外科的手術、抗がん剤、放射線)と同列で東洋医学的な食事療法が選択肢として並べられています。医師はそれぞれについて具体的な治療内容や長所・短所を患者に説明し、患者は自己責任で治療法を決定しているのです。

こういう事実を知ると、日本の医師と患者はもっともっと勉強しなければダメだと恥ずかしく思います。良い医師には良い患者が、良い患者には良い医師が必要ということだと思います。

がん・心臓病・糖尿病・脳卒中などの生活習慣病は、まちがった食生活が原因で起こるものです。結局は普段の食生活が非常に大切だということです。ですから、これらの状態を改善するためにはまず食べ物を見直さなければダメなのです。この問題は国を挙げて取り組むべきもので、『食生活革新』というくらい大上段に構えてもいいかも知れませんね。この点でも日本は大きく遅れをとっていて、医師はもっと栄養学に目を向けるべきだと思います。大学でももっとカリキュラムを増やさないといけません。

がんは生活習慣病の代表選手です。そして、人間の生活習慣を端的に表わすものが毎日の食事です。わたしたちは死ぬまでに8万8千回の食事をします。それ以外にも数え切れないほどの間食をします。その都度、私たちの口から、化学調味料、甘味料、食品添加物、合成保存料などが大量に吸収されていくとしたら、ちょっと怖くなりませんか?戦後の高度成長経済を通して、食品産業界は大きく発展を遂げました。一流大学を卒業した化学者たちが知恵をしぼって、私たちが繰り返し食べたくて食べたくて仕方がなくなるような商品を開発してきました。好感度の高い俳優さんやタレントを使ってテレビコマーシャルをじゃんじゃん流し、それに乗っかってしまった私たちの味蕾(みらい:舌の表面にある味覚を感じる点々)は人工的な味付けに慣らされてしまったのです。

最近はとくにグルメ番組が多いですよね。そこで紹介されるベッチョリしたお薦め料理みたいなものは、たぶん私たちの「口」を魅了することでしょう。長年の食生活を通じてそうしたものを美味しいと感じるように操作されてしまったわけですからね。でも、私たちの「身体」は決して美味しいとは感じていないはずなのです。みなさんが五つ星レストランの高級フレンチに舌鼓を打ったとしても、みなさんの胃や肝臓や腸などの臓器は「げっ、またご主人様はこんなまずいものを召し上がって…。たまらないなぁ」と悲鳴を上げていますよ、きっと。だからがんが増え続けているのです。

江戸時代の儒学者で貝原益軒という人がいます。彼の有名な著書『養生訓』には、粗食のすすめや美食の慎みなど、あるべき食生活のことが詳細に書かれています。本屋さんに行けば、こんにちではいろいろな人たちがいろいろな食事指導書を書いていますが、結局は『養生訓』に集約されるような気がします。海外の食餌療法でも日本の伝統的な食事法をベースにしたものが殆どです。つまり、西洋医学が広まるずっと前から、日本には立派な教えがあったということです。こういうことを考えていくと、私たちが健康的な人生を送るための手っ取り早い方法は、商業主義一辺倒の食品産業界とは一定の距離を置くことだとご理解いただけるのではないでしょうか。

私の患者さんたちには私自ら食事を指導していますが、それは然るべき栄養をきちんと摂ってもらうことで患者さんたちの治癒力を引き出してあげるのが私の役割だからなのです。医師が病気を治すなどという大それたことは考えてはいけないと、自分を戒めながら治療に当っているのです(笑)。

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