【終活110番014】蜜月の「1・4・7」
わが子が誕生した時のことを覚えてますか?
不安と緊張の中で、生まれて初めての元気な鳴き声を耳にしたとき、安堵と喜びで涙したことがあったはずです。目の中に入れても痛くない。そんなふうに、血を分けたわが子を溺愛したことがあったのではないでしょうか。
親だけを頼らざるを得ない天使のようなわが子を、寝ても覚めても愛おしく抱きしめ、限りない無償の愛で包んでいた日々。その一挙手一投足を見逃すまいと、着実な成長にビデオカメラを回し続け、幼稚園・保育園の行事で拍手喝采し、卒園式では感動の涙を流し、小学校の入学式でも涙を流し、運動会でも涙を流す…。親子三世代がひとつでいられた時間がありました。
世間的な年齢でいうと、孫世代10歳、親世代40歳、祖父母世代70歳。こんなイメージです。赤ちゃんが生まれて小学校中学年まで。だいたい、この10年くらいが親子三世代にとって蜜月の時代と言っていいと思います。
子どもも10歳くらいまでは両親にほぼ全幅の信頼を寄せていて、親子で過ごす時間がふんだんにあります。年中行事には祖父母にも声をかけて楽しい時間を過ごす機会も多いでしょう。親世代は仕事でも然るべきポストに就いて収入も増え、やりがいがピークに達するタイミングです。祖父母世代もまだまだ元気。介護の心配もありません。
ところが、子どもが塾通いを始めたり、運動系のクラブに所属したりするようになると、親子でともに過ごす時間が一気に減ります。それはもう、本当にまったく親子で過ごす時間が突然なくなります。土日祝日ですら、なかなか親子で遊びに行けなくなります。夏休みの旅行すらままならなくなります。それほど、塾やスポーツはスケジュールがぎっしりなのです。そして、それが永遠に続き、戻ることはほとんどありません。それこそが、子どもが成長するということなのですが、理屈ではわかっていても、親にとってもかなりさみしいものです。
でもそれは致し方ないことです。そう割り切って、父親、母親、子どもはそれぞれの世界に没頭していくことになります。やがて、中学高校大学、そして就職、結婚と、あっという間に別々の人生を突っ走っていくことになります。物理的距離と心理的距離の両方が離れていくのです。そして、忘れたころに、子どもの携帯電話が鳴るのです。
「大変なの!お父さんが、お父さんが倒れちゃって…」
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