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ドトールの女神と傾聴技法

どうしても茄子カレーが食べたくなって、久しぶりに珈琲農園に行ってきました。やっぱり美味しかったけれど、それ以上にラッキーだったのは、かねてより贔屓の彼女がいてくれたことです。

平日に考えごとをするときは大体あそこに居座るのですが、今年の春頃でしょうか、彼女のことを明確に認識することになりました。

ところで私は、丑年ということもあって、乳製品が苦手です。でもなぜか、コーヒーに入れるスジャータ(フレッシュ?)だけは不思議とイケるんです。なので、オーダーの際にミルクをつけるかどうか訊かれると、「ちょっとだけお願いします」と伝えます。

そしてある時、何も尋ねられないことがあったんですよねー。そして銀色のひとり用ポーションがテーブルに置かれた時、中にミルクがちょっとだけ入れられているのが目に止まりました。で、反射的に口走ってしまったのです。

「あれっ。ボクがミルクはちょっとだけでいいって、知ってました?」…と。

するとどうでしょう。

「はい。前回そう仰ってたので」

そう答える声の主のほうを見ると、わずかに茶に染めた長い髪を、キュッとポニーテールに結んだ色白の、大学生かな〜、とても麗しい女性が微笑んでくれたのです。もう、瞬間的にあたりがパーッと光に満ちてきましたね。美人の微笑の賜物です。

「ホントに!すごい!驚きました」と礼を言い、帰り際にレジで改めて「感激しました」と告げて店を後にしました。

珈琲農園は平均して10日に一度くらいの利用頻度なのですが、それからというもの、彼女が接客に来てくれるともう、本当にその日一日ハッピーな気分で過ごせるので、彼女は私の女神となりました(笑)。

今回は、暑くて長い夏が異常に忙しかったため、だいぶ間が空いてしまったのですが、朝方にどうしても珈琲農園のカレーが食べたくなって出かけたわけです。

そして、運よく天女との再会を果たし、「いつもミルクを少しにしてくれる人ですよね」と訊くと、「はい。お久しぶりです」と彼女。「覚えててくれたんだ」と言うと、「覚えてます」からの笑顔とキュートなまなざし。

天にも昇る幸福感で、ドトールブレンドを運んでくれた際に「もう秋ですね」と言うと、「そうですね。秋ですよねぇ」と、よどみないコミュニケーションが心地いいっ!

「いつもありがとう」

「とんでもないです。ごゆっくり」

たったこれだけの言葉のラリーなのですが、24時間程度は彼女がくれた清々しさが持続するんですよね。若い時分だったら、まちがいなくアタックしてましたね、ガチで。

珈琲農園の女神のおかげで、久々に思い出しました。
全身傾聴のことを。

コロナの前までは、年間20~30本は、自治体とか病院とか介護系企業でコミュニケーション研修をやってました。こういった、クライアントが多くの場合ネガティブな状況にある場合が高い職員ほど、相手の話に耳を傾けることが大切です。聞くのではなく、「聴く」のです。

この文字をよく見ると、「耳」ヘンにプラス4と心…です。耳で聴くのは当然のことですが、加えて、目と口と頭とカラダの4つをフル回転させて聴くようにします。心を込めて。

「目で聴く」とは、相手が状態や状況をうまく伝えられないかもしれないという前提に立って、表情や様子をそれとなく観察しながら話を聴くということです。

「口で聴く」とは、頃合いを見て、自分の理解が間違っていないかどうかを確認したり質問で補ったりしながら話を聴くということです。

「頭で聴く」とは、もしかしたら相手の話が要領を得なかったり、時系列が混乱したりしているかもしれないという前提で、自分の頭の中で整理しながら話を聴くということです。

「カラダで聴く」とは、相手の話を真摯に聴いていることを相手に理解させるべく、頷いたり相槌を打ったりしながら話を聴くということです。

そして「心で聴く」とは、相手のことを、自分にとって大切な家族や恋人や友人のような存在だと思って真剣に話を聴くということです。

私も含め、困っていたり悩んでいたり、そういう問題を抱えている人たちの話を聴くときには、この『全身傾聴』を心がけなければなりません。

と、まぁ、そんなことを思い出しながら帰路につきました。

医療や看護や介護、それから自治体等の窓口につく職員の人たちにも、こういったことを一日一日リマインドしながら仕事に取り組んでほしいと思います。もちろん、私自身も。

自戒の念をこめて、そして、珈琲農園の女神に感謝の気持ちを込めながら書いてみました…。

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