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ジャックの世界観と場づくりの可能性

投稿が滞ってしまっておりますが、最近気づいたことを書き留めておきたいと思います。ワークショップの場づくりにおいて、大切だと感じたことであり、最近特に意識的に実践するようにしている点でもあります。

企業研修の文脈では異なる解釈があるかと思いますので、私が開催している、プレイバックシアターをベースとしたワークショップ「Jack Out the Box」(通称:ジャック)の世界観をお伝えしながら、その考え方の活用の仕方について考えていきます。

暗黙の前提

ワークショップへの参加にあたり、参加者は、これまでの経験から、自分や場に対しての暗黙の前提(ある文脈における役割やルール)を持っていることが多いと思います。

例えば、

・「参加目的を持っていなくてはならない。最初の自己紹介で、明確に話すことが期待されている」
・「状態を整えて、よいコンディションで臨むのがよい(=調子がよくないのはいけない)」
・「場にそぐわない、あるいは、周囲のモチベーションを下げると受け取られる可能性があることは言わない方がよい」
・「ワークは、一生懸命やるべきだ/やることが期待されている」

のようなことですね。皆さんは、いかがでしょうか?

「あ、そういうところある!」と思った方もいるかもしれませんし、「意識はしていなかったけれど、振り返ってみると、そういう部分があったかもしれない・・・」と思った方もいるでしょう。

これを書いている私自身が、上記のような前提を持っていましたし、他の文脈の場ではその前提にならって、立ち居振る舞いをすることもあります。

ただし、ジャックでは、上記のような前提は『おさらば』です^^

チェックインでびっくり?!

じゃあ、どんな場なのでしょうか?

それをまず感じるのは、チェックインの場だと思います。
チェックインでは、一人ずつ、今日呼ばれたい名前(ニックネーム)と、今感じていることを話していきます。

「〇〇が学べたらいいなぁと思っています」
「楽しい時間を過ごせたらうれしいです」
「今回のテーマに紐づいて、~のようなことを思い返しました」

といったことに加えて、

「今日のテーマは『〇〇』って今さっき知ったんですけど、、、。今日も特に何も持たずに来ました
「今、とりあえず、眠くてですね、、、。まぁ、のんびり過ごしたいと思います」
「あまり調子がよくないんですけど、来たいので来ました。途中で休むこともあるかと思いますが、よろしくお願いします」

といったこともシェアされます。


また、私からも、場で大切にしたいこと(≒グランドルール)として、「自分のペースで、無理なく、心地よく過ごす(動きたい・話したい範囲で)」とお伝えします。

いかがでしょうか?

私たちが遭遇した・遭遇することが多い、いわゆる「○○することが期待されている/評価される」からは離れていますよね。

・どんな状態で参加してもOK
=体調、気分が優れなくてもOK

・自分が感じていることの垂れ流しでOK
=良いこと言わなくてOK
=論理的に整理して話さなくてOK
=状態や欲求をそのまま言ってOK

・やりたいことを、やりたい程度にやるのでOK
=力一杯やらなくてOK
=全部のワークをやらなくてもOK
=途中で休むのもOK
=みんながシェアしているから、自分もシェアしなきゃと思わなくてOK

参加者の有り様とファシリテーターの声かけ

では、そんな場は、どのように創られるのでしょうか?

一番は、参加者からそのような声やリラックスした態度が自然と表れることです。

上記のような声が漏れ聞こえてくることで、初めて参加する方も、「お、ここはそういう場所なんだな」と認識したり、感じ取ったりします。

ファシリテーターからは、参加者がリラックスして臨めるように、冒頭にあった「暗黙の前提」を取り外して過ごしていいんだよー、というメッセージを込めて、声かけをします。

・「要点をまとめて話さなくていいですよ、垂れ流しでOKです」
・「疲れない程度にやってくださいね」
・「自分の心地よいと感じる程度に動かしてくださいね」
・「今、場に沈黙がありますけれども、これはそれぞれのなかで染み込んでいたり、味わっていたりする時間なので、話さなきゃとか演じる役をやらなきゃとか思わなくて大丈夫ですよ」

などと、場面や参加者が持っていそうな暗黙の前提に応じて、すっと言葉を挟んでいきます。

参加者は、「あ、自分が気になっていたこと/不安に思っていたこと/不確かで戸惑っていたことを、言葉にしてくれて安心した」と思うことが多いことでしょう。

もちろん、参加者とファシリテーターは影響し合っていますので、お互いの有り様から、自然とジャックの雰囲気がつくられ、この場での枠組みが共有されていきます。

枠組みがあることで、安心して自由になれる

枠組みとは、「ここまではOKだけど、これはNG」といった場における境界のようなものです。
海水浴の遊泳区域のようなイメージですね。

ある参加者がこんなことを言っていました。

「ジャックは自由なんですけど、すごく守られている気がします。誰も口にする訳ではないけれど、相手の話は一生懸命聞く。お茶とか飲みながらリラックスして参加するけれど、ストロングゼロ(お酒)を飲みながら参加する人はいない」

なるほどね~、と思いました。

確かに、声かけもするけれど、全部を明文化して、言葉にして伝えるわけではない。

その場で表れる声やあり方、雰囲気の積み重ねによって、創られているものなんだと思います。

さいごに

この記事では、まずはジャックでの場づくりを紹介しました。
こんな場もあるんだなぁ、という風に感じていただくとともに、参加者・ファシリテーターの様子・行動も具体的にイメージしていただけたかと思います。

場づくりをするファシリテーターとしては、「どんな場をつくりたいのか?」を自覚すること、参加者が持っている暗黙の前提や隠れた不安に目を配ることを通して、声かけなどに活かしていくことが大切です。

この積み重ねによって、参加者とともに、その場そのものが育っていくように思います。

「ジャックは、なおさんがつくっているようでもあるし、そうでもない。みんな、ジャックっていう場に集まってくるんでしょうね」

「場」という目に見えない存在に心惹かれながら、引き続き、場で起こる神秘を味わっていきたいと思います。