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もやし休暇

私は今、焼肉屋に来ている。
有給を使って、家から徒歩5分の焼肉屋にいる。

人生2回目の一人焼肉である。
世の中の大半が一品目に選ぶであろう、牛タンを一人前。馬が好きな私は、加えてサクラユッケを頼んだ。

あれ?なんだか油が重い。
さっぱりしたものが食べたい。
箸休めをしたい。

そうして注文したのがもやしナムルである。
税込み319円。原価率を考えると、今からスーパーに駆け込みナムルの素ともやしを買いたくなるところだが、私はついにもやしナムルを頼んでしまった。

今もそれなりに若いのだが、
もっと若かりしころ、焼肉屋でもやしを頼むなんて意味がわからなかった。
焼肉屋なんだから、肉を頼めと思ってた。

そんな私がついにいま、もやしナムルを頼んでいる。歴史的快挙だ。
ゼレンスキー大統領の国会演説と同様に、私の歴史に刻まれた。
(大袈裟かもしれないが、私はこの世に1人しかいないんだから、私の初めては私史的には、歴史的快挙なのである)

もやしナムルってこんなに美味しかったっけ。
口の中の油がどっかに行っていく。
美味しすぎる。箸休め、名脇役。
私は、君が好きだ。
もやしはすぐ腐るから冷蔵庫の一軍にはならないが、救世主、名誉代打だ。

生グレープフルーツサワーがさらに食欲を刺激する。
人生最高の日の1つ。一人焼肉、天才。
今日、お寿司ではなく焼肉を選んだ人誰だっけ?
ーーー私だ。
判断が冴え渡っている。
あとは、日本酒を飲んで彼の家に行く。


平日の有給、いざとなれば連絡が取れる社用携帯を持って楽しむ最高のスケジューリング。
もやしの話からだいぶ脱線したが、もういい。
なぜならいま私は幸せだからだ。

もやしナムルとお酒とお肉。
側から見れば些細なものだが、私は今この世でいちばんに幸せだ。

この気持ちで今日は眠りにつこう。

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