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【ジェイの才能探訪#13】失われつつある教育がここに!“ひろえ塾”(スクール訪問③) 

今回の訪問先は“ひろえ塾”さんである。福島県郡山市に位置している。訪問した日は土曜日ということもあり、30人ほどの子ども達が、自由闊達にのびのびと生活していた。代表の福島さんに話を聞いてみると、ただ自由なだけではなく、体験に基づく様々な学びが行われていて、昔から日本で大切にされてきた教育があったように感じる。

〈 概要 〉
 現在、このスクールに通っているメイン層は、小学生〜中学生である。もちろん未就学児も兄弟関係で通っている。月曜日から土曜日まで受け入れていて、1日中通っていくる子もいれば、午後のみの子もいて、子どもの状態や親の意向によって、通い方はそれぞれだ。

 見学していて特徴的だと感じたのは、子ども達のメリハリがしっかりしているという点だ。スクールで企画している学習や学校の宿題など、やるべき事はガッツリ取り組む。そのタスクを終えたら思い切り遊ぶ。このメリハリがしっかり効いていると感じた。また、スタッフさんからの連絡事があれば、子ども達は必ず手を止めて耳を傾けていた。大切なことは聞き逃さないように徹底的に訓練されていた。

 学習については後で紹介するとして、子ども達の遊んでいる様子を紹介しよう。スクールが所有する敷地が広く、思い切り走り回ることができる。
 私も子ども達に誘われて、2時間ほど鬼ごっこや追いかけっこで遊んだ。他にも自転車に乗って遊んだり、ミニプールで涼を取ったりと、広い敷地だからこそ、子ども達がのびのびと体を動かすことができる。

のびのび遊べる広い敷地

 体を動かす気分でなければ、室内で映画をみたり、お絵描きしたり、ピアノを弾いたり、子ども達が自由に過ごすことができる。

 思い切り遊んで、汗をかいた後は、お風呂に入って保護者のお迎えを待っていた。これは、親からすると大変助かるだろう。後は寝させるだけ…。

 代表の福島さんは「子ども達には、いっぱい運動してもらって、お腹いっぱいになって帰ってもらいたい。」と話していた。こういった思いで見守られながら過ごすことができれば、子ども達は健全に成長できることだろう。 

〈 活動 〉
 このスクールでは、英語学習に力を入れている。スタッフに英語のエキスパートがいて、1on1で学習していた。さらに外国人スタッフの方もいて、普段から外国の方と交流している。そのため、学習した内容をすぐに実践できるし、外国人に対する抵抗が少なくなることだろう。
 中学生で英検準2級、小学3年生で英検準2合格する子もいるというのは驚愕である。実際に私の目の前で、小学校低学年の子が前置詞の話をしていたことには驚いた。

各々の場所で自主的に活動
かき氷美味しそう♪

 また、仙台市や郡山市でコミュニケーション育成をされている指導員の方を呼んで、コミュニケーション能力を高める学習も行っていた。子ども達の能力を開花させるため活動している方である。見学した時は、自分を表す“色”は何色だろう?という題材で活動していた。個人的にも興味が湧くものだった。

個別に学習するプレハブ

 話を聞いていく中で驚いた活動がある。それは対外的な活動である。スクールを飛び出して、様々な活動をしているそうだ。

 例えば、東京の塾で学習するために、スタッフと一週間東京で合宿しているという。塾までのアクセスは子ども達自身で計画・実行し、集合場所を指定して合流する。その後、少し遊んで帰って楽しい時間を過ごす。こういった実践的な体験により、社会を生き抜く力が身につくのだろう。

 他にも、みんなで大学のオープンキャンパスに参加するというのである。“みんな”ということは、小学生や未就学児もである。こんなにも前から大学を見学し、意識することができれば、日々の考え方や動き方も大きく変わっていくであろう。

 子どもだからと侮ることなく、体験活動を積極的に取り入れたり、小学生だからと言い訳せずに、未来を見据えさせたりしていることは、子ども達の尊厳を担保し、より良い成長を促しているのだろうと感じた。


〈 スタッフ 〉
 働いているスタッフは全員、男児を持つママさんである。男児を育てているから、ある程度のヤンチャなんてへっちゃら。小学生が大好きな下ネタにも何のその。経験値があるママさんだから、子どもを預けるのも安心できることだろう。それぞれのスタッフが得意な分野・教科を担当し、組織的に子ども達のサポートをしているのである。

 スタッフ間の情報共有にはLINEを利用しているという。一度に全員に通達できるし、話し合いの議事録にもなるため、効率的で合理的である。

 そして、大事な子ども達への接し方だが、どんな子にも統一して接しているという。このスクールには色んな子ども達が通っている。発達障がいの有無はもちろん、コミュニケーションの得意不得意も様々。だが、そういった特性に関係なく、社会生活で大事なことを伝えていた。

 実際に私が福島さんと話している時に、子どもが私に話しかけてきた。ダメ!あっち行きなさい!と注意したくなる所だが、「今はお話中だから、だめだよ。」と注意していた。細かい所だが、頭ごなしに怒るのではなく、ちゃんと理由を付け加えて、子ども達にも納得感を得させていたのがポイントである。やはりこれも子ども達の将来を見据えて、人間関係を醸成していく上で大切なことをスタッフ全員で足並み揃えてサポートしていたことが印象的であった。

〈 保護者 〉
 子ども達の活動の様子は、グループLINEに写真を投稿して、常に報告と共有をしている。写真の投稿だけでなく、子ども達のお迎えの際にも直接話をして、とにかく情報発信は欠かさないようにしているとのこと。

 このスクールでは、保護者の合意形成を大切にしている。子どもをこのスクールへ通わせる前には必ず体験をしてもらうという。雰囲気はどうか?他の子達との相性はどうか?そして保護者と共にその子がここでどのような能力を身につけられそうかを話し合う。さらに、このスクールの指導方針を伝え、時には厳しく指導する時もあることなどを知ってもらう。そうして、保護者の理解をしっかりと得てから、スクールに通うことになる。

 もし保護者から質問や意見等がある場合は、必ず代表の福島さんを通す約束になっているそうだ。保護者とスタッフ個人が直接やりとりすることは無い。窓口を福島さん一本に絞ることによって、全体の状況を把握することができる。さらに、スタッフさん達への個人攻撃が行われる心配がなく、安心して働くことができるのである。

 福島さんの言葉の中で、私が強く共感した部分がある。それは「子ども達の面倒は私たちが見る。預けている親御さんは、外でガッツリ稼いできて欲しい。」という言葉である。
 この言葉から私は、それぞれの人々が得意分野で輝く、適材適所で合理的に社会が回っていく社会が実現できるのでは無いかと感じた。
 現代社会では核家族化が進んでいる。両親は互いに働きながら子育てを両立しようと考えてしまわないだろうか。きっと両立してしまう夫婦もいるだろうが、そう多くいない。私自身もその立場になったら、両立できる自信は無い。

 親と言ってもやはり一人の人間である。親自身の自己実現も大切にしていかないといけない。自分が生き生きと活躍できる職場で、才能が活かせる場では働くことはとても重要である。
 かと言って子育ても、ないがしろにはしたくないことだろう。特に責任感の強い日本人であれば、子育てを間違いたくない。子どもに苦労や寂しい思いをさせたくないと考えてしまうのではないか。施設に預ける行為に罪悪感を感じてしまうかもしれない。

 この無理を通し続けてしまえば、どこかで歪みが出てしまう。であれば、やはり人の特性に基づいた、それぞれの才能に合った役割分担をしていく方が、社会全体が最適化されると思う。
 理念に賛同できる人、信頼をおくことができるような人、そういった子どもの面倒を見る専門家の元に子ども達を集めて、世話をしてもらう。その間、親は仕事で自己実現をする。核家族だけで子育をしていくのではなく、コミュニティで子育をしていくことが、今後求められるのではないだろうか。様々な人と交流して、衝突するからこそ学べることもあるはずだ。
 このような適材適所の活躍ができれば、これこそまさしく才能が発揮される素敵な世の中になるのではないだろうか。

 子どもを親から離して、施設やスクールに入れるのがかわいそう?私はそう思わない。お迎えの車の中や夕食時に、外で学んできたことを一生懸命に聞いてあげる。寝るまでの時間を一緒にゆったりと過ごす。時々ギュッと抱きしめてあげるだけで、子どもへの愛情は十分である。

〈 最後に 〉
 後半は、自分語りが過ぎてしまったことを謝罪する。とはいえ、“ひろえ塾”さんの子ども達は、のびのびと元気いっぱい過ごしている。自由奔放なだけでなく、スタッフさんが指示する時には必ず手を止めて聞き耳を立てる。こういったメリハリも身についていることが素晴らしい。こういった子どもの動きから、保護者も“ひろえ塾”さんを信頼していることだろう。

 私は人の才能に触れることが大好きだ。ここの子ども達は存分に才能を発揮しているように感じる。さらに、保護者も一人の人間として働きながら能力を発揮できているのではないだろうか。子ども達だけでなく、保護者の才能も発揮できている“ひろえ塾”さん。ここには私が理想とする“地域コミュニティ全体で子育てをする”の姿があったように思う。

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