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【SDGs映画紹介】普遍的な人と愛を知る『チョコレートドーナツ』

「10年後の未来をつくるノート」編集部が、さまざまな視点からおうち時間をSDGsに触れる時間にするためのアイデアをご提案していく「おうちでSDGs」。今回は、社会問題の先にいる人に触れることができる『チョコレートドーナツ』をご紹介します。

推薦者は、10年後の未来をつくるトークでお話いただいた、映像クリエイターでWORLD FESTIVAL Inc.の近藤さん。エンターテイメントの専門家目線でSDGsを身近に感じられる映画をご紹介いただきます。

チョコレートドーナツ
2012年製作/97分/アメリカ
原題:Any Day Now
配給:ビターズ・エンド
監督
トラビス・ファイン
製作
トラビス・ファイン、クリスティン・ホステッター・ファイン、チップ・ホーリハン、リアム・フィン
脚本
トラビス・ファイン、ジョージ・アーサー・ブルーム

1970年代のアメリカを舞台に、一組のゲイ・カップルと親に見放されたダウン症の少年が、世間の無理解や差別に苦しみながらも、一つの家庭を築き、家族としての愛情と絆を育んでいく姿を描いた感動のヒューマン・ドラマ。

まずは自分自身を大切にする。そこから他者に目が向く

1970年代のアメリカを舞台にした本作は、実話を元にした映画です。社会課題というと、どこか遠い国で起きていると思いがちですが、時代や社会背景に関係なく、困難な状況の人はどこにでもいる可能性があるし、身近な人と向き合うことが課題解決の一歩。そんなことを気づかせてくれる映画です。

カリフォルニアで歌手になることを夢見ながらショーダンサーとして働くルディと弁護士のポールのゲイカップルの元で一緒に暮らす、母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年マルコ。マイノリティとして周囲から好奇な目にさらされる中、3人はお互いの存在を認め合い、幸せを与え合うような生活を送っています。ある日、ゲイカップルという理由でマルコは引き剥がされてしまいますが、その中で家族としての愛情や絆とは何かを訴えてくるような作品です。

差別と偏見は、残念ながらいつの時代にもあります。しかも、それは特別なものではなく、「自分とは違う存在」に対して、誰しもが抱いてしまう可能性のある感情です。ですが、相手がどんな人なのかを知ることで、受け止め方が分かるものです。人との向き合い方や社会との向き合い方を、この物語は教えてくれます。

この映画を見たあとは、自分自身が救われたような感覚にもなります。自分は自分でいい。どんな自分でも、認めてくれる人が世界のどこかにいることを信じられるような作品です。世の中にポジティブなアクションをするためには、まずは自分自身を抱きしめて、社会にとって大切な存在だと思えることが一歩です。そこから、他者の存在の大切さや本質的な尊さに気づくことができると思います。

時代背景や社会の環境に寄らない、普遍的な人間や社会の問題を知ることができるとともに、自分を含めた多様な存在の魅力と尊さを強く感じさせてくれる、おすすめの映画です。

「社会問題」に取り組もうとすると、そこに関わって生活する人の暮らしや目線とずれてしまうこともあります。人の暮らし視点で社会を見て、問題を発見することは大切です。SDGsという言葉を聞くと、社会で起こっている出来事にばかり目が向いてしまうこともありますが、そこで暮らす人の尊さと幸せに思いを馳せることが、誰ひとり取り残さないSDGsアクションの一歩かもしれません。