夏の庭 湯本 香樹実
我が家は読書が大好きな家系だが、なぜか下の娘だけは中学生くらいまでは本を読むのは好きでなかった。
みんなでいろいろな本を勧めてみたが、なかなか本の良さがわからず、あまり興味が持てないまま。
そんな時、学校の先生に勧められたのが、この「夏の庭」だった。
効果は覿面だった。
目をキラキラさせて読んでいる娘を見て、思わず私も手に取ってみた。
読み始めた途端に夏の風景に包まれ、なぜか涙が溢れ出てきた。
小学6年生の子供たちが、同級生のおばあさんが亡くなる事をきっかけに「死ぬってどうなるの?」という疑問に取りつかれる。
そして、今にも死んでしまいそうな一人暮らしのおじいさんを「観察」し、死ぬのをこっそり見届けようと画策するのだ。
「だれだって死ぬのに、どうしてこわいって思うんだろ。やっぱり、死ぬまでわかんないのかな」
「死んでもいい、と思えるほどの何かを、いつかぼくはできるのだろうか。たとえやりとげることはできなくても、そんな何かを見つけたいとぼくは思った。そうでなくちゃ、なんのために生きてるんだ。」
何も考えていなかった子供たちが、そんなことを思いはじめる。
今にも死にそうだったおじいさんは、子供たちとやりとりをするうちにどんどん元気になっていき…。
そんな濃い暑い夏休みのひと時を切り取った物語である。
これは、お子さんだけでなく、老若男女関わらずお勧めの一冊。
そんな娘も今は大学生。
歴史書や神話物、古書にも手をつけ、日々読書を満喫している。
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