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占い師が観た膝枕2 〜二周年記念プレゼント編〜

※こちらは、脚本家 今井雅子先生が書いた【膝枕https://note.com/masakoimal/n/ne0dd89815d75 ストーリーから生まれた二次創作ストーリーです。

🔸膝枕リレー、二周年を記念して書き上げたお話しですので、原点の正調膝枕を思わせる箇所があります。どうぞお楽しみください😆🔸

こちらは、

占い師が観た膝枕 〜宅配の男編〜
占い師が観た膝枕 〜男たち大集合編〜

に出てくる「宅配の男」がチラッと出てきます。

他シリーズを読んでからお読みいただくと、更にお楽しみいただけます✨

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登場人物がどう表現されるのかも興味がありますので、気軽に朗読にお使いください☺️

できれば、Twitterなどに読む(読んだ)事をお知らせいただけると嬉しいです❗️(タイミングが合えば聴きたいので💓)

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サトウ純子 作 占い師が観た膝枕2〜二周年記念プレゼント編〜


独り身で恋人もなく、打ち込める趣味もなく、その日の予約も特になかった占い師は、占い鑑定所の入り口に、見知らぬ背中を見つけた。

目を細めて見ると、宅配便の配達員がダンボール箱を抱えて立っていた。オーブンレンジでも入っていそうな大きさだが、受け取りのサインを求められた伝票には「枕」と書かれていた。

「枕」

占い師は驚いて後退りした。

「受け取ってもらって、いいっすか?」

配達員に急かされ、占い師は「取扱注意」のラベルが貼られた箱を両腕で受け止めると、お姫様だっこの格好で鑑定所の中へ運び込んだ。

はやる気持ちを抑え、受付の女の子をベルで呼ぶ。

「まぁ!先生。すみません!代わりに受け取ってくださったんですね」

湿気を帯びた風と一緒に、いつもの受付の女の子が飛び込んできた。

そして、荷物を受け取ろうと手を差し伸べる。が、なぜか占い師はダンボール箱を抱えたまま、動かない。

ダンボール箱に手をかけた受付の女の子は、身体を押したり、引いたりしながらしばらく様子を伺っていたが、一瞬、目を大きく見開くと

「ありが、と、う…ございま…すっ!」

と、力づくで占い師から荷物を奪い取った。

「良かった。間に合った!」

受付の女の子が、爪でガムテープをはがす。カッターで傷をつけるようなことがあってはいけないからであろう。占い師はその様子を真横で寄り添うように見つめている。

箱を開けると、女の腰から下が正座の姿勢で納められていた。

「膝枕!」

占い師の声が喜びに打ち震えた。     

占い師の脳裏に、前にイベント鑑定の時にもらったカタログページが次々と浮かんでくる。

最後の方は、占い師が実際に見た、箱入り娘膝枕、マメちゃん、しーちゃん、ナビコちゃん、ダンシング膝枕、妄想膝枕が踊りながら回っていた。

とうとう、とうとうこの鑑定所にも膝枕が。
そう思うと、占い師は居ても立っても居られなかった。

「あれー?カタログと違う!これ、ただの膝枕の形をしたぬいぐるみじゃない!」

受付の女の子は、首を傾げながら、ポケットからスマートフォンを取り出し、その画面に指を滑らしはじめた。

確かに、占い師が受け取った時も、いつも、ヒサコやリケジョが背負ってくる「よっこらしょ」という感じではなかった。

「カタログを隅から隅まで眺め、熟慮に熟慮を重ね、妄想に妄想を繰り広げた末に選んだ商品だったのにぃ!」

『返品しなくちゃ』と、受付の女の子が肩を落としながらダンボール箱の蓋を閉める。
それを見届けた占い師の口から、自然に大きなため息が出た。

「カーン」と、寺院の鐘の音が鑑定所の中に響き渡る。観光客らしき人たちの話し声が、左から右へ通り過ぎていく。

その時突然、「こんにちわーっ!」と、扉が勢いよく開き、大きな人影が飛び込んできた。

「宅配便でーす!ハンコお願いしまーす!」

背負子から大事そうに荷物を下ろす。
いつもの宅配の男だ。

「あれ。先生。今日、出演っすか!」

その、眩しいくらいの真っ直ぐな笑顔に、頬を赤らめたリケジョの顔がリンクする。

「あれ?今、荷物を受け取ったのですけど…」

受付の女の子は、横に置いてあるダンボール箱を指差した。

「ああ、それは通販二周年記念、期間限定キャンペーンでプレゼントしているサーピス品ですよ!当たったんですね!おめでとうございます!」

宅配の男は下ろしたダンボール箱をトントン叩きながら何かを呟いている。「幸せになれよ」とでも言っているのだろうか。占い師の口元が思わず緩む。

「あー、そういえば、そんな事が書いてあったかも…」

受付の女の子は、二周年記念プレゼントの膝枕が入っているダンボール箱には目もくれず、今、届いた荷物を大事そうに開け始めた。

届いたのは旅女(タビジョ)膝枕だった。水色と白を基調としたハワイアン柄のショートパンツから日焼けした膝頭が二つ、顔を出している。

「そうそう!これ!これよ!」

受付の女の子の声が喜びに打ち震える。
同時に覗き込んだ占い師も「おおっ!」っと思わず声を上げた。しかし、鑑定所で使わないものだと理解すると、急に興味が削がれたのか、占い師は不貞腐れたように自分の席に行って、荷物を下ろしはじめた。

「枕が変わると寝れなくなるから、出張の時はいつも寝不足でヘマしちゃって」

はしゃぐ受付の女の子を横目に、占い師は心の中で『家の枕を持って行けばいいじゃん』と、軽く突っ込む。

「ネックピローにもなるから、飛行機旅にも便利ですよ!」

宅配の男が説明書を広げて「ほら、ここ」と指差しはじめた。

「この子は旅の邪魔にならないように軽量化してますし、体育座り出来る仕様になってます!」

と、あれこれ得意気に説明する宅配の男の語り口は、まるで、営業マンだ。

「あと、こっちの子も良い子だから、大事にしてやってください」

宅配の男は手慣れたように説明書を箱に戻すと、今度は横にあった二周年記念プレゼントのぬいぐるみ膝枕を取り出した。

「ん…と。そうだ!先生。良かったらこれ、持って行ってください」

受付の女の子の声に促されて、宅配の男がぬいぐるみ膝枕を占い師の元に運ぶ。

小躍りしながら両手を差し出している占い師を見て、宅配の男は、ぬいぐるみ膝枕に向かって、

「良かったな。おまえも幸せになれよ」

と、小さく囁いた。

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