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占い師が観た膝枕 2 〜コンビ結成記念日編〜

※こちらは、脚本家 今井雅子さんが書いた【膝枕】のストーリーから生まれた二次創作ストーリーです。

本当は11月13日の膝の日に間に合わせようとして書いたものでしたが、今日になってしまいました😅

こちらは、脚本家 今井雅子さんが書いた【膝枕】と、占い師が観た膝枕〜マメな膝枕編〜を読んでからお読みいただくと、更にお楽しみいただけます✨

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登場人物がどう表現されるのかも興味がありますので、気軽に朗読にお使いください☺️

できれば、Twitterなどに読む(読んだ)事をお知らせいただけると嬉しいです❗️(タイミングが合えば聴きたいので💓)

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サトウ純子 作 「占い師が観た膝枕 2 〜コンビ結成記念日編〜


久しぶりの雨が降ってきた。

換気のために開けていた入り口から、雨の匂いが入り込んでくる。

突然の雨に慌てる足音と、傘が開く音が混ざり合い、場の空気がガラッと変わる。その、瞬間が占い師はたまらなく好きだった。

ただ、雨というのはいろいろなものを運んでくる。おまけに突然降り始める雨というのは、招かざるものを連れてくることがあるので特に注意が必要だ。

「で、せんせーい。聞いてます?」

受付票から目線を上げると、ニットで強調された豊満な胸が視界に飛び込んできた。ヒサコだ。

その横に座っている、男の腰から下しかないオモチャのようなモノ。占い師は、それが膝枕の『マメちゃん』であることを知っていた。

今回は、受付の女の子も驚く事なく

「先生。女性一人と、あの、ほら、腰から下しかない、腕枕じゃなくて…膝小僧じゃなくて…枕…そうそう!膝枕さんのお二人です」

と、案内してくれた。

ただ、マメちゃんはヒサコに対して膝頭を45度外側に向けて座っている。どうやら、スネているらしい。

「だから、朝、コーヒーが飲みたくてコンビニに行ったんですよ。そしたら、そこに偶然知り合いがいて。お茶して来たんですー」

横でマメちゃんが激しく膝頭を椅子に叩きつけている。ヒサコはそれに気づくと、口をすぼめてマメちゃんに背中を向けた。

「そ、それが元彼だったってだけで、なんだかマメちゃんの機嫌が悪くなって。『占い師のところに行く!』の一点張り」

雨が一層激しく降り出した。受付の女の子が慌てて入り口のドアを閉める。

外の音が遮断されると同時に、いきなり、占い師のスマートフォンがけたたましく鳴り出した。普通の着信音ではなかった。

—— こちらは『休日の朝。独り身で恋人もなく、打ち込める趣味もなく、その日の予定も特になかった』ヒサコです ——

同時に、占い師に向かって、マメちゃんの片方の膝頭がグイッと上がる。

どうやら、マメちゃんが占い師のスマートフォンにメッセージを送り付けているらしい。仕方がなく、占い師は次のメッセージを読み上げた。

「マメちゃんは『二股だったんだ!さいてー!』と、言ってますよ」

「はぁ?ばっかじゃないの?お茶したぐらいで」

ヒサコは両手を勢いよくハの字に広げると、そのまま壁に向かって肩をすくめた。

「マメちゃんは、そこは『違うわ、大事なのはマメちゃんだけよ!この人は単なる膝枕止まりの男じゃない!』と、言うところでしょ?と、言っていますが」

「じゃあ、万が一、デートだったとしても、マメちゃんは私の幸せを一番に願ってくれてるわよね?そういう事よね?」

「『そこはそのまま言うんだ』と、言っています」

「あー、面倒くさいプログラミング!」

ヒサコはため息をつきながら、今度はテーブルの下でぽっちゃりした膝を組み替えた。

マメちゃんから送られてくる
「冷血女」「人手なし」「デブ」「行き遅れ」というヤジメッセージを、占い師は目で追うだけで受け流す。

「ちょっとぉ。ヤキモチやいて、沈み込むような事したら、ただじゃ済まないからね!」

また、占い師のスマートフォンから着信音が響く。

「『この商品は希少価値の高い膝枕ですので、返品・交換は固くお断りいたします。責任を持って一生大切にお取り扱いください。誤った使い方をされた場合は、不具合が生じることがあります』だそうです」

「バカにしないで!」

ヒサコは顔を真っ赤にしてテーブルを叩こうとした。…が、目の前にいる占い師のキョトンとした顔を見て、慌てて誤魔化すように大きく咳払いをした。

雷の音が一瞬大きく響き渡る。
それを合図に雨が小雨になってきたようだ。
うっすら外が明るくなり、窓枠に映る傘も少なくなって来た。

「私はそういう説明書や契約とか関係なく、人としてマメちゃんと付き合っているのよ」

マメちゃんのカタカタした動きが止まり、膝頭がヒサコの方を向く。

ヒサコも組んでいた脚を揃え、大きく深呼吸をすると、マメちゃんの方に体を向けた。

「はい。いつもありがとう」

ヒサコは、トートバッグの中から大きなリボンがついた袋を取り出し、マメちゃんの前に乱暴に置いた。

「これを買いに行っていたのよ。今日は11月13日。マメちゃんと私が正式にコンビになった日でしょ」

リボンの横から、色とりどりのマシュマロが見えている。

マメちゃんの膝が大きく弾んだ。

「あの人に、これが売っている店を聞いていたの。あの人マシュマロに詳しいから」

マメちゃんはピョン!とヒサコの膝に飛び乗ると、そのまま膝頭を小刻みに震わしはじめた。
どうやら泣いているらしい。

ヒサコのスマートフォンが、優しい着信音を奏でる。マメちゃんがヒサコにメッセージを送りはじめたようだ。

「そうよ。だから、11月13日はコンビ結成記念日」

占い師は「どこかで聞いたことがある台詞だな」と首を傾げながら、天井の左隅の方を見上げた。

いつの間にか入って来ていたアゲハチョウが、ヒラヒラと笑うように舞っていたが、占い師の目線に気付くと、慌てるように入り口の方に消えて行った。

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