占い師が観た膝枕2 〜 最強のアイドル膝枕編〜
※こちらは、脚本家 今井雅子先生が書いた【膝枕】のストーリーから生まれた二次創作ストーリーです。
【こちらは、2023年の8月8日に、膝枕リレーが800日を迎える!というお話を耳にして、記念に新作を…と思い、慌てて書き上げました】
今井雅子 作 アイドルが見た膝枕
サトウ純子作「占い師が観た膝枕 〜宅配の男編〜」
サトウ純子作「占い師が観た膝枕 〜ワニと箱入り娘編〜」
サトウ純子 作 「占い師が観た膝枕 〜男たち大集合編〜」
サトウ純子 作「占い師が観た膝枕 2 〜リニューアルオープン編〜」
に出てくる登場人物がチラッと出てきます。
他シリーズを読んでからお読みいただくと、更にお楽しみいただけます✨
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登場人物がどう表現されるのかも興味がありますので、気軽に朗読にお使いください☺️
できれば、Twitterなどに読む(読んだ)事をお知らせいただけると嬉しいです❗️(タイミングが合えば聴きたいので💓)
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サトウ純子作「占い師が観た膝枕 2 〜最強のアイドル膝枕編〜」
急に雨が降り出した。
いや、「降り出した」というレベルではない。
まさに、バケツをひっくり返したような雷雨だ。
受付の子が『たいへん、たいへん!』と言いながら、慌てて看板を内側に寄せる。
開いた扉の向こう側から、アスファルトが焼けた臭いと共に、生暖かい雨の香りがうっすら漂ってきた。
雨というのはいろいろなものを運んでくる。
おまけに突然降り始める雨というのは、招かざるものを連れてくることがあるので特に注意が必要だ。
「あら、天気予報では降るって言っていなかったのに」
少し後ろを振り向きながら、人差し指でメガネを押し上げている女性。リケジョだ。ボブの毛先が寝癖のように跳ね上がっているのだが、本人はそれがオシャレだと思っているらしい。
「それでですね。私、急に広報の手伝いをする事になりまして。ええ、あの、公開オーディションで選ばれた子たちの、です」
その横で正座の形でスッと座っている、腰から下しかない、オモチャのようなもの。
占い師は、それが「膝枕」だということを知っていた。
そして、その白い膝を見るのは初めてではない。店がここに移転する前に何回か来てくれた、しーちゃんだ。
しかし、その姿は昔と違って自信に満ち溢れていて、ひとつひとつの仕草が妙に洗練されていて。おまけにとても可愛い。
「アイドルユニットとして着々とデビューする準備をしていたのですが、広報がその中の一人に沈み込んでしまいまして」
規約違反なので、その膝枕と広報は企画から外された、という事らしい。
「で、突然、ユキPDが私を指名してきたんです。ええ、わかってます。きっとヒサコさんの仕業です。いえいえ、あてにされるのは嬉しいのですよ。信頼されているからって思えるし。ただ…」
『背負子開発から離れると、顔を見る機会がなくなっちゃう』リケジョは曇ったメガネを外し、指でこすりながら、ポツリと呟いた。
突然、天井がカッと光り、受付の子の悲鳴と共に雷の音が鳴り響く。
「近くに落ちたみたいですね」
少し後ろを向くリケジョに合わせて、しーちゃんも白い膝頭を傾ける。その、ちょっとした仕草がまた、たまらなく可愛い。
「で、結局、私。広報としてうまくやって行ける、という事なんですね」
「はい。モチベーションも高く、意欲的に打ち込む、と、出てますよ。ちなみに、そのアイドルユニットの名前は決まっていますか?」
「はい。kneeこまち、です」
また、カッと天井が光る。今度は店が揺れるほどの爆音が二人の間を割って入ってきた。
「なるほど。私は恋を諦めて、仕事に全てを捧げる女になるのかもしれませんね」
リケジョは、カードの並びを見ながら、深いため息をついた。
雷の音に驚いたしーちゃんは、リケジョの脇腹に膝頭を埋めて震えている。
「いえ、この、並びの最後のカードの意味は、そういうことじゃないですよ。むしろ…」
と、占い師が一枚のカードを指差した時。
「うわーっ!すんません!ちょっとここで雨宿りさせてもらえませんか?」
と、聴き慣れた声が雨音と共に店に入り込んで来た。
その瞬間、雷が鳴ってもビクともしなかったリケジョがいきなり飛び上がり、派手にテーブルに膝をぶつけた。
「きゃっ!す、すみません!」
「あれ?その声は…。あ、やっぱりそうだ!お疲れさま!」
びしょ濡れの頭をタオルで拭きながら覗き込んできたのは、宅配の男だった。男はリケジョの向こう側に目線を落とすと、今度は男の方が飛び跳ねてのけぞり、派手な音を立てて後ろの壁にぶつかった。
「えっ!えっ!えっ!?しーちゃん!?」
しーちゃんは白い膝頭を男の方に向けて、ピョンピョン跳ねている。どうやら、喜んでいるようだ。
「オーディション番組、見てたよ!一位だったよな!本当におめでとう!」
『ありがとう』と言っているのだろうか。
しーちゃんは嬉しそうに膝頭をパチパチ合わせると、自慢気に右の膝頭を高く上げた。
あの、公開オーディションの時、一番上の席に座る前にしたポーズだ。
「お、お知り合い…なんですか?」
顔を真っ赤にさせたリケジョが、反対側の壁に向かって問いかける。
「うん。昔、痴話喧嘩の仲裁をした事があって…でも、背負子開発部の君が、どうしてしーちゃんと?」
これからアイドルデビューをする子に「痴話喧嘩」というのはいかがなものかと占い師は思いながらも、テーブルの上のカードをゆっくりとまとめはじめた。
「急遽、この子たちの広報をする事になりまして」
壁際に立っていたはずの男が、突然ピョン!と、リケジョの横に滑り込む。
「マジかっ!スゲーじゃん!俺、なんでも協力するからさ!力仕事でも、なんでも言って!」
男は、いきなりリケジョの手を取ると、極上の笑顔でその両手をブンブンと上下に振った。
しーちゃんが、耳まで真っ赤になっているリケジョのポケットから、器用にスマートフォンを抜き出す。そして、それを男の前に置くと、膝頭で可愛くトントンと叩いてみせた。
「そうだな。うん。確かに。連絡先も交換しといた方がいいよな!」
雨はもう止んでいた。通り雨だったようだ。
二人が外に出た時には、いつもの照りつけるような日差しが戻っていた。
「うっわぁ、暑っいな!どっかで冷たいもんでも飲んで行くか!」
遠ざかる二人の背中を目で追いながら、リケジョの背負子で白い膝頭を振っているしーちゃんの姿を見て
「最強のアイドル」という文字が、占い師の頭をよぎった。
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